トランプ大統領の訪日報道の問題点、ゴルフ場で国策を決める愚かさ
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2017年11月08日 MEDIA KOKUSYO
毎日新聞の報道によると、トランプ大統領と安倍首相のゴルフ外交をどう記録するかをめぐり政界で議論になっているらしい。同社の報道は、「一般論として言えば、記録に残す必要のある外交上のやり取りは残すのが通常だ」とする管官房長官の談話を紹介した上で、次のように問題点を指摘する。
ただ、外務省幹部は「同行した通訳が全部を聞き取れたわけではない」と説明。首脳間の親密な関係と、記録の必要性が相反する可能性が浮き彫りになった
ゴルフ外交で日米の首脳が何を話し合ったのかを正確に記録できないことを問題視しているのだ。
◇正常な感覚の喪失
毎日新聞の見解は、逆説的に言えば、正確に記録できればゴルフ外交は問題ないというものらしい。しかし、筆者は毎日新聞が指摘している問題以前に、ゴルフをしながら国の方向性を決めるという発想そのものが重大な間違いだと思う。ゴルフをしながら、主観的な思索に耽ったり、新しい発想の誕生に期待することは自由である。が、そこに国策の決定、あるいは決定へ向けた方向性の国際的な合意が加わるとなれば話は別だ。国の進路は、国会で議論して決めるのが議会制民主主義の大原則なのである。
国権の最高機関である国会を経ずに、国策を決定するのは独裁国家である。フィリピンのマルコスが、インドネシアのスハルトが、ニカラグアのソモサなどが採用してきた手法である。共謀罪が施行された後、日本にも影のように独裁者の足音が近づいているのである。
国費を使ってゴルフをすることが許されるのか、国会で議論する必要があるだろう。ゴルフ外交をどう記録するかは、2次的な問題である。ゴルフ場を歩き、クラブを振りながら国策を決めること自体がどうかしている。しかも、話し合いの内容を記録に残さないというのだから、議会制民主主義のルールを逸脱している。
◇木を見て森を見ない日本のメディアの報道
トランプ大統領に関する報道は、日本と海外では随分と温度差がある。日本のメディアの基本的な誤りは、朝鮮が「諸悪の根元」であるという大前提を作っていることである。この偏見を前提にして、日米韓がどう対応していくのかという視点でニュースを制作しているのだ。もちろん日刊ゲンダイなど、別の視点で報道をしているメディアもあるが、大半はトランプが「善」で、金正恩が「悪」という紋切り型の構図である。
が、海外ではそうではない。たとえば典型例を示すと朝鮮の友好国・キューバのPrensa Latinaは、6日付けの記事で、「朝鮮の核問題でトランプ米国大統領は、挑発的な発言を繰り返し、ワシントンのいかなる方針も支持するとする日本の支持をとりつけた」と米国に批判的な視点を採用している。
本当にトランプが「善」で、金正恩が「悪」という構図が正しいのか、再考する必要がある。
筆者は、トランプ大統領の方にむしろ問題があると考えている。米国という国家の歴史と性質からして、朝鮮半島の問題は、米国の側から扇動している可能性が極めて高い。事実、米国は日本や韓国で軍事大国化を進めてきた。日本における米軍基地の拡張や改憲の動き、それから日の丸を手にして安倍首相を支援する極右翼の台頭などが、かつて日本軍に侵略された朝鮮の脅威にならないはずがない。
日本の主要メディアは、「木を見て森を見ない」誤りを犯している。歴史も見ていない。朝鮮半島での不安定要因を作っているのは米国の側なのだ。そのことは米国が過去に繰り返してきた海外派兵と暴力の歴史を検証するたけでも十分だろう。今回の朝鮮問題もラテンアメリカ諸国や中東と同じ線上にあるのだ。