働き方改革法案:徹底的に議論を尽くせ !
野党の主張は ? (上)
(www.sakigake.jp:2018年4月7日 9時23分 より抜粋・転載)
秋田魁新報:社説:
政府は働き方改革関連法案を国会に提出した。罰則付きの残業時間の上限規制、同一労働同一賃金の導入、高度プロフェッショナル制度(高プロ)創設を盛り込んでいる。当初は裁量労働制の適用業種拡大も含まれていたが、削除した。
政府は6月20日までの今国会会期中に成立を目指すが、野党は対決姿勢を強めており、先行きは不透明だ。
国会に提出したのは、労働基準法、労働安全衛生法、労働者派遣法など8本の法律の改正案。残業時間の上限は「原則月45時間かつ年360時間」と明記。
繁忙期など特別な事情がある場合でも年720時間を上限に、月100時間未満、2〜6カ月平均で80時間以内とし、違反した企業には罰則を科す。
同一労働同一賃金の導入は正社員と非正規社員の不合理な待遇格差を禁じる。
高プロ創設は、職務の範囲が明確で収入が高い専門職を対象に労働時間や休日、深夜の割増賃金の規定から除外できるようにする。
政府は法案を後半国会の最重要課題と位置付けている。しかし野党からの反発は強く、特に高プロ創設は今後の与野党の対決で最大の焦点になると見込まれる。
高プロ創設について、政府は「時間外ではなく成果で評価される働き方」「生産性の向上につながる」と説明しているが、野党は長時間労働を助長し、対象職種が拡大する懸念があるとして削除を求めていく姿勢。希望の党と民進党は共同で、立憲民主党は独自に対案を国会に提出する構えだ。
政府は成立を急ぐあまり、拙速に審議を進めることは厳に慎むべきである。丁寧な対応に努めなくてはならない。
法案を巡っては、厚生労働省の労働時間調査の「不適切なデータ」を基に、安倍晋三首相が「裁量制で働く人の労働時間は一般労働者よりも短いというデータもある」と答弁し、結局は撤回した。加藤勝信厚労相が「なくなった」としていた調査原票も省内の倉庫から見つかった。
このことが、法案の柱の一つだった裁量労働制の業種拡大の削除、法案提出の遅れにつながったことは否めない。
東京労働局が裁量労働制の違法適用で野村不動産に行った特別指導について、きっかけになったとみられる社員の過労自殺を含めて納得できる経緯の説明がいまだされていない。
この問題に絡み、東京労働局長の報道機関への脅しとも取れる是正勧告発言も批判を浴びている。
審議遅れを恐れて、障害になるような事実を隠しているのではないかとの疑念が持たれる。一連の流れは、財務省の公文書改ざんや防衛省・自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題とつながるものがある。
働き方改革が本当に労働者のためになるのか。国会の場で徹底的に議論を尽くすことが求められる。そうでなければ国民の理解は得られない。
(参考資料)
T 参院予算委 小池書記局長の基本的質疑
(www.jcp.or.jp:2018年3月4日より抜粋・転載)
◆裁量労働制のデータねつ造 安倍首相の責任を問う
小池: 安倍政権は3年間も偽りの答弁を続けてきた
(首相も厚労相も責任は一切言わず)
小池氏は、安倍首相が表明した「働き方改革」一括法案からの裁量労働制の全面削除に言及。「これは『全国過労死を考える家族の会』のみなさんの命がけの訴え、そして結束した野党と急速に高まった国民の反対世論の力だ」と強調しました。
そのうえで「法案切り離しで一件落着にはならない。『裁量制で労働時間が長くなって過労死が続出するのではないか』という野党の批判に対して、安倍政権として3年間、偽りの答弁を繰り返してきた。総理の責任は重大だ。それを明らかにしなければ、それこそ前に進めない」と述べ、政府の責任をただしました。
安倍首相は「私が(データにふれて)答弁したのは1回。この3年間は厚労相の答弁だ」と責任回避に躍起。一方、加藤勝信厚労相は「答弁を撤回、おわびしている。引き続き職責を果たしていきたい」。小池氏は「総理も厚労大臣も一言も責任を言わない。責任をとらなければ前に進めないではないか」と重ねて批判しました。
◆「働き方改革」残業代ゼロ制度も撤回すべきだ !
小池: 高プロ制度は休日・深夜の労働に割増賃金は払われるか
労働基準局長 適用されない
安倍首相は、「働き方改革」一括法案から、「裁量労働制の対象拡大」をいったん削除する事態に追い込まれましたが、「残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)」については予定通り盛り込むと表明しています。
小池: 裁量労働制の拡大は切り離しましたが、「高プロ」は裁量労働制と根っこは同じです。さらに危険は大きい。裁量労働制と高プロの違いを確認していきたい。時間外の割増賃金は、裁量労働制では「みなし労働時間」が8時間を超えた部分は、「三六協定」を締結し、割増賃金を払う。「高プロ」ではどうですか。
山越敬一・厚労省労働基準局長: 「高プロ」は、割増賃金は適用になりません。
小池: 裁量労働制では、休日・深夜に労働した場合は割増賃金を支払わなければなりませんが、
◆「高プロ」はどうですか ?
労働基準局長: 深夜割り増しは適用されません。休日も適用されないことになります。
小池: 毎日の労働時間に応じた休憩は取れるか
労働基準局長 (これも)適用されない
小池: 有給休暇以外、労働時間の規制を適用除外し、残業代も支払われない――残業代ゼロ制度と呼ぶ以外にないではないか
厚労相 高プロは時間ではなく成果で評価されることを選択できる制度
小池: 裁量労働制では、労働時間に応じた休憩を取らなければいけませんが、「高プロ」ではどうですか。
労働基準局長: 休憩時間についても適用されません。
小池: つまり、「高プロ」は年次有給休暇以外の労働時間の規制をすべて適用除外とする。まさに「異次元の危険性」があるわけです(パネル1)。
象労働者を労働時間管理の対象から外して、何時間働いても残業代を支払わなくてもいい。だから「残業代ゼロ制度」と呼ぶほかない。
働かせる側にとっては極めて使い勝手がいいが、働く側は何時間も長時間労働になる、歯止めがない。
総理は、裁量労働制については、答弁を撤回し、法案から切り離すことにしました。ならば、裁量労働制とともに検討され、裁量労働制よりいっそう歯止めのない「高プロ」も撤回すべきではありませんか。
首相: その考えはございません。
厚労相: 高プロは時間ではなく、成果で評価される働き方を選択することができる。労働時間、休日等労働時間規制は外しますが、同時に、健康を確保する措置を講じます。連合の神津会長から要請いただいた内容も踏まえて、年間104日、かつ4週間あたり4日以上の休日取得を義務付ける。
健康管理時間の把握を義務付け、選択的「健康確保措置」をさらに実施する。健康管理時間が長時間に及ぶ場合は、医師による面接指導を義務付けます。
小池: 連合は裁量制の拡大、高プロの導入反対の基本的な考え方は変わらないと声明で表明しています。修正の「要請」を出しましたが、これは懸念を少しでも払しょくするためだと。合意は何もないんですよ。
小池氏は、政府が持ち出す対応策について切り込みました。
小池: 法律上年104日間休ませれば、残り年間6000時間労働でも違法とされない
厚労相: (それを)規制する規定はない
小池 健康確保措置で年104日以上の休日といったけれど、104日といえば週休2日、土日さえ休ませれば、盆暮れ正月も祝日もゴールデンウイークも全部働かせていいんだと。
しかも、毎週2日を休日としなくても、4週で4日以上でいい。だから、4週間のうち最初の4日間さえ休ませれば、あとの24日間は時間制限もないわけだから、24時間ずっと働かせる。
これが法律の枠組みではできるようになる。私がいったことが、法律上排除されていますか。
厚労相: 自分で仕事を割り振りして、より効率的な、そして自分の力が発揮できる状況をつくっていくということであります。
小池: 「高プロ」で労働時間の指示ができないという規定が法律上あるか。
厚労相: これから指針をつくります。
小池: 質問に答えていない。104日を除けばずっと働かせることができる。
計算すれば、6000時間を超える。これを排除する仕組みが法律上あるかと聞いている。
加藤厚労相が質問に答えないため、委員会は中断する事態に。小池氏は追及の手をゆるめません。
小池: 法律上、禁止されていますかと聞いている。イエスかノーかはっきり答えてください。
厚労相: それ自体を規制するという規定はありません。
追い詰められた加藤厚労相は、とうとう認めました。
小池: こんな仕組みを作ってしまっては、人たるに値する生活を労働者はおくれない
首相: 年収1075万円以上の方々の制度だ
小池: 残業代をもらい長時間労働をやっている労働者の年収が反映される仕組みだ
小池: 実際に過労死は起きている。それを強行的に止める仕組みが労働基準法なんですよ。その第1条で「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充(み)たすものでなければならない」となっている。この労働基準法でこんなゆるいことをしてしまったら、労働者は守れない。
総理、年間6000時間働くことが、違法とされない、こんな仕組みをつくってしまっていいんですか。これで「人たるに値する生活」を労働者はおくることができるんですか。
首相: 「高プロ」はこれからつくる制度ですから、なにか問題がおこっているということではないわけです。
(高プロの適用については)書面で本人が希望することですし、平均給与の3倍、1075万円の方々であれば、相当の交渉力がある。成果に準ずる働き方を自ら選択し、なおかつ健康確保措置はとられています。
安倍首相が持ち出した言い訳について小池氏は次のように反論しました。
小池: 同意があるといったって、上司から言われたら拒否できない。年収要件が1075万円でごく一部だというけれども、経団連の榊原会長は、年収要件の緩和を繰り返し求めていました。
2015年4月の経営者の会合で、当時の塩崎厚労相はこういっています。
「経団連がさっそく1075万円をさげるといったもんだから、あれでまた、質問がむちゃくちゃきましたよ。
とりあえず通すことだと言って、合意をしてくれると大変ありがたいと思っている」と。私はこの直後の国会の質問でこれを聞いたら、塩崎さんは「そこはぐっと我慢してくださいねといってるだけで、私はストレートに言えば、そういうことを言うのはやめてくださいということですよ」と。
財界には年収要件の緩和は黙っといてください、とにかく法案を通させてくださいと。こんなことでは、年収要件などはアリの一穴でどんどん広がるではないか。
厚労相: 法律要綱では、対象となる賃金額の要件を、使用者から支払われると見込まれる年間の賃金額が、平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準となっています。
どのくらいかということで、1075万という数字がでています。この考え方は、法律を改正しない限り変えることはできません。
小池: 1075万円は、どうなのか。例えば、高橋まつりさんの過労自死が問題になった電通。有価証券報告書によれば、2015年12月31日、高橋まつりさんが亡くなった直後の電通の従業員数は7261名、平均年間給与は1200万円を超える。
長時間労働も年収を押し上げているのだろう。
確認しますが、例えば基本給が500万〜600万であっても残業代も含めて年収1075万円超えれば高プロの対象になりますね。
厚労相: 確実に支払われることが見込まれる賃金ということであります。残業は確実に見込まれませんから、今の場合には対象にはなりません。
小池: 昨日は「なる」という回答だったが、変わったのか。
厚労相: 残業代を含めて1100万の方がおられる。その方が、高プロ制度ができて、1100万円払いますよということであれば、これはクリア(該当)いたします。
800万で、そこから何ぼ出すかは働き方次第ですよということであれば、対象にはならない。
加藤厚労相の答弁で、年収要件が、1075万円といっても、それは基本給ではなく、残業代を含めれば、長時間労働のサラリーマンなら、対象になることが明らかになりました。これでは歯止めにもなりません。
小池: 長時間労働をやっている労働者の年収が反映される仕組みだ。総理、裁量労働制を切り離すならば、それ以上の労働条件の悪化をもたらす「高プロ」も併せて再調査し、労政審で再検討するのは当然の筋ではないですか。
首相: 高プロは、時間に応じて報酬をもらうというよりも、成果に応じた報酬をもらうことですから、形態が異なる。交渉力もあるわけで、本人がそういう働き方を選んでいくということです。
小池: 1075万超えれば、交渉力があるというのは、全く根拠がない。
小池: 裁量労働制のトヨタ自動車の実態――100時間前後の超過勤務時間、まさに過労死水準だ
首相: 今回提出する法案からは裁量制は削除した
小池: 「自律的な働き方」だと、裁量労働制も高プロもそうだとおっしゃるが、実態はどうなのか。裁量制というのは業務の遂行手段や、時間配分は裁量で決定できますけども業務量は裁量で決定できないですよね。
厚労相: 使用者から与えられる業務量について、働き手が裁量的に決められるものではありません。 小池氏は、裁量労働制を導入しているトヨタ自動車の実態を示しました。
トヨタ労組が組合員に示した資料では、2016年10月から17年3月までの半年間で、企画業務型裁量労働でみなし労働時間1日9時間の対象者370人のうち、限度を超えた長時間労働のために適用除外になった人が11人。
それ以外に健康調査票を出した人や健診を受けた人などが309人おり、実に8割が「健康状態に懸念がある」と報告されています。
半年間で超過勤務時間の最大が、企画業務型で月95・4時間、専門業務型で月100・5時間となっています。
小池氏は「まさに過労死水準だ」と指摘し、労働組合が紹介している労働者の声を読み上げました。
「短納期の突発対応をすべて請け負わされるなど、次から次へ業務を付与され、まとまった業務付与となっていないため、裁量が発揮できる状態ではない」というものです。
小池氏はこう迫りました。
―この続きは次回投稿します―