今夏にも閣議決定「第5次エネルギー基本計画」は日本の未来を描くか 重要な課題が山積みだが…
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2018年04月24日(火) 磯山 友幸 現代ビジネス
複線シナリオ?
2050年を目指した長期的なエネルギー政策について議論する経済産業大臣の私的懇談会「エネルギー情勢懇談会」が4月10日、「エネルギー転換へのイニシアティブ」と題した提言をまとめた。
脱炭素化に向けたエネルギー転換が急速に進んでいくとしながら、「可能性と不確実性に着目した野心的な複線シナリオ」を描くべきだとしている。
本来この懇談会は、日本が将来にわたって「原子力発電(原発)」とどう向き合うのかを示すことが期待された。提言書でも「取りまとめに当たって踏まえた点」として、以下のような文章が書かれている。
「福島第一原発事故が原点であるという姿勢は一貫して変わらない。我が国は、原子力の位置づけを考察し続ける責務がある。2050 年のエネルギー戦略を構想するに際して、エネルギーの選択肢の1つである原子力の検証・検討は不可避であり、この提言は、福島第一原発事故の教訓をどういう形で示していくのかという問いかけへの回答でもある」
ところが、提言では、真正面から原子力を扱う事を避けている。
懇談会の設立に当たって、経産大臣から2050年のエネルギー戦略のシナリオを描くよう求められたにもかかわらず、可能性と不確実性が混在する今後30年間のシナリオをひとつに決め打ちすることはむしろリスクだとして、「複線シナリオで行くべきだ」という回答を出した。
あえて言えば、「脱原発」をシナリオに乗せることだけは外した、と言えなくも無い。脱炭素化のためには、再生可能エネルギーも、原子力も、という「複線」のシナリオである。
原発はやめるのか、やめないのか
世界の流れが脱炭素化に向かっているという点だけは間違い無いだろう。
要はそれをどうやって実現するかだ。提言では、風力や太陽光発電といった再生可能エネルギーは重視し続けるものの、蓄電技術などがまだまだ開発途上で、今の技術では天候などに左右されて電力供給が不安定になってしまう。
安定化させるためには火力発電による補完が必要になるため、再生可能エネルギーは「単独では脱炭素化を実現することはできない」というのだ。その上で、「水素やCCS(二酸化炭素回収貯留)、原子力など、あらゆる選択肢を追求することが妥当だ」としている。
原子力を前面に押し出さないものの、原子力は選択肢として持ち続ける、と言っているわけだ。
ところが一方で、「原子力の課題解決方針」とした部分では、「可能な限り原子力発電への依存度を低減するとの方針は堅持する」とも述べている。
また、「我が国においては、更なる安全性向上による事故リスクの抑制、廃炉や廃棄物処理などのバックエンド問題への対処といった取組により、社会的信頼の回復がまず不可欠である」ともしている。
さらに、そのために、「人材・技術・産業基盤の強化に直ちに着手し、安全性・経済性・機動性に優れた炉の追求、バックエンド問題の解決に向けた技術開発を進めなければならない」と、前向きに取り組む事の重要性も指摘している。
この提言だけを読んで2050年に日本の原発がどうなっているかを想像するのは正直言って難しい。
方向性は煙に巻いたまま
この提言は現在見直しが行われている国の「エネルギー基本計画」に盛り込まれることになっている。基本計画の方向性を指し示す役割を担うことが期待されていたと言っても良い。
基本計画の見直しは、経済産業大臣の諮問機関である「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(分科会長・坂根正弘コマツ相談役)」で議論されている。
本来は原発の行方などを長期的な視点で検討すべきなのだが、大所帯で意見がまとまらないこともあり、少人数の懇談会が設けられた。
懇談会にも加わった坂根氏は技術者出身の経営者で、「化石燃料がいずれ枯渇した時の事を考えれば原子力技術は放棄すべきではない」というのが持論。懇談会の提言も、もっと理詰めで原発技術の開発持続の必要性を説く内容になるとみられていた。
最終的には「脱炭素化」という言葉で煙に巻き、原子力はあまり目立たせない仕上がりになった。
世論を気にしてまた先延ばし
現在のエネルギー基本計画は第4次計画。原発については「ベースロード電源」としたものの、一方で「可能な限り低減させる」という方針を示した。
というのも2012年秋に民主党政権が打ち出された「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」というがあったためで、これを見直したものの、全く逆に「原発推進」を打ち出すまでには、世論を気にしてできなかった、ということだろう。
第4次計画では、原発の「新設」や「建て替え」といった文言は書き込まれていない。既存原発を再稼動させたとしても、最長40年が経てばルール上、廃炉になってしまうため、なし崩し的に「脱原発」が進んでしまうわけだ。
それだけに、見直し中の第5次計画で、原発について政府がどう方向性を示すのかが注目されている。
だが、前哨戦とも言えた懇談会の提言に、原発の新設や増設といった文言が全く含まれなかったことで、第5次計画も「玉虫色」のままになる可能性が強まった。
いくらなんでも懇談会の提言にある「産業基盤の強化」や「機動性に優れた炉の追求」という文言で、原発の新設を意味していると強弁するのは難しい。
原発推進派からは、2050年になっても原発を維持すると言っている以上、原発新設は既定路線だという声が上がるかもしれないが、それでは国民のコンセンサスを得たことにはならないだろう。
夏にも閣議決定されるとみられる第5次エネルギー基本計画に注目したい。
オイルショック時に言われた「石油はあと40年で枯渇する」話はどこへ消えた?
— myline1919 (@myline1919) 2018年4月23日
そして、そもそも二酸化炭素に保温効果はありません。
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— マツモトユミ (@matsumocchi) 2018年4月23日