新燃岳について、火山噴火予知連が「規模大きな噴火も」との見解。しかし、かなり疑問!
本日10月19日、鹿児島市で火山噴火予知連絡会が臨時の会合を開き、「今回の噴火は火口直下まで上がってきたマグマが関与しているとした上で『今後、多量のマグマが新燃岳の直下に供給されれば規模の大きな噴火が発生する可能性もある』という見解をまとめました」
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/20171019/5050000625.html
ということです。
その判断の根拠として報道されているものは「地殻変動のデータによると、新燃岳北西の地下深くにあるマグマだまりから、新燃岳にマグマが移動したと解釈できることや、マグマに由来する火山ガスの1日あたりの放出量が一時的に1万トンを超えたことなど」です。このことから「マグマが関与した噴火だと考えられる」としているのです。
しかし、10月13日には次のような報道がされていました。
「11日噴火した霧島連山の新燃岳の火山灰を専門家が詳しく分析した結果、新しいマグマからできた物質はほとんど含まれていないことがわかりました。」
「新しいマグマからできた物質はほとんど含まれていなかったほか、火山灰の粒子はごく小さかった」
「地下から伝わったマグマの熱で地下水が熱せられて水蒸気が発生し、火口周辺の火山灰などを吹き上げる『水蒸気噴火』」
http://www3.nhk.or.jp/lnews/kagoshima/20171013/5050000559.html
19日の報道と13日の報道で何が異なるのか、はっきりしません。その原因は、「マグマが関与した噴火だと考えられる」という表現のあいまいさにあります。水蒸気噴火であっても、熱の発生源はマグマであり、その意味でマグマの関与はあるわけです。13日の水蒸気噴火という判断の根拠となった「新しいマグマからできた物質はほとんど含まれていなかったほか、火山灰の粒子はごく小さかった」はとても納得のいくものです。なぜなら、火山灰にマグマの成分が大量に含まれているのがマグマ噴火の定義であるからです。
13日と異なったことは、「新燃岳北西の地下深くにあるマグマだまりから、新燃岳にマグマが移動したと解釈できることや、マグマに由来する火山ガスの1日あたりの放出量が一時的に1万トンを超えたことなど」であるようです。
しかし、だからと言って、「今後、多量のマグマが新燃岳の直下に供給されれば規模の大きな噴火が発生する可能性もある」ということを専門家の方が発表されるのは、かなり違和感があります。
1.「今後、多量のマグマが新燃岳の直下に供給されれば規模の大きな噴火が発生する可能性もある」という文章そのものが「風邪を引けば頭痛がする」という表現と同じで、仮定をして、その仮定が実現すればこうなると言っているだけです。ある意味、全く噴火の兆候がない火山についても、「今後、多量のマグマが火山の直下に供給されれば規模の大きな噴火が発生する可能性もある」と言えてしまうはずです。
2.しかし、普通、「規模の大きな噴火が発生する可能性もある」と言うからには、「今後、多量のマグマが火山の直下に供給され」る可能性がかなりの程度あるという意味でなければおかしいです。そして、そう判断する根拠として報道に挙がっているものは、「新燃岳北西の地下深くにあるマグマだまりから、新燃岳にマグマが移動したと解釈できることや、マグマに由来する火山ガスの1日あたりの放出量が一時的に1万トンを超えたことなど」です。火山噴火予知連絡会のサイト
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/CCPVE/CCPVE08.html
にある最新の資料は平成29年6月20日、第138回火山噴火予知連絡会定例会のものですから、今のところ、報道以外に判断の根拠を知るすべはありません。
3.自分は、新燃岳にしても、桜島にしても、いわゆる大きな噴火になる可能性はこの先数年の期間では有り得ないと考えています。多分、今後、10年以上の期間でも、桜島の大正噴火のように火山灰が1m以上降り積もるような過酷噴火にはならないと考えています。その根拠は、フィリピン海プレートの沈み込みがまだまだ活発化しているようには思えないからです。Hi-net自動処理震源マップの「最新30日間」、「鹿児島県」
http://www.hinet.bosai.go.jp/hypomap/mapout.php?_area=EXP46&_period=30days&rn=44790
を見ると、桜島の南西側から、薩摩半島の南端沖にまで緑色のドットが30個程度分布していることが分かります。このドットの数は、311大地震以降格段に増加しています。その意味で、薩摩半島付近でフィリピン海プレートの沈み込みが以前に比べて格段に活発化しているのは明らかですが、問題は、その程度です。311大地震の前後に、新燃岳のマグマ噴火がありましたが、その当時は、現在の多分半分以下のドットの数しかなかったのです。
4.「平成23年に起きた噴火は、マグマそのものが火口から噴出する『マグマ噴火』」であったわけですが、その前の時期でフィリピン海プレートの沈み込みが活発化した様子はなく、結果として、新燃岳のマグマ噴火の原因は、マグマだまりへ加わる圧力の増加であると判断できます。
5.大規模な火山噴火が起こるには条件があるはずです。大量なマグマがマグマだまりにあることとマグマだまりに加わる圧力が急激に大きくなること。そして、火道が開くことです。
6.通常、海のプレートの沈み込み速度は一定です。何らかの原因で沈み込みが止まることがありますが、遅くなることはあっても通常よりも速くなることは基本的にありません。これは、そもそも、海嶺部分からのプレート発生の速度に限界があるからです。つまり、沈み込んだ海のプレートからのマグマの供給量が急激に増加することは有り得ないのです。
7.よって、巨大な噴火の直接的なきっかけとなるのは、マグマの供給ではなく、マグマだまりに加わる圧力が大きくなることだと分かります。
8.巨大な噴火でなくとも、マグマだまりに加わる圧力がそれなりに大きくなれば、噴気活動が活発化したり、小規模な噴火が起こることは容易に想像が出来ます。
9.現在の桜島や新燃岳の噴火活動活発化は7月11日の鹿児島湾での地震M5以降のものです。この地震は横ずれ層型であり、東西方向に圧縮力が働いた地震でした。
http://www.fnet.bosai.go.jp/event/tdmt.php?_id=20170711025500&LANG=ja
このことは関東方面からの西向き圧力の存在を示唆します。
10.http://www.jma-net.go.jp/kagoshima/vol/data/skr_erp_num.html にある月別噴火回数を見ると、1月と2月は噴火がなく、3月は2回、4月は21回、5月は49回となっています。つまり、鹿児島湾での地震を含めて、関東地方からの西向き圧力増加の結果発生しているのが桜島の噴火であり、新燃岳の噴火であるのです。ちなみに、8月は98回、9月は170回の噴火が起こったと記録されています。関東地方の陸域地震は、8月が32件、9月が20件です。しかも、8月は関東平野の内陸部のほぼ中央でまとまって震源深さが50キロ程度以上の地震が起こっていたのです。
http://www.tenki.jp/bousai/earthquake/seismicity_map/entries_by_month?year=2017&month=8&area_type=japan_east
このことは、8月、関東平野の下へ太平洋プレートがかなり深くまで沈み込みをしていて、その結果が震源深さがやや深い地震が発生し、その時の西向き圧力が桜島噴火を活発化させたと解釈が出来るはずです。
11.新燃岳は桜島よりも北側にあります。桜島は鹿児島湾という地殻の厚さが薄い部分に立地していて、それだけ西向き圧力の変動に敏感に反応しやすい環境にあります。この違いが、新燃岳の噴火を関東のどちらかと言えば北部よりでの地震活動に結びつけ、桜島の噴火を関東のどちらかと言えば南部での地震活動と結びつけます。
12.2015年の桜島の噴火回数を見ると、3月から5月までは200回以上が続き、6月は約100回と急減します。神奈川県の温泉地学研究所の2016年5月から7月の地震月報
http://www.onken.odawara.kanagawa.jp/files/geppou/201505-07.pdf
の表1 県内で有感となった地震 (気象庁資料より) を見ると、この期間に非常に活発に神奈川県西部(箱根)の地震が起こっていたことが分かります。そして、この時期、5月30日に小笠原諸島西方沖M8が発生していました。このM8地震を境に、その前に桜島の噴火が活発化し、その後、箱根の地震が多発したのです。
13.このことは、大きな地震が起こるには大きな圧力の蓄積が必要で、その蓄積は遠方から始まることを暗示します。伊豆・小笠原海溝からの沈み込みでM8地震が起こったわけですが、その前にはるか遠方である桜島で地殻の圧力上昇が始まっていたのです。はるか遠方と言っても太平洋プレートの沈み込み方向遠方です。
14.現在の新燃岳や桜島の噴火の活発化は、ある意味、2015年5月のM8地震と同じく、関東での大地震の前兆と捉えるべきではないのでしょうか。
15.最新の火山噴火予知連絡会の霧島山についての資料がこの6月のものです。
http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/kaisetsu/CCPVE/shiryo/138/138_02.pdf
これを見ると、様々なデータが網羅され、精密な観測が行われていることが分かります。しかし、同時に、なぜか、広い範囲を見た、地殻の変動についての検討が全くされていないことに気が付きます。311大地震のような超巨大な地震が起これば、日本列島全体の地震の起こり方に影響を与えるとだれでも考えると思いますが、地震予知連の地震予想には、いまのところ、そのことが反映されていません。火山噴火予知連絡会も同じ様子であり、ひたすら個別の火山に注目して、将来の火山活動を予測しているのではないでしょうか。
16.地震についても、火山についても、精密な観測は当然必要です。個々の地震や噴火の様相をより正確に捉えることが必要であることに違いはありません。しかし、だからと言って、個々の活動だけに注目して、広い地殻変動の影響を無視してしまってるように見える現状は違和感を感じざるを得ません。地震も火山も、専門家の方々自身がそういった違和感を最も感じているはずです。非常に大きな誘導がされているはずであり、そういった誘導から脱することをしないと、このままでは大変なことになってしまうと思います。つまり、何ら警告が発せられることなく、対策をたてる前に、首都圏が大地震や大噴火に見舞われ、日本全体が一気に壊滅するという事態です。
2017年10月19日22時45分 武田信弘
http://www.asyura2.com/17/jisin22/msg/249.html