(引用元 [1])
福島第一4号機の使用済み燃料プールにあった燃料が全部大気に放出されたという
妄想話がまた出回っているようだ[2]。
引用されているのは、この米国NRCの報告書である[1]。
2号機の25%、3号機の50%、4号機の100%の使用済み燃料が大気に放出されたとある。
日付は2011年3月18日、4号機が爆発してからわずか3日後で、当時は大混乱のさなか、
東電ですら原子炉・燃料プールの状況を正確に把握しておらず情報が錯綜していた。
そういった時期に出された報告書である。
NRCは6月にこの情報が不正確であったと公式に認めている[3]。
燃料プールの水がなくなり燃料が露出したらどうなるか。
使用済み燃料は莫大な崩壊熱を出しており、すぐに燃え出し超高濃度の放射性煤塵が発生する。
そうなったら4号機に近づくことはもちろん、東電は福島第一から完全に撤退せざるを
得なかったはずだ。
1300体以上あった使用済み燃料が全部燃えたら、少なくとも東日本は完全に壊滅していただろう。
アーニー・ガンダーセン氏はこう語っていた[4]。
「もしも地震が起きて4号機が倒れたら、政府が何を言おうと信じてはいけません。
それはもう科学が想像すらしたことのない領域なのです。飛行機に乗って東京を出るときです」
日本政府は4千万人の避難計画があるとロシアや中国に話したとされているが、おそらく
使用済み燃料が燃え出したことを想定していたと思われる[5]。
幸いにしてそういった悲劇は起きなかった。
4号機は3号機ほど汚染がひどくなく、2012年5月にはIWJ・岩上安身氏を含め
大勢のジャーナリストが内部を見学している[6]。
冒頭に挙げたNRCの報告書が正しいとしたら、この見学も、燃料の取り出しもフェイク
ということになる。
そんな馬鹿な話はない。
事故直後の不正確な報告書をそのまま信じるから、おかしな話になるのである。
こういった話をうのみにするのは、使用済み核燃料について何の知識もない人たちだろう。
1-4号機の燃料がすべて放出・飛散したというデマは一種のカルト信仰、あるいは都市伝説
のようなもので、いくら科学的・論理的に否定しても決して消えることはない[7]。
こんなあり得ない妄想話をしていると、原子力ムラの連中からも馬鹿にされてしまう。
困ったことである。
(関連情報)
[1] 「USNRC Emergency Response Update」 (NRC March 18, 2011)
http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1212/ML12122A949.pdf
[2] 「〔東電原子力大災害〕◇ フクイチ4号機の使用済み核燃料プール(SFP)の核燃料、
「100%」が環境に放出される! 米NRC(原子力規制委員会)内部資料で判明――
◎ 米情報サイトが発掘報道! ★ これは本ブログが2016年12月に報じていたことでもある、
4号機のSFPからの「核燃取り出し」は、もっともらしいフェイク・ショーだったことになる!」
(机の上の空 大沼安史の個人新聞 2018/6/15)
http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2018/06/post-21a7.html
[3] NRC concedes Japan fuel pool not dry (Associated Press June 16, 2011)
http://archive.boston.com/news/world/asia/articles/2011/06/16/nrc_concedes_japan_fuel_pool_not_dry/
[4] 「フェアウィンズ・アソシエーツ、アーニー・ガンダーセン インタビュー:
『福島原発事故はわれわれが考えるよりはるかに危険』パート3」 (EXSKF-JP 2011/6/7)
http://ex-skf-jp.blogspot.com/2011/06/blog-post_07.html
[5] 「ロシアが驚愕した日本政府の4千万人避難計画」 (拙稿 2012/4/17)
http://www.asyura2.com/12/genpatu22/msg/880.html
[6] 「福島第一原発4号機の建屋内部、初公開 (TBS)」 (阿修羅・赤かぶ 2012/5/27)
http://www.asyura2.com/12/genpatu24/msg/176.html
[7] 「4号機全燃料放出というUSNRC報告は、事故直後の混乱で生じた誤情報である」
(拙稿 2015/12/23)
http://www.asyura2.com/15/genpatu44/msg/555.html
http://www.asyura2.com/17/genpatu49/msg/847.html