米朝首脳会談に向け、トランプ大統領とポンペオ国務長官が対北朝鮮融和(妥協)に傾くなか、カダフィ大佐惨死とイメージがつながるリビア方式での核放棄やすべての弾道ミサイルの廃棄までを主張して気を吐いているボルトン補佐官が、北朝鮮政権なんか崩壊すればいいと願っているほどの対北朝鮮強硬派にとって最後の“希望の星”になっている。
急展開を見せる朝鮮半島情勢にざわめき、少なからず不安を感じている櫻井よしこさんや保守の識者たちも、「危ない兵器を一つ残らず取り上げようとしているボルトンさんがいるから最後は大丈夫!」と自分と同志を納得させている。
確かに、ボルトン氏は、アフガン侵攻・イラク侵攻、気候変動京都議定書拒否などブッシュ政権の単独行動主義を過激な言動で象徴する存在だった。
ボルトン氏は、UN嫌いの米国主権絶対派として鳴らし、ブッシュ政権時に国防次官に指名されたとき上院の承認で一悶着を起こし、その後、UN大使に指名されたときも、承認を得られないままUN大使を務めることになった人物である。
そして、いわゆる「リビア方式」として話題になっているリビアの核放棄も、ボルトン氏が実務を仕切ったと言われている(「リビア方式」のポイントはMI6&CIAとカダフィ政権の秘密折衝であること)。
しかし、安全保障政策で大統領に助言するボルトン補佐官については、反多国間主義=米国主権絶対派であることは確かだとしても、その風貌や言動に似合う強硬策が染みついているというより、そのような“役柄”を演じるトリックスターとみたほうがいいだろう。
それは、北朝鮮融和派というか朝鮮半島平和構築派のトランプ大統領が、マクマスター補佐官を解任してボルトン氏を後釜に据えたことからも推測できる。
ボルトン氏が心底の対北朝鮮強硬派であったなら、米朝首脳会談を決めたあとのトランプ大統領が、ボルトン氏を国家安全保障担当の補佐官にすることはなかっただろう。
トランプ大統領が公開書簡を通じて「米朝首脳会談の中止」を表明する前、北朝鮮外務省(たいした権力はなく政策決定権もない外交実務遂行者)も、ペンス副大統領とともにボルトン補佐官を批判対象の俎上にのせていた。
米朝首脳会談をめぐって、膝をつき合わせての協議ではなく、空中戦の駆け引きで対北朝鮮強硬派の一翼を担ったのがボルトン補佐官である。(北朝鮮政権トップもボルトン氏の役回りを知っている可能性が大)
ボルトン本人もわかっているが、トランプ大統領は、米国の対北朝鮮強硬派や櫻井よしこさんなどに対する“防波堤”や“安全装置”(識者&世論対策)としてボルトン氏を使っている可能性が高い。
トランプ大統領の融和的対北朝鮮政策に危惧を抱く人も、ボルトン氏が国家安全保障担当補佐官でいることで何となく安心できるという構図である。
そのように考えるのは、米朝首脳会談が決まった後に、ボルトン氏を補佐官に選任したということが理由ではない。
空母2隻を含む打撃艦隊が朝鮮半島近海を航海するという危機状況にあった昨年春、ボルトン氏が朝鮮半島問題に関して語ったことのほうが大きな決め手になっている。
阿修羅に投稿済みだが、
「対北強硬派だったあのボルトン元国務次官が「すみやかな南北平和統一が核問題解決の道」と表明」
http://www.asyura2.com/17/kokusai19/msg/277.html
投稿者 あっしら 日時 2017 年 4 月 30 日 03:53:10: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
のなかで、ボルトン氏が、
「「北朝鮮が米国本土に到達する核兵器を持つのは思いの外早いかもしれない」と懸念を表明した。
「そうなれば、北朝鮮は、追跡を逃れて米大陸に近づける潜水艦にミサイルを配備するだろう」と予想した。
「南北の統一が北朝鮮の核武装を防ぐ方法になりえる。すみやかな平和統一が、中国の利益でもあることを中国も確信できるようにしていくべきだ。」」
と、強硬派に似つかわしくない言動をした。
そこで書いたボルトン氏の言動に対するコメントも引用すると、
「[コメント]
「アーミテージレポート」に書かれているように、米国は、朝鮮半島の南北統一を2020年までには達成したいと考えてきた。
「第一次核危機」(今回と同じように作り話)時から、米国支配層は、南北の平和的統一を支持している。
※参照投稿
「仁王像さんへ:米国は93年〜94年の「第1次朝鮮半島核危機」時に北朝鮮の体制を保証:米朝合意資料添付」
http://www.asyura2.com/17/senkyo224/msg/656.html
政権にどれほどの影響力があるのか不明だが、ボルト氏が発した今回の南北統一促進話で興味深いのは、
「南北の統一が北朝鮮の核武装を防ぐ方法になり得る」
「すみやかな平和統一が、中国の利益でもあることを中国も確信できるようにしていくべき」
という二つの内容が含まれていることである。
「南北の統一が北朝鮮の核武装を防ぐ方法になり得る」というのは、現今の危機を解決できる手段として南北統一を考えていることを意味する。
もう一つの「すみやかな平和統一が、中国の利益でもあることを中国も確信できるようにしていくべき」は、米国=韓国主導の南北統一は中国にとって容認できないことなので、中国の影響下で南北統一が進められるようにすべきという提案と解釈できる。
1910年から1945年の35年間朝鮮半島を支配していた日本は、米国以上に朝鮮半島の平和的統一に寄与しなければならない立場にある。
(韓国・米国)Vs.(北朝鮮・中国)のきな臭い対立構造が続くより、中国のタガが嵌まった平和で安定した朝鮮半島のほうが、日本にとっても有益だと思う。
北朝鮮も韓国も中国の言いなりにはならないだろうから、中国影響下の朝鮮半島問題は日中関係に利用することもできる。
統一は先の話として、日本はとにかく、日朝国交正常化の道筋を早急に付けなければならない。」
政府やメディアの対米論調が醸成した国民の反米意識高揚が対米開戦への一つの誘引になったように、政治的支配層や識者の表面的な言動を真に受けて怒ったり喜んだりしていると、知らぬ間に戦争へと引きずり込まれる危険があることを肝に銘ずべきだと思う。