イラク軍 クルド側実効支配の重要施設を次々に制圧〜再び混乱 懸念も/nhk
10月16日 19時02分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171016/k10011179461000.html?utm_int=news-international_contents_list-items_001
イラクからの独立を求める北部のクルド自治政府とイラク政府との対立が深まる中、イラク軍は、クルド側が実効支配している油田地帯に進軍し、油田や軍事基地などを次々に制圧しています。イラクのアバディ首相は、市民を傷つける目的はないと強調していますが、今後、大規模な武力衝突に発展しないか懸念されています。
イラク軍は16日、クルド自治政府が実効支配を続けているキルクークに進軍し、これまでに油田の一つや発電所、そして軍事基地などを制圧したと発表しました。
これに対して、クルド自治政府は、イラク軍の戦車などから攻撃を受けたため、応戦して、少なくとも5台のイラク軍の車両を破壊したと主張しています。
イラクのアバディ首相は16日午後(日本時間16日夕方)声明を出し、「国家の一体性を守ることは私の義務だ」と述べ、イラク軍に進軍を命じたことは正当な行為だとしたうえで、市民を傷つける目的はないと強調しました。
イラク有数の油田地帯であるキルクークは、クルド自治政府とイラク政府が管轄権を争ってきた地域で、過激派組織IS=イスラミックステートが勢力を広げた3年前、撤退したイラク軍に代わってクルド側の部隊が展開し、そのまま実効支配を続けています。
クルド側は交戦を避けるために駐留している地域から徐々に部隊を撤退させているもようですが、今後、大規模な武力衝突に発展しないか懸念されています。
クルド自治政府は、先月行った住民投票で、独立を求める住民の意思が示されたとしていますが、イラク政府は憲法違反だとして認めず、双方の対立が深まっていました。
キルクークとは
イラク北部にあるキルクークには、イラク有数の油田があり、その支配をめぐって歴史的にもさまざまな勢力がしのぎを削ってきました。
イラクでは少数派のクルド人やトルコ系のトルクメン人、それにアラブ人など多民族が暮らす地域ですが、1980年代に当時のフセイン政権によってアラブ人を移住させてクルド人らを迫害するアラブ化政策が進められました。
2003年にフセイン政権が崩壊したあとは、キルクークの管轄権をめぐって、新しく発足したイラクの中央政府とクルド自治政府の間で争いとなりました。
イラクの新しい憲法では、2007年末までに住民投票を行って帰属先を決めることになりましたが、その実施方法などをめぐっても民族間で対立し、これまでに行われていません。
その後は、中央政府が統治してきましたが、3年前、過激派組織IS=イスラミックステートがイラク北部で急激に支配地域を広げ、キルクークに迫る勢いを見せると、イラクの軍や治安部隊は撤退。代わってISからキルクークを守ったのがクルド人の部隊で、クルド自治政府はそれ以来、キルクークを支配下に置いています。
クルド自治政府は、先月、イラクからの独立の賛否を問う住民投票をキルクークでも行い、クルドの一地域であることを内外に示す狙いがあったと見られています。
しかし、ばく大な石油権益が絡むうえ、さまざまな民族が暮らす地域だけに、イラクで多数派のアラブ人などからは、イラクの分裂につながる住民投票はもちろん反対だが、キルクークを取り込む動きはなおさら認められないと住民投票への反発がより強まる要因になっていました。
再び混乱 懸念も
イラク政府とクルド自治政府は、イラクとシリアの広大な地域を一時支配した過激派組織IS=イスラミックステートという共通の敵に対する作戦では、協力を続けてきました。
関係が悪化したのは、ことし6月、クルド自治政府が独立の賛否を問う住民投票の実施を発表してからです。
このころ、ISがイラク最大の拠点としていた、北部の都市モスルの奪還に向けた作戦が大詰めとなり、イラク政府とクルド自治政府、双方にとって最大の脅威だったISの弱体化が明らかになりつつありました。
イラクやトルコ、イランなどにまたがって暮らすクルド人にとって国家を持つことは長年の悲願で、クルド自治政府としては、ISとの戦いに一定のめどがついたことで、独立に向けた一歩として、住民投票の実施に踏み切ったと見られます。
しかし、イラク政府は憲法違反だとして強く反対しているほか、自国のクルド人への影響を警戒するトルコやイランもクルド自治政府に圧力を強めています。
今回、イラク軍がキルクークに進軍したことで、イラク軍とクルド側の部隊の間で大規模な衝突が起こる可能性もあり、地域が再び混乱に陥るのではないかという懸念が高まっています。
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