最期は「自宅」or「ホーム」問題を今から考えておく!
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171115-00000018-sasahi-life
週刊朝日 2017年11月24日号
高齢者施設に移るか、自宅で介護を受けるか。あなたはどうしますか(写真はイメージ)(c)朝日新聞社
人生の最期をどこで迎えるか。いずれ介護が必要な体となれば、自宅に住み続けるか、高齢者向け施設への移住かの判断を迫られる。そうなってから慌てるのでは遅い。資金、趣味、持病、生活習慣など、自らの暮らしの足元をもう一度見直して考えてみませんか。
「まさか、こんな年をとってから、また引っ越しをするとは思わなかった」
そう語るのは、東京都内のサービス付き高齢者住宅(サ高住)に暮らす女性(70)。
都内の持ち家に住んでいたが、夫の定年後に売却、東北に終のすみかを探して移住した。夫婦で田舎暮らしを始めたが、約2年前に“再住み替え”を迫られた。夫が他界し、女性はひとりぼっちになったからだ。
「東北の大きな家にひとりでいても仕方ない。東京にいる友達との付き合いがまだあったので、元気なうちに戻ろうと思ったのです」と女性は振り返る。
子どもがいなかったので、安否確認と生活相談サービス付きの賃貸住宅、サ高住を選んだ。家賃は年金収入で払える水準。ただ、介護が必要になると、居宅介護支援事業所と契約して介護サービスを使うことになる。いつまでも自立して暮らせるよう、ウォーキングと体操を毎朝欠かさないという。
移住先で暮らし始めたが、予期せぬことで再び住み替えに。こんなケースが後を絶たない。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは、こう指摘する。
「今の高齢者は持ち家が多く、大半の方は自宅で老後を過ごそうと考えます。でも、子どもがいなかったり、離れて暮らしていたりすれば、介護をだれかに頼る時期が訪れる。そのときにどうしたいかで、選択肢が変わってきます」
いくつか気をつけたいポイントがある。
介護付き有料老人ホームを最初から選べば、要介護度が重くなっても住み替えが不要と思いがちだが、入居時の覚悟が必要になる。
「要支援1〜2や要介護1〜2のうちに介護付き有料老人ホームに入ると、周りは要介護度が重い方たちばかりで、違和感を感じるかもしれません。要介護度が重くなった際に介護型の居住スペースに移れる住宅型・介護型併設のホームを選んだり、週末だけ自宅に戻るセカンドハウスのような使い方をしたり。そういう選択肢もあります」(太田さん)
老後の過ごし方は、手持ち資金によっても異なる。15年間で250カ所もの高齢者施設を見学してきたファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんが言う。
「終のすみかを探す際、入居費用が高いところばかりを見ても仕方ない。定年のころに探しに行き、入居時期を80歳ごろと決めていたら、20年後にお金がいくら残っているかを考えるべきです。残っていそうな金額を把握し、それに見合った施設を探しましょう」
在宅と施設でかかるおよその費用を、知っておくとよい。都市部の場合、入居一時金を払わないと月々の費用が高くなってしまうが、地方なら入居金ゼロで有料老人ホームに入居するプランもある。施設やサービス水準は様々なので、よく確かめたい。
5〜6カ所くらいの施設を見学してから決めるのがおすすめ。ただ、持病によっては入居できなかったり、要介護度が重くなれば退去を迫られたりする施設もある。面談で聞いておこう。
入居を考える際の最も難しい判断は「夫婦で移り住む」か「2人の間は自宅で過ごし、どちらかが他界してから移る」か。夫婦で住めば、入居金などが倍になるが、問題はお金だけではない。
「入居する部屋はたいてい自宅より狭いので顔を合わせる時間が長くなり、夫婦げんかが絶えなくなることもあります。また、“老老介護”が始まると逃げ場がありません。どのタイミングで入るかを話し合っておくべきです」(太田さん)
千葉県内の有料老人ホーム(住宅型)で暮らす男性(89)は、妻(81)と一緒に移住。自宅を売り、約6千万円の入居金を払った。施設に入って20年だが、けんかはほぼゼロだ。
男性は「私たちは子どもがいないので、施設か在宅かを元気なうちに決断しました。入居金は割高でしたが、介護が必要になれば、介護サービスを受けられる部屋に移れて安心。20年間一緒に住み続ける秘訣? 部屋にいる時間が長いので趣味を見つけることだね。夫婦別々の」と笑う。
夫婦でカルチャーセンターに通うが別々のコースを受講。3度の食事は施設内の食堂で食べられるが、外食やスーパーで買うなど、日によって決めるという。
施設に入ると、就寝や食事時間を管理されると思いがちだが、自宅に近い感覚で過ごせる施設もある。
「高齢者施設といっても生活の場なので、晩酌が習慣の人は夕食時にお酒を飲めるかどうかが重要なポイントです。我慢を強いられる生活はストレスになりますので、外出の自由度や食事の味、入浴時間の制限など生活習慣と照らしてチェックしましょう」(畠中さん)
自分が譲れない生活習慣を書き出すとよい。いくつもある人は、サ高住だと自由度の高い生活を送れそうだ。資金面で余裕がなければ自宅で当面過ごし、介護が必要な際に在宅介護を受けるしかない。最近は在宅介護サービスも充実しており、協力してくれる家族がいれば、最期まで自宅で過ごすことも可能だ。
「施設では、最期に食べられなくなったら病院に運ばれるのか、部屋でお迎えが来るのを待つのか。施設側に看取りの体制や実績を聞いておくと、入居してから安心できます」(太田さん)
住み替えなどで苦労しないように、終のすみか選びを考えたい。(村田くみ)