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【第25回裁判の報告】
5月11日(金)、25回目の裁判が行われました。長年、内部被曝を研究されてこられた矢ヶア克馬さんの意見陳述をご紹介します。特に4の「政府の異常な原発事故処理」は必読です。
1.身上・経歴
(1)矢ヶア克馬と申します。1943年生まれです。本年1月に原告となりました。長年物性物理学研究を生業とし、琉球大学で学生部長や理学部長を務めました。
(2)私の妻沖本八重美は広島の胎内被爆者でした。認定被爆者としては最年少でした。義母は広島に原爆が投下された翌日、行方不明になっていた義父の妹を捜し出すため入市し、終日爆心地を探し回りました。義母は妻を出産した後子宮がんに罹り、病弱で臥せりがちで、長年原爆ぶらぶら病に苛まされてきました。私と八重美が結婚した直後に別府の被爆者療養所で大量の血を吐いて亡くなりました。61歳でした。「うちらー、ピカドンにやられたんじゃけん」という義母の口癖が、私の耳の底でガンガン響いていました。
(3)私は、沖縄県鳥島に劣化ウラン弾爆撃訓練が行われた際、劣化ウラン内部被曝の危険性について研究・発言しました。原爆症認定集団訴訟の際には、「内部被曝」を熊本地裁で証言いたしました。
2.内部被曝の危険と隠されてきた歴史
(1)原子と原子の結びつきを破壊する(分子切断)電離作用をするのが放射線です。大切な生命機能を果たす組織をミクロに内部から切断してしまうのです。核分裂で作られる放射能は微粒子を形成します。自然放射能と異なり臓器にたまります。放射性微粒子は周囲数ミリメートルの範囲に高密度の分子切断を行い、修復されない遺伝子を持つ細胞を残します。修復されない遺伝子は健康被害の源
です。外部被ばくよりはるかに危険です。
(2)内部被曝は原爆投下以来アメリカ軍と日本政府により無視され続けて来ました。国際原子力ロビーは、核および原発の健康被害の実態を隠し続けてまいりました。
3.フクシマ
(1)2011年に福島第一原発事故が生じた際は、「ヒロシマ・ナガサキの被爆者の苦しみをフクシマに繰り返させてはならない」との強い思いで爆発後10日目に福島県入りを果たしました。放射線測定器を2台携えて、全県を測定して回りその測定器を地元の農民連の方に預けてきました。その後、放射能モニタリングポスト数百個を網羅的に測定し、実際の被曝線量の半分の値しか示していないこと
を突き止めました。
(2)妻八重美もしばしば私と行動を共にし、福島で地元の人々と交流しました。同時に彼女は沖縄への避難者を支援する組織、「つなごう命―沖縄と被災地を結ぶ会」を立ち上げました。生活支援や相談を行い、東電を沖縄に呼び、福島県以外で初めての説明会を開くなどに奮闘しました。その支援活動のさなか八重美は心臓発作のために命を絶たれました。広島の被爆者をフクシマで被曝させてしまったという悔いが強く残ります。現在私は妻の遺志を継ぎ、「つなごう命の会」の代表を務めています。
4.政府の異常な原発事故処理
(1)政府は福島原発からはチェルノブイリの7分の1しか放射能が出ていないとします。実際は4.4倍ほど、広島原爆の4〜5千倍(渡辺悦司ら)です。
(2)福島でメルトダウンした炉心からは未だに1日400万ベクレルの放射性物質が大気中に放出されています。チェルノブイリでは事故後7か月で、石棺で覆い、放射性物質の飛散を防いでいます。
(3)悲しいかな、200人もの小児甲状腺がん患者が出ました。科学の目では明瞭に原発事故が関連する異常発生なのです。しかし日本政府は頑固にその関連を認めようとしておりません。厚労省人口動態調査のデータは、3.11以後体力のないお年寄りを中心に死亡者の急増を記録しています。
(4)一切の権限が総理大臣に集中する「原子力緊急事態宣言」で法律違反の年間20ミリシーベルトが住民の被曝を強制します。宣言が解除されないまま帰還・復興が進められ避難者支援が終了し、オリンピックが開催されます。
(5)政府・復興庁は「風評払拭・リスクコミュニケーション」のキャンペ−ンを行い「放射線のホント」を発行しています。「放射能を安全だと思い、食べて応援しなさい」という全国市民を内部被曝させる反科学的国家宣伝です。
5.私が原告になった理由
(1)たかが水を沸騰させるだけのために斯くも危険な原子力発電を再稼働する必要がどこにあるのでしょうか?一人一人を大切にする道理ある社会はこれを必要といたしません。また、高々数十年間原発を稼働させただけで、高放射能廃棄物の安全管理には1万年規模の時間が必要とされます。地球と未来世代に対する重大な信義違反です。原発は廃炉にすることのみが、人類の英知なのです。
(2)この訴訟において、私たちは市民の常識が通用する、当たり前の道理ある判断を求めます。日本の立憲制度は3権の分立を謳い、司法の独立が憲法上保障されています。どうか裁判官の皆様は司法の独立を守る気概を毅然と持ってください。その気概が人道に立たせ、ありのままを見る目を開き、道理を尊重させます。たかがお湯を沸かすだけのために異質な危険を使い続けることを「おろか」
と判断する、“あたりまえ”を示していただきたいのです。
「原発なくそう!九州玄海訴訟」原告団・弁護団
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