空前の米株高もたらす 時代遅れのグローバル金融緩和の罠 日本経済一歩先の真相
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2018/09/28 日刊ゲンダイ
株高に沸くニューヨーク証券取引所(C)AP
ニューヨーク株式市場が史上空前の株高に沸き立っている。この2年余り、ダウ平均株価は右肩上がりで連日のように過去最高値を更新。間もなく2万7000ドルに達しそうな、とてつもない数字を叩き出している。
2016年11月の大統領選からの上昇率は実に40%以上。自身のサプライズ勝利から始まった空前の株高に、トランプ大統領は、さも自分の手柄のように自慢するが、異常な株高は単なる“ヤンキー・バブル”に過ぎない。
米FRBが利上げに踏み切ってから約3年。確かに米国経済はいくらか回復しているが、空前の株高にまで押し上げるほどの好景気ではない。株価上昇の要因は世界規模のカネ余り現象だ。
どの国の政策金利を見ても、マイナス金利から抜け出せない日本を筆頭に、ユーロ圏は0%にへばりつき、イギリスは0.75%、カナダは1.5%と歴史的な低水準だ。各国の金融緩和策によってカネがダブつき、行き場を失った投資マネーが、比較的景気は好調なアメリカの株式市場になだれ込んでいるのだ。
空前の株高に鼻高々のトランプ大統領の景気刺激策を市場は決して評価しているわけではない。グローバル的な金融緩和策で有り余ったマネーが、NY株を日々押し上げているだけなのだ。
実態の伴わない株高はバブルである。イギリスであれ、ドイツであれ、カナダであれ、アメリカよりも景気がちょっと上向けば、いつ資金が逆流してもおかしくない。投資マネーが一気に引き揚げ、ヤンキー・バブルがハジケる日はそう遠くないのではないか。
つまり、ニューヨーク市場の歴史的な株高も経済の実態を反映したものではないのだ。株高効果だけで、アメリカの景気が上向くことは期待できない。公的資金の投入で押し上げた日本の株高とて同じことだ。
今やAI化による21世紀型の産業革命が進み、世界の経済構造そのものが大きく変化している。高度成長期のころに景気動向を捉えてきた経済指標の数々は、もはや存在意義を失っているのだ。それなのに、世界の金融当局は時代に即した政策を打ち出せず、昔の枠に縛られた伝統的手法を取り続けるしかないようだ。その表れが金融緩和のグローバル化である。
■いつまで時代遅れの金融政策を続けるのか
変化に取り残された経済指標を頼りに過去の手法にこだわっても、もはや通用しない時代だ。それでも日銀の黒田総裁をはじめ、世界の金融政策の責任者らは「きっと、いつかは効果が表れる」と時代遅れの手法にしがみつくのか。その発想を改めない限り、ジャブジャブとカネだけがあふれ続け、さらなるバブルを膨らませるだけである。そして、バブルは遠からずハジケて、その後は深刻なデフレに襲われることになる。
高橋乗宣 エコノミスト
1940年広島生まれ。崇徳学園高から東京教育大(現・筑波大)に進学。1970年、同大大学院博士課程を修了。大学講師を経て、73年に三菱総合研究所に入社。主席研究員、参与、研究理事など景気予測チームの主査を長く務める。バブル崩壊後の長期デフレを的確に言い当てるなど、景気予測の実績は多数。三菱総研顧問となった2000年より明海大学大学院教授。01年から崇徳学園理事長。05年から10年まで相愛大学学長を務めた。
■【高橋乗宣 …の真相/空前の米株高もたらす 時代遅れのグローバル金融緩和の罠】(https://t.co/HgUakXEzch)/《上昇率は実に40%以上。自身のサプライズ勝利から始まった空前の株高に、トランプ大統領は、さも自分の手柄のように自慢するが、異常な株高は単なる“ヤンキー・バブル”に過ぎない》
— AS (@ActSludge) 2018年9月27日
空前の米株高もたらす 時代遅れのグローバル金融緩和の罠https://t.co/VAgP1Llog7日銀の黒田総裁をはじめ、世界の金融政策の責任者らは「きっと、いつかは効果が表れる」と時代遅れの手法にしがみつくのか。その発想を改めない限り、ジャブジャブとカネだけがあふれ続け、さらなるバブルを膨らませる
— Hikaru 星 光一 (@utopia_star) 2018年9月28日