トランプが抱いた不信感 鉄鋼関税導入の狙いは日本である 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/226157
2018年3月30日 孫崎享 外交評論家 日刊ゲンダイ 文字起こし
対日強硬策が目的(C)AP
米国が鉄鋼関税の引き上げに踏み切った。「鉄鋼製品の輸入増加が国家安全保障上の脅威になる」というのが理由だが、この論理は果たして正しいのであろうか。
米商務省が2月に発表した「鉄鋼輸入報告」によると、国別輸入の比率はカナダが17%、ブラジルが14%、韓国が10%、メキシコが9%、ロシアが8%、トルコが6%、日本が5%、ドイツが4%、台湾が3%、中国が2%となっている。
今回の措置で、ホワイトハウスは豪州、欧州、韓国、カナダ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジルを25%関税の対象から外すと公表した。輸入比率の大きいカナダ、ブラジル、韓国、メキシコが措置の対象外となりながら、比率の低いロシアや日本、中国が対象というのは、米国が主張する「国家安全保障上の脅威」の論理と矛盾する。
明確なのは、いわゆる米国の友好国は対象外であり、仮想敵国と扱ってきた国が対象ということ。そして今回、日本は友好国側のグループに含まれなかったのだ。
これは決して偶然に起きたことではない。トランプ大統領はこう発言している。
「日本の安倍首相らは『こんなに長い間、米国をうまくだませたなんて信じられない』とほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ」
つまり、安倍首相らにだまされてきた、と言っているのだ。
なぜ、日本がやり玉に挙がったのか。最大の理由は次期米大統領選であろう。トランプ大統領は既に大統領選のチームを立ち上げ、スローガンに「米国を再び強国に」を掲げている。
米国内で自動車産業、鉄鋼産業を衰退させたのは日本だ――という意識は根強い。対日強硬策は、トランプ支持者に強く訴えることができるのだ。あわせてトランプ大統領の安倍首相に対する不信感があるとみられる。トランプ大統領を最も強く批判しているのがオバマ前大統領である。そのオバマ前大統領と安倍首相は25日に面会し、寿司を食べた。
トランプ大統領が「安倍首相は俺にすり寄ってくるが、政敵にもすり寄っている。俺をうまくだましやがって」という感情を抱いても不思議ではない。日本の大手メディアは、日米首脳間に強い「絆」で結ばれた個人的な結びつきがあると報じてきたが、そんな結びつきは全く存在しないのだ。
トランプが抱いた不信感 鉄鋼関税導入の狙いは日本である|日刊ゲンダイDIGITAL https://t.co/BluZPt8fnG @tim1134
— 桃丸 (@eos1v) 2018年3月30日
鉄鋼関税導入の狙いは日本である
— KK (@Trapelus) 2018年3月30日
日本の大手メディアは、日米首脳間に強い「絆」で結ばれた個人的な結びつきがあると報じてきたが、そんな結びつきはまったく存在しないのだ
日本外交と政治の主体 孫崎享(日刊ゲンダイ) pic.twitter.com/eYTQ2Uem0J