裁量労働データ「時間取れず、ずさんな調査に」 労働基準監督官が証言 !
各野党の主張は ?
(www.tokyo-np.co.jp : 2018年2月25日より抜粋・転載)
東京新聞・ 朝刊:
裁量労働制に関する厚生労働省調査に不適切なデータ処理があった問題で、調査に当たった労働基準監督官の男性が、二月二十四日までの共同通信の取材に、「一社当たりの調査時間を約一時間半とする内規に従ったが、(私の場合)十分な時間が取れなかった。結果的に、調査がずさんになってしまった」と証言した。
◆不自然な数値が、二百件以上見つかっている !
この調査を巡っては、これまで不自然な数値が、二百件以上見つかっているが、実際に担当した監督官が調査手法の不備を証言するのは初めて。
全国約三百二十の労働基準監督署が一万一千五百七十五事業所を調査したが、不十分な調査の一端が浮かび上がった。
◆調査全体の信頼性に、疑義が生じれば、
法案そのものの正当性が、問われる !
問題となっているのは、「二〇一三年度労働時間等総合実態調査」である。
裁量制の拡大など、働き方改革関連法案の一部は、この調査を踏まえた、政府の審議会の議論を経て作成された。
安倍晋三首相は、全データの精査を指示しているが、調査全体の信頼性に疑義が生じれば、法案そのものの正当性が問われかねない。
男性は、二〇一三年四月ごろ、東日本の監督署管内にある、約十社を調査した。
労使協定の内容や、最低賃金などを確認する、監督業務も行った上で、一般労働者の残業時間や裁量制で働く人の勤務時間など、多岐にわたる項目を聴取した。
内規で定められた、約一時間半の間には、移動や報告書作成の時間も含まれ、調査には、数十分しか割けなかった。一日で五社を回らなければならず、「まともに調べられなかった」と話す。
◆正確に把握するには、全従業員の労働時間を集計し、
分布を調べる必要がある !
また、この調査では、「その事業所で、最も多くの従業員が当てはまる、労働時間に属する人」を「平均的な人」と定義した。
うち一人を抽出して、調べることになっていたが、正確に把握するには、全従業員の労働時間を集計し、分布を調べる必要がある。
男性は「抜き打ち調査のため事前に必要な資料を準備している企業はなく、分布を調べることはできなかった。
実際は、単に『平均的な人はだれですか?』と尋ねていた」と明かす。
政府は、法案作成の過程で、調査結果に基づくデータをたびたび利用していた。
安倍首相も国会答弁に引用した。
<労働時間等総合実態調査> 厚生労働省が実施する労働時間や賃金などに関する調査。政策検討の基礎資料とすることが目的で、直近では2013年4〜6月に、一般労働者の残業時間や裁量労働制で働く人の勤務時間などを調べた。
全国に約4000人(2015年度)いる労働基準監督官が企業を訪問し、労働条件の抜き打ち検査に併せて質問項目も聞き取る「調査的監督」という手法で実施する。
◆法案の議論には、再調査不可欠だ !
<解説> 働き方改革関連法案の柱の一つである裁量労働制について、政府が法案作成に活用した調査そのものの正当性が揺らいでいる。
データの不備が次々と発覚し、調査を担当した現場の労働基準監督官が不十分だったと証言した。
厚生労働省は、現場が制約のある中で集めた数値を厳しく吟味しなかったのか。裁量制の是非を議論するには、十分に時間をかけた再調査が不可欠だ。
◆安倍首相らが、不備データで答弁しており、
「調査によれば」と言及し、答弁撤回に追い込まれた !
今回の労働時間等総合実態調査は、働き方改革に含まれる
(1)中小企業の残業代の割増率引き上げ
(2)裁量労働制の拡大−という二つの政策実現に向け、厚労省が現状を把握するために実施した。
だが、政府は、データを不適切な手法で比較した。「長時間労働を助長する」と批判する野党への反論材料として、国会で引用してしまった。
安倍晋三首相らが「調査によれば」と言及し、答弁撤回に追い込まれた。
◆企業が、都合の悪い数字を、 出せなかったのではないか ?
現場から上がってきた調査票には、一日の労働時間が「一時間」など極端な数字が並んでいた。
野党からは「企業が都合の悪い数字を出せなかったのでは」との指摘も上がる。
各地から報告を受けた厚労省の職員たちは、疑問を感じなかったのか。
この調査が、労働者の実態を反映しているとは言えない。
(参考資料)
T 【衆院予算委】働き方関連法案を
めぐり長妻、逢坂両議員が質問
(cdp-japan.jp:2018年2月20日より抜粋・転載)
◆働き方改革等について、安倍総理ら政府の
見解をただしました !
衆院予算委員会で、2月20日、社会保障・人づくり革命等に関する集中審議が開かれ、代表代行兼政務調査会長の長妻昭議員、同委員会野党筆頭理事の逢坂誠二議員が質問に立ち、働き方改革を中心に安倍総理ら政府の見解をただしました。
長妻議員は、
(1)裁量労働制の労働時間比較調査をめぐる安倍総理の虚偽答弁疑惑
(2)裁量労働制と通常の労働者との平均時間比較調査(独立行政法人労働政策研究・研修機構)
(3)労働基準監督官の監督体制の脆弱性――等について質問。裁量労働制をめぐっては、今回政府が、データ比較が不適切だったと問題を認めた「平成25年労働時間等総合実態調査」をもとに議論してきたことから、「政策形成がゆがめられていた」と批判した。
◆3年間も虚偽のデータをもとに 議論されてきた事になる !
このデータが初めて示されたのは、2015年3月26日の民主党(当時)の厚労部門会議だったことにも触れ、3年間も虚偽のデータをもとに議論されてきたことになると問題の大きさをあらためて指摘しました。
裁量労働制に対する監督体制は現行でも形骸化しているとして「適用範囲が拡大すれば、過労死、過労自殺が増える」と、法案提出を見直すよう求めました。
◆一般労働者の労働時間よりも裁量労働制の
労働時間の方が長いデータもあるのに、隠蔽 !
逢坂議員は、
(1)総理発言の「裁量労働制は一般労働者より労働時間が短い」という傾向を示す調査結果と19日朝発表の精査結果
(2)学校法人「森友学園」への国有地払い下げ問題
(3)原発ゼロ政策の計画書の提出――等について質問。
労働政策審議会(労政審)での議論でも、裁量労働制の労働時間について示されたのは「平成25年労働時間等総合実態調査」のデータのみだったことを加藤厚労大臣に確認した。
一般労働者の労働時間よりも裁量労働制の労働時間の方が長いデータもあるにもかかわらずこれを示さなかったことを問題視しました。
今回のデータは、裁量労働制の労働時間は「臨検」(労働基準監督官による事業所への立ち入り検査)によるものであるため、調査される側に委縮効果が生まれる可能性があるとも指摘し、労働時間の再調査を行ったうえで労政審での議論をやり直すよう求めました。
U 「法案そもそものバックデータ自体 が崩れている」
裁量労働データ問題で、平野国対委員長
(www.minshin.or.jp :2018年2月21日より抜粋・転載)
平野博文国会対策委員長は21日、定例記者会見を国会内で開いた。
衆院予算委員会で連日取り上げられている厚生労働省の労働時間実態調査をめぐる虚偽データ疑惑について「(裁量労働制拡大を盛り込もうとしている)法案のそもそものバックデータ自体が崩れている」と述べ、裁量労働の実態調査をしっかりと行った上でもう一度法案をつくり直すべきとの認識を示した。
森友学園問題で佐川国税庁長官や安倍昭恵夫人の国会出席に与党が応じないことについては、「メディアの調査を見ても国民は(国会で)説明すべきとの意見が圧倒的だ」とし、野党が求める国会出席を実現しない限りこの問題は収束しないと述べた。
―民進党広報局―
V 裁量労働制:偽りのデータに抗議 !
衆院予算委で高橋議員、 法案提出断念迫る !
(www.jcp.or.jp:2018年2月21日より抜粋・転載)
日本共産党の高橋千鶴子議員は、2月20日の衆院予算委員会で、「裁量労働制」に関する調査結果を厚生労働省が“捏造(ねつぞう)”したことに抗議し、「働き方改革」関連法案の提出断念を求めました。
安倍政権が「働き方改革」法案に盛り込んだ裁量労働制の拡大について、高橋氏は「野党側から『長時間労働になる』『労働時間の把握が難しく、労災が決まりにくい』といった指摘を繰り返し受けていた」と指摘。
裁量制の方が一般労働者より労働時間が長い傾向は労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査で明白であるため、「なんとかして『わずかでも裁量労働のほうが労働時間は短い』というデータを無理やりつくりだした偽りの結果だったことは疑う余地がない」と断じました。
その上で高橋氏は「偽りのデータを使って影響を少なく見せようとする姑息(こそく)なやり方に断固抗議する。法案提出も断念すべきだ」と強く求めました。
加藤勝信厚労相は、不適切だったと謝罪しましたが、「法案の作成作業を進めている」と固執しました。
高橋氏は「(捏造の)根っこには、野党の指摘が当たっていることがある」と指摘。みなし労働時間を10時間以上に設定している事業所は、0・1%しかないのに、実労働時間では10時間以上が31・7%もある裁量労働制の実態を紹介。
何時間働かせても「みなし時間」分の賃金しか払われないとして「サービス残業合法化と呼ぶべきだ」と告発しました。
加藤厚労相は「みなし時間と実労働時間が乖離(かいり)しないよう指導する」などと答弁。高橋氏は「裁量労働を隠れみのにただ働きや長時間労働をさせている実態があり、拡大すればもっと起こり得るという危険意識を持っているということだ」とただし、裁量労働の実態調査と検証を求めました。
W 「働き方改革」関連法案提出見送り等
与党へ要求 !野党幹事長・書記局長会談
(www.seikatsu1.jp:2018年2月21日より抜粋・転載)
2月21日、野党幹事長・書記局長会談が国会内で開かれた。
今会談では以下4点を政府・与党に求めていくことで合意。また2月23日12:00から「裁量労働制再調査と佐川国税庁長官らの証人喚問を求める野党合同院内集会」を開くことに決まった。
自由党から出席した玉城デニー幹事長は、「与党はメディアを通じて観測気球を上げる、このやり方を許してはダメ。
通告しても来ない佐川氏にはこちらがもっと強い態度で臨んでも良いと思う。委員会に役人を呼んで、来ないなんてとんでもない話。国会軽視以外にない。
自由党は衆議院に予算委員はいないが出来る限りの協力をする」と述べた。
会談で合意した4点は下記の通り。
○「平成25年労働時間等総合実態調査」の再実施を含む裁量労働制についての全般的な再調査
○「働き方改革」関連法案の提出見送り
○佐川宣寿国税庁長官、安倍昭恵首相夫人、加計孝太郎氏の証人喚問
○与野党幹事長・書記局長会談の開催
X 労働時間で首相答弁撤回 ! 裁量労働制の拡大やめよ !
■野党6党が厚労省ヒアリング
吉川元・政審会長:(社会新報2018年2月21日号より)
安倍首相が「厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者より短いというデータがある」との1月29日の答弁を2月14日に撤回した問題で、野党6党は同日、国会内で厚労省からの合同ヒアリングを行なった。社民党から吉川元・政審会長が参加した。
野党側は、そもそも比較対象である一般労働者の1日の実労働時間の調査は行なわれていないなどと指摘し、この同省データを根拠とする裁量労働制の拡大方針は撤回すべきだと主張。同省側は「現在精査しているところ」と繰り返し、議論はかみ合わなかった。