米国債、外国人に買い疲れ気配で利回り高騰リスク
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2018.8.24 ロイター
[ニューヨーク 22日 ロイター] - 米国債に対する外国人投資家の買い疲れが見え始めている。財政赤字が拡大を続けて2年以内に1兆ドルに達すると予想される中で、外国人による吸収力が鈍れば、いずれ利回りが跳ね上がる危険がある。
インベスコのチーフ・グローバル・ストラテジスト、クリスティナ・フーパー氏は、外国人の米国債投資意欲の弱まりについて「利回りを押し上げる強力な要因になる」と懸念する。
実際ロイターが入札データに基づいて計算したところ、7月の海外勢の購入額は少なくとも2009年以降で最小にとどまった。
外国人が買いを手控えるとすれば、米政府は国内の銀行、資産運用会社、プライマリーディーラーにより多く引き受けてもらい、利回りの高騰を避ける必要が出てくる。
足元まで米国債市場に深刻な影響は見られない。指標の10年債利回りは5月に3%の節目を超えて約7年ぶりの高水準を付けた後は、落ち着きを取り戻している。
コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツのシニア金利・通貨アナリスト、エド・アルフセイニ氏は「徐々に外国人の米国債購入は少なくなってきているが、国内投資家が入ってきて、その穴を埋めている」と話した。
アナリストによると、米国と中国などの貿易摩擦や、トルコおよびイタリアの政治情勢を巡る懸念で、安全資産としての米国債需要が存在することも、利回りを抑える一因となっている。
5月半ばに3.13%まで上がった10年債利回りは22日、2.82%で推移している。
■不安残る先行き
毎月の米国債入札における外国人購入の比率は、財務省が2月に発行量を増やして以降低下している。第2・四半期にドルが予想外に反発して外国人の買い手にとってヘッジ費用が高まった面もある。
7月の米国債入札で外国人は計165億7000万ドルを買ったが、これは少なくとも09年以来で最低の水準だ。財務省が16日公表したデータで、6月は外国人の米国債投資が売り越しに転じたことも分かった。
国別で米国債投資家としてトップ1、トップ2の中国と日本は、6月の保有高がそれぞれ今年2月以来、2011年10月以来の低水準となった。また日本政府のデータを見ると、5月に米国債を2兆0710億円を売り越した日本勢は6月も4558億円の売り越しだった。
日本などの外国投資家にとっては、ヘッジ費用の関係で米国債保有コストが割高化している。
もっとも米国債の相対的な利回りの高さは依然として日本勢や欧州勢には魅力がある。ロイターのデータによると、10年債を比べれば米国は欧州より2.50%ポイントほど、日本よりは約2.75%ポイントも高い。
一方で7月は米国の債券運用会社の入札における購入額が9205億ドルと全体の54%を占め、過去最高の比率に達した。発行増の大半が中短期債で、米国の投資家にとって妙味があるとアナリストは分析する。
ただし外国人の米国債買いが減り続けても、国内投資家がそれに見合うペースで購入を増やし続けるかどうかは定かでない。
インベスコのフーパー氏は「現段階では十分な買い手がいるかもしれない。だがこれから4ヵ月に対応できるほど確保できるだろうか」と疑問を投げ掛けた。
中国が対米貿易摩擦の報復手段として保有米国債を売却するとの懸念もくすぶり続けている。
(Richard Leong記者)