根拠のない話で米国を上回る戦闘能力を持つ国に最後通牒を突きつけた英政府の狂気(その1)
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2018.03.15 櫻井ジャーナル
イギリスのボリス・ジョンソン外相は3月12日にイギリス駐在ロシア大使を呼び出した。ロシアが持ち込んだ神経ガスで元GRU(ロシア軍の情報機関)大佐のセルゲイ・スクリパリとその娘のユリアが攻撃されたという前提で、外相はその件に関する報告書を13日までに提出するよう要求、イギリス側が満足する報告がなければロシアによるイギリスに対する不法行為だと結論するとテレサ・メイ英首相は主張している。
こうしたイギリス政府の言動を「最後通牒」だとロシア政府は表現、そうした要求をする前に根拠、証拠を明らかにするべきだと反論している。本ブログでも指摘済みだが、イギリス側の主張に説得力はない。
アメリカが2003年3月にイラクを先制攻撃する前、イギリスは大量破壊兵器という嘘を広める手助けをした。それは広く知られている事実。それを知った上でアメリカ政府やイギリス政府の新たな嘘を信じる、あるいは信じる振りをする人がいるとするなら、その責任は重い。それは「騙された」ということではなく、共犯だ。
1991年12月にソ連が消滅して以来、アメリカやイギリスをはじめとする西側諸国の好戦派は世界制覇の野望を達成するまであとわずかだと考え、露骨な侵略をはじめたが、その直前、国防次官だったネオコンのポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると発言している。この話は2007年にウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官が語っている。(3月、10月)
1992年2月にはリチャード・チェイニー国防長官の下、ウォルフォウィッツ次官を中心にして世界制覇プランを国防総省のDPG草案として作成した。いわゆるウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。
アメリカが経済的に成長著しい中国を次のターゲットに定め、東アジア重視を打ち出したが、それと同時に、ヨーロッパ、東アジア、中東、南西アジア、旧ソ連圏が潜在的ライバルとして挙げられている。また、ラテン・アメリカ、オセアニア、サハラ以南のアフリカもアメリカの利権があるとしていた。
クラークによると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてから10日ほどのち、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国リストが作成されていた。まずイラク、ついでシリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そして最後にイランだ。
つまり、1991年にウォルフォウィッツが口にした3カ国のほか、天然ガス開発とパレスチナ問題が絡むイスラエルの隣国であるレバノン、ドル体制から離脱してアフリカを自立させようとしていたリビア、インド洋と地中海をつなぐ紅海の出入り口にあるソマリア、資源の宝庫スーダンがターゲットになっている。
リビアはNATOとアル・カイダ系武装集団が連携してムアンマル・アル・カダフィ体制を倒し、今は無法地帯。それでもアフリカを自立させる動きは止め、資源や資産もリビア国民から奪うことに成功した。アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、あるいはカタールといった侵略同盟国は最低限の目的を達成したと言えるだろう。
ところが、リビアより1カ月遅れで始めたシリア侵略は途中、ロシアが登場して計画通りに進んでいない。送り込んだ傭兵(アル・カイダ系武装集団やダーイッシュ)はシリア政府の要請で介入してきたロシア軍に攻撃されて支配地域を大幅に縮小、アメリカが新たな手先として使い始めたクルドはトルコの反発を招く原因になり、アメリカの思惑通りには進んでいないようだ。(つづく)