「日馬富士暴行問題の衝撃」/刈屋富士雄・nhk
「日馬富士暴行問題の衝撃」(時論公論)
2017年11月16日 (木)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/284395.html
刈屋 富士雄 解説委員
(前略)
三つ目は、日馬富士だった点です。一般にはあまり知られていないかもしれませんが、日馬富士は、自分自身に厳しく、真摯に土俵に向かう姿は力士の鑑といわれ、多くのファンに支持されていました。
私も横綱がまだ幕下の頃から良く知っていますし、何度も一緒にお酒を飲みましたが、私が見るかぎり特に酒癖が悪いという印象はありませんでした。現役力士のかたわら法政大学の大学院に通って勉強したり、社会的な影響力も自覚して、モンゴルの心臓病の子供たちへの医療支援のプロジェクトに参加したり、視覚・聴覚障害者のための雇用施設を運用したりと社会貢献活動に精力的に取り組んで来ました。
しかし、話をしている目の前で失礼な態度をとられたにしても、暴行し怪我を負わせてしまった事実は、許されることではありません。
さて、今回の暴行問題には不可解なことが多すぎます。まず経緯を振り返り疑問点を整理してみます。
10月25日から26日の未明にかけて、巡業先の鳥取市内で暴行問題は起きましたが、その日の昼の26日の巡業では、日馬富士と貴ノ岩が談笑し、日馬富士の謝罪に対し貴ノ岩が「たいしたことありません、大丈夫です。」と答えたと伝えられています。
26日から29日まで貴ノ岩は、巡業に参加したあと、巡業が終了した29日に鳥取県警に被害届を提出。
宿舎のある福岡県田川市の市役所を貴ノ岩が表敬訪問していた
11月2日に鳥取県警から相撲協会に連絡が入り、翌3日に相撲協会が、両力士の師匠である伊勢ヶ浜親方と貴乃花親方に事情を聞いたところ共によく分からないと答え、貴乃花親方にいたっては「転んだと聞いている」との答えだったいうことです。その後の11月5日から9日まで、貴ノ岩が福岡市内の病院に入院。9日に診断書がかかれましたが、10日の日に相撲協会に提出した休場届には診断書をつけず、場所が始まった二日目の13日に診断書が出され、暴行問題が発覚しました。
疑問@は、なぜ3日も後に被害届を出したのか。そして疑問Aは、被害届を出しながら何故貴乃花親方は相撲協会に報告しなかったのか。疑問Bは被害届を出しながら何故貴乃花親方は相撲協会の事情聴取に「分からない、転んだと聞いている」と答えたのか。そして疑問Cは、9日に診断書がありながら、10日の休場届につけなかったのか、そして疑問Dは、何故九州場所が始まってから、診断書を出したのか、もちろん事情がある時は、3日目までに出せば良いと言う慣例はありますが、今回はその事情も不明で分からないことだらけです。
問題を大きくしたい第三者が関与しているのでは、という協会関係者の言葉にも信憑性が出てきます。
そしてその診断書が、こちらです。
病名をよく見ると、上に並んだ3つ、脳震とうと頭部の裂傷、それと右耳の炎症です。頭蓋骨の骨折と髄液の漏れについては、この時点では疑いです。ですから医師の見立ても、全治2週間程度と考えられる。その間に状態が安定すれば復帰が可能と書いてあります。頭蓋骨の骨折や髄液の漏れがあれば、全治2週間ということはありません。その後骨折や髄液の漏れがあったという診断書も出ていません。実際の怪我の状態はどうだったのか、実際に暴行に使われた道具も含めてしっかりと調査する必要があります。少なくても、日馬富士と伊勢ヶ浜親方の認識とは、大きく違う診断書であったことは、二人の対応を見ていても伝わってきます。
さて、今回の暴行問題で、相撲協会の課題が浮かび上がって来ました。
大きく二つの課題を指摘したいと思います。
一つは、公益法人としての自覚の欠如。
二つ目は、インティグリティー(高潔性)の欠落です。
(中略)
失われた信頼を回復するための第一歩は、まず多くの疑問が残る今回の問題をしっかり調査し、責任の所在を明確にし、その上で適正な処分。そして納得できる説明、さらに再発防止に向けての取り組みをしっかり発表して欲しいと思います。
うやむやにすれば、そのうちみんな忘れてしまうというような昔の考えは、もう通じないことは、この十年で身にしみて分かっているはずです。公益法人として近代的な組織に生まれ変わったことを見せるためにも今後の対応は重要です。組織として一つ一つやるべきことをしっかりとやる、それが、満員御礼のファンに答える責任です。
http://www.asyura2.com/14/idletalk41/msg/553.html