1万人の脳を治療してきた医師が明かす スマホが記憶力を低下させるワケ〈dot.〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171013-00000073-sasahi-life
AERA dot. 10/17(火) 7:00配信
電車の中で8人がけの席を見ると、そのうち7人はスマホを眺めています。本を読んでいる人は、一人いればいいほうです。「スマホで本を読んでいるかもしれない」という可能性もないわけではありませんが、もし「知識を得る」ために本を読んでいるのだとしたら、スマホは適切ではないと、
の著者で、「脳の学校」代表、加藤プラチナクリニック院長の加藤俊徳医師はいいます。
自身も「難読症(ディスレクシア)」で、本を読むのが苦手だったという加藤医師が、数十年に渡る研究で知ったスマホ読書の弊害とは? 加藤医師に話を聞きました。
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私は医学博士として、人の脳の成長過程を専門に研究してきました。「fNIRS法」という脳を分析するための手法を確立し、その方法は現在世界700カ国以上の医療機関で使用されています。また、臨床家としてこれまで1万人以上の人々のMRI脳画像を特殊な技術で分析するだけでなく治療してきた経験から、脳を見れば、その人が何が得意で、何が不得意か、どんなくせがあり、どんな生活を送っているかがわかるようになってきました。
例えばアナウンサーの人の脳は、たくさんの文字情報に接しているにもかかわらず、脳の「記憶する場所」や「思考する場所」よりも、「伝達する場所」が鍛えられています。原稿を読んで覚えたり、考えたりするのではなく、「伝えること」に特化しているからです。実際に読んだニュースの内容が頭に残らないという人も多いのです。
このように、脳というのは使い方によって、成長の仕方が変わります。「知識を得やすい脳」、つまり「勉強脳」となっているかどうかは、活字の読み方次第で変わってくるのです。
●勉強するなら、スマホではなく紙の本
最近では電子書籍をスマホなどで読む人も増えているようです。スマホであれば、ちょっとした時間でも読むことができますから、効率も上がるように思えるかもしれません。
しかし、実際にはスマホでの読書は、紙の本よりも効率が悪いのです。何が違うのでしょうか?
スマホを読むときに、私たちはスクロールしながら文字を追い続けます。このとき目は常に画面の文字を追っているため、目も常に動いている状態になります。このように、目がものを追いかけている状態にあると、脳の中の「見るための場所」ばかりが刺激されて、「記憶する場所」や「思考する場所」への刺激がおろそかになってしまうのです。ですから、暗記したり、思考したりするためには、文字が動かない紙の本のほうがいいのです。
●物体として存在することに意味がある
紙の本のよさは他にもあります。それは本という「物体」が存在する、ということです。
脳には主に文字情報を担当する左脳と、主にものの形や非言語情報を担当する右脳分かれます。スマホで文字情報だけを追っていると、その刺激は左脳にしか行きません。しかし「めくる」という動作など、五感を通じて「本」という形を認識することで、紙の本の読書は左脳と右脳を同時に刺激することになります。「脳全体を使って読む」方が、記憶に定着するのは間違いありません。そういった意味でも、紙の本は「物体として存在する」ということに、大きな意味がるのです。
「経験になるかどうか」という文脈でも、大きな違いがあります。「今日は1日ゆっくり読書ができて、最高の1日だった」という経験をしたことのある人は多いでしょう。休暇のときに、木陰や砂浜で本をゆっくり読むなどというのは、最高の贅沢ですよね。しかし、それがスマホだとどうでしょう? ネットニュースなどでいい記事を1本読んで、「いい記事を読んだ」と嬉しくなることはあっても、「今日は1日スマホでゆっくり読書ができて、最高の1日だった」という感想を持てるでしょうか?
スマホの文字情報を追うだけでは、「本を読んだ」という経験にはなりにくいものです。私たちの脳が、物体を伴わないものに関して「経験」として認めてくれないのであれば、本はやはり紙で読んだほうがいいでしょう。なぜなら、「経験」にすることで、脳への定着率がより高まるからです。
大人になると、ものを覚えるのが昔よりも随分と難しくなってきます。その上、勉強にスマホを使っているのであれば、その効率は下がって行くばかりです。私は、自分自身が「難読症(ディスレクシア)」であり、活字を読むこと自体に苦労した経験から、これまで数十年にわたって、脳に知識を入れるためにどんな読み方をしたら良いか、ということを散々試してきました。その際には、脳科学の知識も使いました。そして、その過程でわかったことは、
「本は紙のほうが、内容が頭に残る」
ということです。
せっかく読書をするのですから、それを知識として記憶し、それをもとに思考を深めたいものですよね。そうであれば、本は紙で読むことを強くおすすめします。(構成/黒坂真由子)