2018年10月9日 週刊ダイヤモンド編集部
新宗教の信者数は30年間で4割減、創価学会をも襲う「構造不況」
JIJI、AFP=時事
『週刊ダイヤモンド』10月13日号の第1特集は「新宗教の寿命」です。今特集では、現代の新宗教界を象徴する3教団、創価学会と立正佼成会、そして真如苑に加え、存亡の危機にある主要教団のビジネス(布教)戦略を明らかにし、そのカネと権力、政治のタブーに迫ります。その特集から、宗教界全体が直面する“構造不況”とも呼べる状況を解説した記事を、ダイヤモンド・オンラインで特別公開します。
創価学会の実権は、原田稔会長や谷川佳樹主任副会長ら「四人組」と呼ばれる執行部が握っている。執行部は例年、池田大作名誉会長の誕生日の1月2日に、池田氏が療養中とされる東京・信濃町の学会施設に“池田詣で”を行うのが慣例だ。
ところが今年、かつてない異変が起きた。「執行部の面会が初めて池田家側から拒否された」(池田家に近い関係者)というのだ。
目下、その解釈をめぐって、二つの見方が信者たちに流れている。
一つは、2010年5月の本部幹部会出席を最後に表舞台から姿を消した池田氏が、執行部と面会できないほど体調が悪化した、という見方である。
そして、もう一つが、池田家と執行部の間に“亀裂”が生じ始めた、というものだ。執行部は近年、創価大学派閥など池田家に近いと目されていた側近などを次々と“粛清”する一方、学会の憲法に相当する「創価学会会憲」を昨年制定し、組織運営から教義に至る全権を原田会長に集中させるなど、“池田外し”ともいえる動きを加速させている。それを不快に感じている当の池田氏側が面会を拒否したというのである。
「今の執行部は池田先生をあまりにないがしろにしている」──。
そう悔し涙をにじませるのは、池田氏直属の親衛隊「転輪会(てんりんかい)」所属の古参信者だ。詳細は本誌記事に譲るが、池田氏本人と日常的に接してきた転輪会メンバーがメディアに口を開くのは極めてまれだ。
衆院選に続き
沖縄県知事選も大敗北の公明党
こうした池田外しの背景にあるのは、卒寿(90歳)を迎えた希代の“カリスマ”池田氏の喪失に向けた組織固めだ。9月8日、機関紙「聖教新聞」で四半世紀にわたり連載された池田氏の小説『新・人間革命』が完結を迎えたことは、「時代の終わりが近い」ことを信者たちにあらためて実感させた。
新宗教最大の教勢を誇る学会の足元では今、高度経済成長期に入会した会員のボリューム層が高齢化し、その自然減や世代間における信仰の断絶といった、構造的問題が顕在化している。
その最たる例が、学会を母体とする公明党の苦境に表れている。昨年10月の衆議院議員選挙では比例得票数で700万票を割り込み、6議席を失う惨敗となった。さらに、およそ5000人といわれる学会活動家を本土から送り込むという、党を挙げての“総力戦”となった9月30日の沖縄県知事選挙でも敗北を喫した。
衆院選敗北から1年。学会では目下、来夏の参議院議員選挙を視野に信者の引き締めを図るべく、執行部に異を唱える一般信者にまで“首切り”の嵐が吹き始めている。執行部を批判した会員を除名するだけではなく、地区幹部の役職解任や「査問」という名の“脅し”をかけられる一般信者が全国で急増しているというのだ。これらは身内に寛容とされる学会において、前代未聞の変化だ。
平成30年間で4割も減った
主要教団の信者数
7月、オウム真理教元代表の麻原彰晃(本名・松本智津夫)らへの極刑が執行されたが、平成の終わりとともに、かつて世間を騒がせた新宗教が終焉に近づいていることを暗示する出来事だった。学会に迫る“Xデー”に象徴されるように、新宗教界全体を見渡しても、苦境に陥っている教団は多い。
下図を見てほしい。1989(平成元)年以降の日本の宗教法人の総数と、各教団の自己申告ベースの“公称”信者数、そして、そのうち、主要新宗教教団の公称信者数を抜き出したグラフだ。
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「宗教年鑑」(文化庁)で毎年の公称信者数を捕捉できる上位37教団の信者数は、2637万人から1591万人へと4割減った。この落ち込みは、伝統宗教を含めた宗教界全体のそれをはるかに上回る。
その理由は、先述した学会と共通する構造問題である。すなわち、少子高齢化(少産多死による人口減少)や核家族化、そして世代間の価値観の断絶といった要因であり、それは日本社会全体の環境変化に起因するものだ。学会の末端信者にまで及ぶ苛烈な引き締めは、この構造不況を生き残るための戦略転換の表れといえる。
本特集では、最大手の学会に加え、アンチ学会の中心的存在で、実質的に新宗教界ナンバー2の立正佼成会、そして、新宗教界でひときわ注目を浴びる真如苑という三つの巨大教団に着目し、その現状や課題、そして今後の事業(布教)戦略を明らかにする。
新宗教界はいわば、その時々の世相を映す日本社会の縮図でもある。構造不況に先行する存在として、そのサバイバル戦略にはビジネスパーソンにとっても学ぶところがあるはずだ。
https://diamond.jp/articles/-/181605
2018年10月9日 週刊ダイヤモンド編集部
創価学会・立正佼成会・真如苑、3大新宗教の「寿命」を大胆予想
Illustration by Yuuki Nara
『週刊ダイヤモンド』10月13日号の第1特集は「新宗教の寿命」です。今特集では、現代の新宗教界を象徴する3教団、創価学会と立正佼成会、そして真如苑に加え、存亡の危機にある主要教団のビジネス(布教)戦略を明らかにし、そのカネと権力、政治のタブーに迫ります。しかし、そもそも新宗教とはどういうものを指すのか、どのように発展してきたのかなど、新宗教に縁がない人からすれば、よくわからないだろう。そこで、発展の歴史や信者数、政治的立場、収入の規模などを解説。さらに本特集でフォーカスする立正佼成会と真如苑の信者数シミュレーション、創価学会を支持母体とする公明党の衆院選比例区の得票数シミュレーションを、ダイヤモンド・オンラインで特別公開する。
新宗教に縁がないという読者も多いだろう。各教団の詳細に入る前に、新宗教界の全体像を押さえておきたい。
新宗教と一口に言っても、実はその明確な定義はない。図(1)で分かるように、新宗教と呼ばれる教団の多くは日蓮正宗や真言宗など伝統仏教や神道、キリスト教から枝分かれしたり、影響を受けたりしているからだ。本誌では、宗教学の第一人者、井上順孝氏などが編集した『新宗教 教団・人物事典』に基づき、18世紀初頭以降に一派を興した教団を新宗教とした。
このうち、文化庁発行の「宗教年鑑」最新版ほかによる、各教団の公称信者数が多い10教団を信者数でランキング化したのが図(2)だ。
本誌で示したように、宗教年鑑に記載されたものを含めて、各教団の公称信者数ほど信ぴょう性に欠けるデータも珍しい。全宗教法人の合計信者数は、日本の人口をはるかに上回る。信者をどうカウントするかは各教団の基準次第で、退会者や死亡者まで含めている教団さえある。誇大申告が常態化しているのだ。
だが、それでも公称信者数からは、その教団の勢いや新宗教界を取り巻く世相を読み解くことはできる。図(3)は信者数の推移のうち、特徴的なパターンを持つ教団を抽出した。例えば、創価学会は2005年に827万世帯と公称して以降は更新されず横ばい。片や、立正佼成会は右肩下がり、真如苑は逆に右肩上がりだ。絶対数は当てにならずとも、その教団の信者のカウント基準を押さえれば、一定の比較も可能となる。
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続いて、機関紙の主張や選挙活動などから把握できる政治的な立ち位置からも、教団の特徴や互いの関係を読み解ける(図(4))。鍵を握る教団は、やはり公明党の母体である創価学会。1999年の自公連立により、リベラルな立ち位置にブレが生じ、右傾化した。
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このブレは自民党とそれまでじっこんだった反創価学会の旗手、立正佼成会の立ち位置も変え、「敵の敵は味方」とばかりにリベラルに傾斜していった。この政治的転換は、両教団共に信者の離反を少なからず招いた。逆に、あえて政治に距離を置くのが真如苑。地元にゆかりのある政治家を主に応援するのが、日本唯一の宗教都市を有する天理教といった具合だ。
一方、全体的な信者数減少の影響をもろに受けているのが、教団の“財布”。宗教事業の根幹であるお布施や寄付金の額に直結するからだ。図(5)は大規模宗教法人の収支の変化。01年と比べると16年は会費収入と投資支出が激減。カネもうけ手法を事業収入にシフトさせていることが見て取れる。
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将来の信者数と得票数を
大胆シミュレーション
その教団の未来を知る上で、最大のバロメーターは、やはり信者数だ。そこで本誌は10大新宗教のうち、図(3)と図(4)の特徴や知名度、宗教界における存在感などから、創価学会、立正佼成会、真如苑について、信者数の「未来シミュレーション」を実施した(図(6))。いわば、各教団の“寿命”の試算だ。なお、創価学会は宗教年鑑から信者数を捕捉できないため、公明党の得票数を将来予測してみた。
結果、現在272万人の信者を抱える立正佼成会は、35年に100万人を割り込み、真如苑に逆転される可能性が示された。また、公明党の得票数は95%予測区間下限で、直近の700万票から40年には600万票割れという最悪の事態も想定される。無論、これまでの推移に前提条件を与えた上での結果。各教団の対策次第で“寿命が延びる”ことは十分あり得る。
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