「第9条」阪田私案で自衛隊員はアメリカのために死ぬ!?
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サンデー毎日 2018年3月11日号
牧太郎の青い空白い雲/659
変節漢は(前回取り上げた)河野太郎外相だけではない。
今回紹介する「高級官僚の心変わり」が日本を戦争の泥沼に引き込もうとしている。
元内閣法制局長官・阪田雅裕氏のことである。阪田氏は先ごろ、『朝日新聞』に憲法改正私案なるものを発表した。
その問題箇所を、少々長くなるが、我慢して読んでくれ。
憲法第9条
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
ここまでは、現憲法のままである。以下、阪田私案は自衛隊に言及する。
3 前項の規定は、自衛のための必要最小限度の実力組織の保持を妨げるものではない。
4 前項の実力組織は、国が武力による攻撃をうけたときに、これを排除するために必要な最小限度のものに限り、武力行使をすることができる。
5 前項の規定にかかわらず、第三項の実力組織は、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされる明白な危険がある場合には、その事態の速やかな終結を図るために必要な最小限度の武力行使をすることができる。
いや、驚いた。狂気としか思えない。
× × ×
世界は広いというけれど、憲法の中で"密接な関係にある他国が攻撃された場合には、武力を行使できる"と規定している国なんてあるだろうか?
阪田氏は同盟国アメリカに対する攻撃を想定しているのだろう。有事になれば、アメリカのために自衛隊が武力行使する。隷属の極みである。
こんな私案を発表する意図はなんだろう?
安倍首相! 私は貴方(あなた)の「アメリカと一蓮托生(いちれんたくしょう)」主義を高く高く評価しております。くれぐれも私をお忘れなきよう!
そんなメッセージが阪田私案に隠されているのか?
そんな「邪(よこしま)な憲法私案」で、自衛隊員が殺されたら......。冗談は顔だけにしてくれ!
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阪田氏は「マトモな知識人」だったと思う。第3次安倍内閣が推進した平和安全法制に対しても否定的だった。ちなみに、内閣法制局長官退官の翌年、月刊誌『世界』(岩波書店、2007年9月号)で、集団的自衛権行使の憲法解釈変更に反対の立場を表明していた。
2015年6月22日の衆議院平和安全法制特別委員会の参考人質疑。阪田氏は、集団的自衛権の限定的な行使について一定の理解を示したものの「(安倍さんが主張する)ホルムズ海峡の機雷封鎖は、どう考えても日本の存立を脅かし、国民の生命、自由、幸福追求の権利を根底から覆す事態に至りようがない。ホルムズ海峡が機雷封鎖されたとしても、日本は集団的自衛権に基づく掃海活動はできない」と主張した。
はっきり言えば、この時、阪田氏は「反安倍」だった。
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なぜ心変わりしたのか? 彼も「流行(はや)りの忖度(そんたく)」をしたのか?
昨今、高級官僚は争って安倍さんに「都合の良い情報」ばかりご注進する。その最たるものが、厚生労働省の「裁量労働制のデータ捏造(ねつぞう)」騒動。「裁量労働制で働く人のほうが、一般労働者よりも労働時間が短い」というデータを平気で"創作"した。
安倍さんに「うい奴(やつ)だ」と言われたいだけで「忖度」する官僚たち。
まさか、阪田さんまで?
困った。実に困った。