福島・除染土再利用、「安全」?
http://mekenekotama.blog38.fc2.com/blog-entry-2746.html
2018/12/18(火) 19:47:33 めげ猫「タマ」の日記
福島原発事故に伴い福島県内で発生した除染土壌の最終処分量削減に向け、環境省は来年三月をめどに、関係省庁や県、市町村などに除染土壌の再生利用を促す手引を取りまとめそうです(1)。「大雨などの災害で再生利用の資材が流出した場合も『施設の復旧工事に当たる作業員や周辺住民、利用者の追加被ばく線量は年間1ミリシーベルトを超えない』との評価結果を明記した。」そうですが(2)、この議論は環境省が「誘導」したものです(3)(4)。
原発事故によって福島は汚染されました。
2018年も特異的に汚染されている福島
※(5)の数値データを元に(6)に示す手法で12月1日時点に換算
図−1 事故から7年9ヶ月以上を経て、汚染されている福島
図に示すように国が除染が必要だとする毎時0.23マイクロシーベルト(7)を超えた地域が概ね福島で広がっています。事故から7年8ヶ月を経た福島は汚染されたままです。だいたい避難地域が設定されているのは福島のみです(8)。
このため、福島を中心に「除染」が行われました(9)。放射性物質はなにもしなくても時間と共に減っていきます。その減り方は「半減期」で計算できます(10)。以下に福島県安達地区の放射性物質の量と、半減期で計算される予想量を示します。
半減期でしか減らない福島・安達のセシウム
※元データおよび計算方法は(11)による。
図―2 半減期でしか減らない福島のセシウム
図に示す様に、半減期で計算される量でしか減っていません。これは他も事情は同じだと思います。除染は殆ど効果がありませんでした。それでも、約2000万立方メートルの放射能汚染物がでました(12)。放射能汚染物には2つの基準があります。セシウムについて言えば
1キログラム当たり100ベクレル以下は、「再利用」できます。これ以下なら放射能汚染物として扱う必要はありません。
1キログラム当たり8000ベクレル以下は。「ゴミとして処分」できます。
になります(13)。福島の土は概ね1キログラム当たり100ベクレルを超えるセシウムで汚染されているので(14)、除染で回収した「土」などは「ゴミ」として扱わなくてはなりません。とりあえずは、福島第一原発の周囲に設置された「中間貯蔵施設」に保管することになっています。ただし、保管期間は30年で、その後は福島県外につくる「最終処分場」に移すことになっています。2015年3月から中間貯蔵施設への運び込みが始まったので、残りはあと26年程です(15)。ところが最終処分場の目途がまったく立っていません。そのため、セシウムが1キログラム当たり8000ベクレル以下のものは再利用が検討されています(16)。ただし、あまり上手くはいってないようです。福島県二本松市道路造成に再利用する実証事業が計画されていたのですが、事実上中止になりました(17)。それでも、安倍出戻り内閣はあきらめていないようです。
NHKが「再利用に意義」との喧伝を12月16日に行いました(18)。
汚染土の再利用の意義を喧伝するNHK
※(18)を引用
図―3 除染土の「再利用に意義」を喧伝するNHK
12月18日に福島県の地方紙の福島民報は
「県、市町村などに除染土壌の再生利用促す 最終処分量削減へ」
との表題で
「東京電力福島第一原発事故に伴い県内で発生した除染土壌の最終処分量削減に向け、環境省は来年三月をめどに、関係省庁や県、市町村などに除染土壌の再生利用を促す手引を取りまとめる。道路や海岸防災林などの公共事業で除染土壌を再生利用する際の責任の所在を明確にし、場所や量に関する記録の作成なども明文化する。 」
と報じています(1)。福島民友は
「『除染土壌』資材利用で手引 住民、福島県、市町村と情報共有」
との表題で
「県内の除染で出た汚染土壌を盛り土材などの土木資材として再生利用する計画を巡り、環境省は17日、公共事業で使う際の手引の検討案を示した。土壌の放射性物質濃度は1キロ当たり8千ベクレル以下が条件。周辺の安全対策として、資材化する同省が品質や量、保管、運搬に関する記録を作り、住民や関係者、公共事業を行う国や県、市町村などと情報を共有する。」
と報じていました(2)。さらに「手引の検討案」には
「大雨などの災害で再生利用の資材が流出した場合も『施設の復旧工事に当たる作業員や周辺住民、利用者の追加被ばく線量は年間1ミリシーベルトを超えない』との評価結果を明記した。」
とも報じています(2)。ただし「年間1ミリシーベルト」は科学的根拠が乏しいようです。担当する環境省は審議会をひらいたのですが、これについて
「東京電力福島第1原発事故に伴う汚染土の再利用基準を決めた環境省の非公開会合で、再利用に対する原子力規制庁の具体的な懸念が示されながら、議事録に掲載されていないことが分かった。この会合の議事録を巡っては、環境省が再利用に向けて議論を誘導したと受け取れる発言が削除されていたことが明らかになっており、新たに重要部分の欠落が判明した。」(3)
「東京電力福島第1原発事故の除染で出た汚染土の再利用を巡る非公開会合の議事録を環境省が『全部開示』としながら、実際には自らの発言の一部を削除していたことが分かった。削除したのは環境省が議論を誘導したと受け取れる発言。その発言から放射性セシウム1キロ当たり8000ベクレルを上限値とした汚染土再利用の方針決定につながっていた。」(4)
との報道があります。なお、強調は(=^・^=)が入れました。
すなわち1キログラム当たり8000ベクレル以下の汚染土の再利用について、「環境省の非公開会合」で検討されたのですが、そのなかで「原子力規制庁の具体的な懸念」や「環境省が議論を誘導した」などの事実があるのですが、この点は「議事録に掲載されていない」ようです。どうも「年間1ミリシーベルト」は不都合な事を隠さないと成立しないよな議論みたいです。
福島民報は
「道路や鉄道、防潮堤、海岸防災林などの公共事業で盛り土の中心部分に再生資材を使用する方針。」
と報じていましが(2)、日本経済新聞は
「東京電力福島第1原発事故に伴う除染で生じた土を、園芸作物などを植える農地の造成にも再利用する方針を決めた。」
と報じています(19)。道路や鉄道、防潮堤、海岸防災林の他に「農地の造成」にも使われます。福島県飯舘村では、村内で発生した山積する除染土を約30ヘクタールの農地造成に使うことが決まっています(20)。
汚染で造成される農地
※(21)を加筆
図―4 「汚染土」で造成された農地
除染土を再利用すれば、大雨などの災害で再生利用の資材が流出した場合は「施設の復旧工事に当たる作業員や周辺住民、利用者の追加被ばく線量は年間1ミリシーベルトを超える」との危険性がありそうです。さらには道路や鉄道、防潮堤、海岸防災林の他に「農地の造成」にも使われます。
<余談>
図表が小さいとご不満の方はこちら、図表をクリックしてください。
福島産は「買わない」「食べない」「出かけない」の「フクシマ3原則」でリスクが低減しますが、除染土は実際に存在し、何らかの対応をしなければなりません。事故直後の話ですが、福島県伊達市では放射能をライオンをたとえ、野放しでは危険なので捕まえて檻に入れる方が安全。同様に散らばっている放射能は「除染」で捕まえ、檻(仮置場)に集める方が「安全」と説明したそうです(22)。だったら、せっかく「除染」で「中間貯蔵施設」に集めた「放射能」を「再利用」であちこちに解き放つ事はないと思います。NHKは「再利用に意義」を喧伝していますが(18)、福島の皆様の「安全」を第一に考えるな再利用の意義はありません。こうしたデマが平然と「喧伝」でされる福島では、福島の皆様は不安だと思います。
もうすぐクリスマス。イチゴケーキを楽しみにいる人も多いと思います。福島でもイチゴの収穫が始まりました(23)。福島県会津若松市辺りのイチゴはまったしっかりした食感で、食べると果汁が溢れるそうです(24)。福島県は福島産イチゴは「安全」だと主張しています(25)。でも、福島県会津若松市のスーパーのチラシには福島産イチゴイチゴはありません。
他県産はあっても福島産イチゴが無い福島県会津若松市のスーパーのチラシ
※(26)を引用
図―5 福島産イチゴが無い福島県会津若松市のスーパーのチラシ
(=^・^=)も福島県会津若松市の皆さまを見習い「フクシマ産」は食べません。
―参考にしたサイト様および引用した過去の記事―
http://mekenekotama.blog38.fc2.com/blog-entry-2746.html
(1)県、市町村などに除染土壌の再生利用促す 最終処分量削減へ | 県内ニュース | 福島民報
(2)「除染土壌」資材利用で手引 住民、福島県、市町村と情報共有:福島民友ニュース:福島民友新聞社 みんゆうNet
(3)汚染土議事録:規制庁の懸念載せず 「家の庭で再利用か」 - 毎日新聞
(4)東日本大震災:福島第1原発事故 汚染土議事録 環境省、発言削除し開示 再利用誘導、隠蔽か - 毎日新聞
(5)航空機モニタリングによる空間線量率の測定結果 | 原子力規制委員会中の「福島県及びその近隣県における航空機モニタリング(平成29年9月9日〜11月16日測定) 平成30年02月20日 (KMZ, CSV)」
(6)めげ猫「タマ」の日記 半減期でしか下がらない福島の放射線(2017年)
(7)国(環境省)が示す毎時0.23マイクロシーベルトの算出根拠|東京都環境局 その他について
(8)避難区域見直し等について - 福島県ホームページ
(9)除染情報サイト:環境省
(10)半減期 - Wikipedia
(11)めげ猫「タマ」の日記 デタラメ、放射線副読本(平成30年10月改訂)―その17「除染で放射線量が下がった。除染の効果は殆どなかった」
(12)除染・中間貯蔵施設・汚染廃棄物処理 の現状について - 環境省
(13)100Bq/kg と 8,000Bq/kg の二つの基準の違いについて - 環境省
(14)農地土壌の放射性物質濃度分布図の作成について(平成29年1月19日公表):農林水産技術会議
(15)中間貯蔵施設に係るこれまでの経緯 - 除染情報サイト - 環境省
(16)県外最終処分に向けた取組|中間貯蔵施設情報サイト:環境省
(17)<除染土>二本松の道路造成での利用、再検討へ 風評被害を懸念 | 河北新報オンラインニュース
(18)除染土再生利用「知らず」8割超|NHK 福島県のニュース
(19)除染土、農地造成に再利用 環境省方針 :日本経済新聞
(20)<除染土再利用 原発被災地の行方>(下)帰還を切望 苦渋の決断 | 河北新報オンラインニュース
(21)広報いいたて 平成30年12月号 - 飯舘村ホームページ
(22)「伊達市の除染」について - 環境放射能除染学会
(23)クリスマス用いちご 出荷最盛期|NHK 福島県のニュース
(24)いちご | JA会津よつば
(25)安全が確認された農林水産物(公開用簡易資料) - 福島県ホームページ
(26)アピタ会津若松店│「イイこと、プラス。」 アピタ・ピアゴ