玉城デニー沖縄県知事訪米。日米両政府に対して「対話」を呼びかける
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2018.11.22 横田一 ハーバー・ビジネス・オンライン
玉城デニー・沖縄県知事が11月11〜16日に訪米、14日10時すぎ(現地時間)にワシントンで米国務省の次官補代理と面談した。防衛省相当の国防総省の日本部長代理も同席するなかで辺野古新基地反対の民意を伝えたが、30分を超える面談終了後、「普天間代替施設(辺野古新基地)建設の姿勢は揺らぐことはない」という国務省の声明がすぐに発せられた。アメリカ政府も日本政府と同様、「辺野古が唯一の解決策」という主張を繰り返したのだ。
ワシントンは「雪が降る前の曇り空」、ニューヨークは「快晴」
12日朝、ホテルでの緊急会見を終えた後、ニューヨークの現地メデイアの番組収録現場に向かう玉城デニー知事。この日は、2つの現地メディアによる個別取材の後、国連幹部との面談も行った
最後の総括的な囲み取材で、玉城知事は後半のワシントンでの手応えを「雪が降る前の曇り空」と例えた。それに対して、ニューヨークでの前半の日程を「快晴」と評した。
現地時間の11日朝にアメリカに入国した玉城知事は、14時からニューヨーク大学で講演。アメリカ在住の沖縄県出身者や一般市民ら140人以上が参加した。翌12日には複数のメディア取材や中満泉・国連事務次長(軍縮担当)との面談をこなし、アメリカでの世論喚起の手応えを感じていた。
国会議員時代、3回の訪米経験がある玉城氏だが、これまでは政治の中心であるワシントンD.C.での活動が中心だった。なぜ今回、ニューヨークをまず訪れたのか。ニューヨーク大学での講演の冒頭で玉城知事はこう切り出した。
「今回は『多様性の持つ力、沖縄の誇りある民主主義』をテーマにお話をするために、アメリカでも多様性に溢れている都市・ニューヨークを訪米活動のスタート地点に選びました」
そして、父が米海兵隊員だったため、外見上の理由でいじめられた生い立ちを紹介した。
「幼い頃は、外見が違うという理由だけでいじめられましたが、私を実の母以上に可愛がってくれた養母は、差別や偏見が心の傷にならないように優しく教えてくれました。(中略)沖縄における多様性は、生きるためのたくましさを必要としながらも、人としてのチムグクル(真心)を、失ってはいけないアイデンティティとして沖縄県民が持っているまぶい(魂)でもあります」
自らのルーツを語った玉城知事は、多様性の力についてもこう力説した。
「アメリカでは恐らく沖縄の問題があまり知られていないかも知れません。しかし私はとても不思議に思います。なぜなら現在に至るまで、多くの数のアメリカ人が沖縄に駐留してきているからです。沖縄とアメリカの関係は非常に深いといえます。この深い関わりの中から私も生まれてきたのです」
「沖縄の多様性は、私のような存在であり、米兵と結婚して渡ってき今アメリカにいる女性たちであり、そして親から沖縄の魂を受け継いだ子供たちであり、沖縄に触れてきた数多くの軍人・軍属なのです。私はこの多様性を、誇るべき民主主義の力にぜひ変えてほしいのです」
沖縄はいったいいつまで政府の扉の前で待たないといけないのでしょうか
ニューヨーク大学で講演をする玉城デニー知事。会場は満員で、立ち見をしたり座って聞いたりする参加者もいた。講演のタイトルは「多様性のもつ力、沖縄の誇りある民主主義」
また玉城知事は「辺野古新基地建設を巡って後戻りできない状況に追い込まれている」という現実についても語り、「日米の市民が自分のこととして捉えて一緒に解決策を考え、太平洋を越えて一緒に行動する輪を広げてほしい」と呼びかけた。
「米国も当事者です。沖縄県は、沖縄と日本と米国と三者対話を持ちたいと切望していますが、アメリカは日本に対して『それは日本国内の問題だ』と片づけてしまいます。沖縄がアメリカに直接米軍基地に関する苦情を訴えると、アメリカは苦情を日本政府に回します。そして日本政府は地位協定などを理由として、沖縄からの苦情を切り捨てる。
こうした国際社会の下で、沖縄県民はどのようにして声を上げることができるというのでしょうか。基地を造る日本、基地を使うアメリカ、どちらも責任の当事者であるはずですが、その基地を押しつけられている沖縄からの声はどこに届ければいいのでしょうか。
沖縄県は、政治的かつ法的なあらゆる手段を尽くして、辺野古の新基地建設を阻止しようとしています。しかし政府の扉と、法律の門は閉じつつあるという厳しい現実に直面しています。
沖縄はいったいいつまで政府の扉の前で待たないといけないのでしょうか。いったいいつまで法律の門の前で待たなければならないのでしょうか。そうした沖縄に対する扱いを『まるで植民地のようだ』と反発する沖縄県民も少なくありません」
沖縄は、激しい反発をする“パンドラの箱の鍵”になってしまうかもしれない
ニューヨーク大学での講演は、玉城知事の隣で司会進行役を務めた島袋まりあ准教授(左端)が尽力して実現。島袋准教授も父がアメリカ人で母が沖縄人。「玉城知事と連絡を取り合っているうちに考えが一致して、ニューヨークでの講演が具体化した」と話す
沖縄の民意が日米両国に届かない現実を紹介したうえで、玉城知事は次のような警告も発した。
「第二次大戦後、アメリカは沖縄を太平洋の要石、“キーストーン”と呼びました。米軍の軍事戦略において、沖縄は『太平洋から東アジアへの鍵である』という意味です。しかし、沖縄を民主主義からも法律からも例外的な存在を続けていくならば、その“鍵の石”である沖縄から、激しい反発をする“パンドラの箱の鍵”に変わってしまうかもしれません。そうなれば、日米両国と沖縄県民の間には、修復不可能な亀裂が生じてしまうでしょう」
そして玉城知事は、こうした事態を避けるために「対話」を呼びかけた。
「『アメリカと日本と沖縄の三つを、どれ一つ欠かすことなく、話し合いを持つようにしてほしい』と強く訴えてください。保存されるべき豊かな自然環境と互いの友情を、将来の子供たちにつなげるために『正しい』と心から信じる声と行動が必要です。
お互いの沖縄のために、皆さん、立ち上がってぜひ行動してください。あなたの国の政府に、アメリカの民主主義の誇りを沖縄にも届けるようにどうぞ要求してください。沖縄県民に残された時間はあまりありません。
しかし、みんなが立ち上がれば変化が起こります。変化が早く大きく起きるほど、状況は大きく早く変わります。日米両政府が辺野古の新基地建設を断念するまで、みんなでぜひ動いていこうではありませんか」
こう訴えて講演を終えると、会場の教室を埋め尽くした参加者からは大きな拍手が沸き起こった。
今回の講演の段取りをしたのは、玉城知事の隣で司会進行役を務めたニューヨーク大学の島袋まりあ准教授だ。彼女は父がアメリカ人で母が沖縄人。玉城知事とは10年以上前からのつき合いだという。
「連絡を取り合っているうちにお互いの考えが一致し、『多様性に溢れるニューヨークで講演をしましょう』という話が具体化していきました」(島袋氏)
「人種のるつぼ」とも評されるアメリカ最大の都市ニューヨークで、玉城知事は「多様性」をキーワードにしてアメリカ世論に訴えることからまず始めている。
<玉城知事との面談直後、報道関係者に発せられた米国務省の声明(11月14日)>
You may attribute the following to a Department of State Spokesperson: State Department Acting Deputy Assistant Secretary of State for Japan and Korea Affairs Marc Knapper and Acting Director for Japan in the Office of the Under Secretary of Defense for Policy Paul Vosti met Okinawa Governor Tamaki at the State Department on November 14.
In the meeting, Acting Deputy Assistant Secretary Knapper and Acting Director Vosti conveyed the sincere appreciation of the United States to Okinawa for hosting U.S. military personnel and for playing a central role in the U.S.-Japan Alliance, which continues to be the cornerstone of peace, prosperity and freedom in the Asia Pacific.
They also reiterated the unwavering commitment of the United States to the construction of the Futenma Replacement Facility at Camp Schwab.
<取材・文・撮影/横田一>
ジャーナリスト。小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)に編集協力。その他『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
ハーバービジネスオンラインに玉城知事の訪米関連記事が掲載。ニューヨーク大学での講演を中心に紹介、日本の外務省に当たる国務省での面談後に発せられた国務省の声明(辺野古が唯一の解決策)も掲載。「玉城デニー沖縄県知事訪米。日米両政府に対して『対話』を呼びかける」https://t.co/TNeTmsiKII
— 横田一 (@yokotahajime) 2018年11月22日
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— 星はふるふる (@furuhosi) 2018年11月22日
抜粋
アメリカは日本に対して『それは日本国内の問題だ』沖縄がアメリカに訴えると、アメリカは苦情を日本政府に。そして日本政府は沖縄からの苦情を切り捨てる。
玉城知事「みんなが立ち上がれば変化が起こります。変化が早く大きく起きるほど、状況は大きく早く変わります。日米両政府が辺野古の新基地建設を断念するまで、みんなでぜひ動いていこうではありませんか」
— fujikuro (@fujikurok) 2018年11月22日
玉城デニー沖縄県知事訪米。日米両政府に対して https://t.co/FpOKnh47EV
「人種のるつぼ」とも評されるアメリカ最大の都市ニューヨークで、玉城知事は「多様性」をキーワードにしてアメリカ世論に訴えることからまず始めている。
— セージ (@sage_hmmar) 2018年11月22日
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