本当に絶好調? アメリカ消費をかさ上げしているものの正体
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181128-00000001-moneypost-bus_all
マネーポストWEB 11/28(水) 7:00配信 今年のブラックフライデーの消費は絶好調に見えるが(ニューヨーク。Getty Images) アメリカでは11月の第4木曜日は感謝祭で祝日となるが、その翌日がブラックフライデーである。この日も休日とする職場は多く、クリスマスセールが始まる日でもある。ブラックフライデーはこれから年末にかけての消費を見通す上で重要な1日とされる。 Adobe Systemsによれば、今年のブラックフライデーにおけるEC取引額は62億ドルで前年同日比で23.6%増と大幅に増加している。数字だけ見るとアメリカの消費は非常に好調に見えるが、この結果を評価する際には、考慮すべき点がある。 11月1〜23日のオンラインストアへの端末別アクセスをみると、スマートフォンが全体の49%を占めている。PCの43%、タブレットの8%を抑えて、今年初めてトップとなった。スマホから気軽にEC取引を行う消費者が増えており、この10年間アマゾンが快進撃を続けていることも考え合わせると、イノベーションが着実に浸透しているようにも見える。 一方で中国のEC取引事情と比較するとどうだろうか。アリババは今年の独身の日である11月11日、1社だけで2135億元(307億ドル相当、1ドル=6.95元で計算)を売り上げており、前年と比べ26.9%増加している。 アリババのEC取引は、もちろん中国本土が中心顧客であるが、今年は東南アジアなど海外の顧客からのアクセスも増加しており、もちろんそこにはアメリカも含まれている。Adobe Systemsによれば、11月11日のアメリカ消費者のEC取引額は18.2億ドルで、前年同日比で29.1%も増加している。アリババのECサイトを通じた消費によってかさ上げされていることは明白だろう。 アリババはニューヨーク上場企業であり、アメリカでも知名度は高い。中国からの輸入が更に増えてしまう可能性や、アマゾンの牙城が今後、脅かされるリスクさえ感じさせる。 輸入品の関税引き上げの前に消費行動が加速か 米中貿易摩擦が激化する中で、アメリカでは消費への影響が懸念されているが、10月の小売売上高(前月比)は0.8%増で市場予想を0.3ポイント上振れした。また、8月、9月はいずれも0.1%増であり、10月は持ち直している。消費の基調は悪くない。 もっとも、トランプ大統領は8月23日までに、半導体、通信衛星、モーター、化学品など中国からの輸入品、500億ドル相当に25%の追加関税をかけており、9月24日からは2000億ドル相当の輸入品に対して10%の追加関税をかけている。 2000億ドル相当分については、水産物、衣料品、家電製品など一般消費財が含まれ、米中の新たな合意がない限り、1月1日から税率がさらに15%加算されることになっている。 今のところ、消費への顕著なマイナス影響は見られない。とはいえ、1月1日からの税率引き上げ前に一般消費財を買っておこうとする消費行動が足元の消費を加速させている可能性がある。そうした理由から、クリスマスセールにも同様の効果が見られるかもしれない。 FRB(連邦準備制度理事会)は金融システムの正常化のために利上げを続けている。現状でも、新車販売台数や新築住宅販売件数などの伸びに陰りがみられるが、ここからさらに金利が上昇すれば、これらの高額消費には大きな影響が出るだろう。そうなれば、小売り全体に消費の鈍化は波及することになる。 アメリカの2016年における名目GDPに占める民間消費支出の割合は68.8%。日本の55.9%、ドイツの53.3%、中国の39.3%などと比べると高い水準となっており、消費の低迷による景気への影響は相対的に大きい。 11月30日からアルゼンチンで始まるG20首脳会議において、トランプ大統領と習近平国家主席の会談が予定されている。話し合いによって15%の追加関税の加算が回避され、貿易摩擦が緩和されるのか、そうではないのかによって、その後のアメリカ経済、株式市場の動向は大きく変わってきそうである。 文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。 |