自分たちが中東を支配するための重要な拠点であるトルコを刺激したくない米国にクルドが反発か
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201801290000/
2018.01.29 櫻井ジャーナル
アメリカとクルドとの関係が微妙になってきた。1月20日からトルコ軍がアフリンのクルド勢力に対して「オリーブの枝作戦」を開始したが、トルコとの関係をこれ以上悪化させたくないアメリカの動きは鈍く、クルド側は裏切られたと感じはじめているようだ。シリア政府はトルコの軍事侵攻を批判しているが、シリア北部に居座っているアメリカ軍も侵略者にほかならず、やはりすみやかに撤退することを求めている。
トルコはNATO加盟国であり、アメリカの中東支配にとって重要な拠点。シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すためにアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟を中心とする勢力がサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団などで編成された傭兵部隊を使ったシリア侵略を本格化させた2011年3月当時から、トルコにあるインシルリク空軍基地は重要や拠点だ。
アメリカがクルドと連携した最大の理由は、言うまでもなく、送り込んだ傭兵部隊、いわゆるアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)がシリア政府の要請で2015年9月30日に軍事介入したロシア軍によって壊滅に近い状態になったからだ。アメリカの軍や情報機関はそうした戦闘員の一部をヘリコプターなどで救出し、一部はアフガニスタンへ、一部はクルドを中心に編成されている武装集団へ参加させている。
どのようなタグが付けられているにせよ、今の状態で傭兵部隊が真の意味で壊滅することはありえない。シリアなどを侵略している戦闘員は傭兵にすぎず、そうした戦闘員を雇い、命令している本体が健在だからだ。言うまでもなく、その本体はアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟。
アメリカもクルドと組めばトルコ政府が怒ることを見通していただろうが、その前にアメリカの描いていたシリア侵略プランはロシア軍の介入で完全に狂っていた。2016年6月下旬にレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は15年11月24日のロシア軍機撃墜を謝罪し、16年7月13日にトルコ首相はシリアとの関係正常化を望んでいることを示唆していた。トルコで武装蜂起があったのはその2日後のことだ。このクーデター計画を失敗に終わらせた一因はロシアからの情報提供にあったと言われている。
このクーデター未遂に関し、エルドアン政権はその首謀者をアメリカへ亡命中でCIAの保護下にあるとも言われているフェトフッラー・ギュレンだとしている。蜂起の背後にはアメリカ中央軍のジョセフ・ボーテル司令官やジョン・キャンベルISAF司令官がいたとも主張、これ以降、トルコとアメリカとの関係は悪化する。ロシアへ接近していたことだけでなく、侵略軍の主力をクルドへ切り替えるためにもエルドアン政権を倒す必要があったのだろうが、これは裏目に出た。
エルドアンだけでなく、例えばリビアのムアンマル・アル・カダフィやイラクのサダム・フセインは、少なくとも一時期、アメリカと緊密な関係にあった。シリアのアサド政権もアメリカに敵対しようとはしていない。それでも従属度が足りないと判断されれば破壊と殺戮の対象になる。エルドアンもそうした現実を認識、ほかの国々の支配者も同じように感じただろう。
ウクライナでネオコンがネオ・ナチを使ってクーデターを実行したあたりから中国もアメリカが信頼できないことを認識してロシアとの関係を強めている。韓国もアメリカを信頼しているようには見えない。ひたすらアメリカに従属しようとしている日本の支配層は異様だ。アメリカに従属していれば自分たちの理不尽な言動も許され、日本が破壊されても自分たちだけは地位と富を保証されていると考えているのだろうか?