米国がダーイッシュなど武装勢力に替わって侵略の手先にしようとしているクルドをトルコが攻撃
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2018.01.21 櫻井ジャーナル
シリアの北部を支配しているクルド勢力、SDF(シリア民主軍)やYPG(クルド人民防衛隊)をアメリカ政府は自分たちの手先として使おうとしている。そのクルド勢力を敵視するトルコ軍はシリア北西部アフリンに対する攻撃を始めた。別に複雑な話ではない。山岳地帯のため、トルコ軍の戦車部隊が入ってくる可能性はないと見られているが、空爆の可能性はある。
トルコの軍事介入をシリア政府は批判する一方、クルド勢力の一部が外国勢力、つまりアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟からの支援を受けていると指摘している。この点はトルコ政府の認識も同じで、SDF/YPGを中心としてアメリカ軍が組織しつつある「シリア国境軍」を完成前に「溺死」させるとしている。
本ブログでは繰り返し書いているように、アメリカ政府がクルドと手を組んだのは、1970年代終盤からアメリカの好戦派が手先に使ってきたアル・カイダ系武装集団、そこから派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)をシリア政府の要請で2015年9月30日に軍事介入したロシア軍がほぼ殲滅したため。
アメリカがアル・カイダ系武装勢力やダーイッシュと戦ってきたかのように主張する人が今でもいるようだが、これは遅くとも2011年10月、リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制が倒された時点で明確になっていた。侵略戦争が始まった同年2月の時点で「知る人ぞ知る」状態だったが、反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられ、その様子はYouTubeにアップロードされたのだ。その事実はデイリー・メイル紙も伝えている。これは象徴的な出来事だった。
シリアでも2011年3月に侵略戦争が始まったが、リビアでカダフィ体制が崩壊するとアメリカなど侵略の後ろ盾はアル・カイダ系武装集団や武器/兵器をシリアへ移動させる。これは西側メディアも伝えていた。そうした移動工作の中心がCIAであり、国務省が協力している。そうした工作はベンガジにあったCIAの施設が使われ、アメリカ領事館も拠点だった。当時のCIA長官はデイビッド・ペトレイアスであり、国務長官はヒラリー・クリントンだ。
当初、アメリカをはじめとする西側の政府や有力マスコミは独裁政権による民主化運動の弾圧というシナリオを宣伝していたが、その嘘はすぐに発覚、バラク・オバマ政権は「穏健派」というタグを持ち出して武装勢力への支援を正当化する。
しかし、2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)はそうした穏健派の存在を否定している。反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団だと指摘しているのだ。アル・カイダ系武装集団の主体はサラフィ主義者やムスリム同胞団であり、オバマ政権が支援している相手はアル・カイダ系武装勢力だと言っていることになる。しかも東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配国が作られる可能性があるとも警告していた。つまり、ダーイッシュの台頭を見通していたのだ。この報告書が作成された当時のDIA局長がマイケル・フリン中将だ。
シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すという計画をアメリカの好戦派は放棄していないようだが、難しい状況ではある。サラフィ主義者の支配国という目論見も実現できそうにない。そこでアメリカなど三国同盟はクルドの国を作ろうとしている。シリア政府の承諾を受けずにシリアへ軍事侵攻したアメリカ軍は14カ所に基地を建設したと伝えられている。このうち12カ所は北部、2カ所は南部。その一部にはイギリス軍、フランス軍、あるいはクルド系の武装勢力も使用している基地がある。
今後の展開次第ではシリア、トルコ、ロシアが対クルド戦争で連携する可能性もあるが、そうなるとクルド、アメリカ、イスラエル、サウジアラビア、イギリス、フランスと軍事衝突することも否定できない。
今年(2018年)1月6日、地中海に面した場所にあるロシア軍が使用しているフメイミム空軍基地とタルトゥースにある海軍施設が13機の無人機(ドローン)に攻撃された。そのうち7機はロシア軍の短距離防空システムのパーンツィリ-S1で撃墜され、残りの6機は電子戦兵器で無力化されている。
13機のドローンは100キロメートルほど離れた場所から飛び立ち、GPSと気圧計を利用して事前にプログラムされた攻撃目標までのコースを自力で飛行している。しかもジャミングされないような仕組みになっていたという。攻撃の際、目標になったフメイミム空軍基地とタルトゥースの海軍施設の中間地点をアメリカの哨戒機P-8A ポセイドンが飛行していたこともロシアは明らかにした。
これまで武装勢力が使ったドローンの航続距離はせいぜい2キロメートルにすぎず、今回の場合は飛行した距離が格段に長い。一見、手作りのように見えるドローンだが、高度の技術が使用され、専門知識を持つものが製作しているとロシア国防省は指摘している。搭載されていた爆弾に使われていた爆薬、ペンタエリトリットの製造元の候補として、ウクライナのショストカにある工場が挙げられている。