シンデレラ城
ディズニーランド、異常混雑通り過ぎ「空き空き状態」…客に放水でTシャツ買わせ戦略
http://biz-journal.jp/2017/08/post_20151.html
2017.08.11 文=椎名民生 Business Journal
「一時期の混雑ぶりはなく、割とスムーズ」
「『プーさんのハニーハント』など、一部の人気アトラクション以外は待ち時間も30分程度で乗れる」
東京ディズニーランド(TDL)に行ったゲスト(客)から口々に寄せられるのは、予想よりも空いているという現状だ。そこで、実際にTDLに行ってみた。
筆者が最後にTDLに行ったのは、確か3年前の夏だ。東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドの非正規労働者たちが結成した労働組合、「オリエンタルランド・ユニオンが、「TDRの労働環境がブラックすぎる」と問題提起したときに実態を確かめに訪れた。
その時は、最大の席数を誇るレストラン「トゥモローランド・テラス」では、ランチ時ともなればレジ前には長い行列ができ、さらに商品を買っても、満席で食べる場所を確保することも困難だった。立ち食いする若者や、通路にレジャーシートを広げて食べるファミリー、我慢できずに泣き出す子どもも多く、険悪な雰囲気だった。
ユニオンの主張は、「オリエンタルランドは利益至上主義で、ゲストを詰め込みすぎなうえに、キャスト(スタッフ)が不足しており、混乱に拍車をかけているのではないか」というものだった。
7月中旬の平日に訪れてみると、TDLは明らかにゲストが減っていた。お昼過ぎの時点で、「スペース・マウンテン」の待ち時間は40分、「ビッグサンダー・マウンテン」は50分、「スプラッシュ・マウンテン」は80分だ。それぞれのファストパスもまだ発券されている。
スプラッシュ・マウンテン
象徴的なのが、「トゥモローランド・テラス」だ。12時を過ぎて、「ディズニー夏祭り 燦水(さんすい)!サマービート」のパレードが終わっても、レジ前に並ぶのは数列で数分待てば注文できる状況だ。筆者も、あっという間に「チーズ&ビーフパティサンドセット」(980円)を購入できた。さらに、商品を買って、食べる席を確保するのも容易だった。テーブルは屋外(ひさしあり)であれば難なく確保できる。オフィス街よりもスムーズにランチにありつけるほどだ。かつての“ランチ難民”がいなくなっており、もちろん床に座り込んでいる家族連れもいない。
トゥモローランド・テラス
近くにいた、年間パスポートを所持しているという20代の女性ゲストに話を聞くと、「週末でも空いていましたよ。入場料金の値上げの影響かもしれないですね。ただ、お盆になったら混むかもしれませんね」と冷静だ。
ここ数年、TDRは一般的な入場券である「1デーパスポート」の料金を段階的に引き上げ、昨年4月から7400円になった。この値上げはリピーターを減少させるのではないかと懸念されていたが、それが的中した格好だ。
また、久しぶりに来場したという別の女性ゲストは「トゥモローランドの再開発で、もっと利用できないアトラクションが多いかと思っていたので、空いていて効率よく回ることができている」と語る。確かに、TDLは開業後最大規模となる750億円をかけたエリア再開発を始めており、トゥモローランドなどの一部施設は利用できないが、人気アトラクションは稼働しており、大きな影響は受けないと見られていた。
■日本人客が減り、外国人客だらけに
さらに、注目すべきは、TDLに日本人ゲストが少ないことだ。筆者の印象では、4割から5割が外国人だ。
TDR関係者も、TDLのゲストが減っていると認める。
「連日の猛暑もあって、目に見えてTDLのゲストは減っていますね。中国人をはじめとするアジア人のゲストは変わらないのですが、日本人ゲストが減っている印象です。ここ数年、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の人気の高まりもあってか、関西圏からの来場者が減っているうえに、TDLは大リニューアル工事中という印象が強く、十分に楽しめないのではないかと敬遠されがちです。やはり、夏は東京ディズニーシー(TDS)ということなのかもしれません」
実際に、TDSに入ると、こちらは日本人ゲストが多い。「タワー・オブ・テラー」の待ち時間は30分、「ニモ&フレンズ・シーライダー」は70分、「トイ・ストーリー・マニア!」は110分だ。
なかでも、メディテレーニアンハーバーで初開催されている「パイレーツ・オブ・カリビアン」のスペシャルイベント「ディズニー・パイレーツ・サマー パイレーツ・サマーバトル“ゲット・ウェット”」(1日3回)は「素晴らしい」の一言だ。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』の主人公、キャプテン・ジャック・スパロウと海賊たちが水を浴びせ合い、エリア全体がシャワーに包まれるという、真夏にうってつけのイベントだ。打ち水効果も期待できるうえに、ずぶぬれになったゲストたちが次々と替えのTシャツ(2300円〜)を買いに走ることが期待でき、1人当たり客単価も大きく上昇するというわけだ。
このビジネスモデルは、USJの「ワンピース・プレミアショー」などで数年前に見た記憶もあるが、ゲストを放水でずぶぬれにしたうえに、グッズの売り上げも伸びるのだから、その意味でも“素晴らしい”イベントなのだ。これから夏の定番になっていくだろう。
なお、夏の暑さのためかカレーが大人気で、カレーのフードコート「カスバ・フードコート」が激しい行列となっているので注意されたい。カレー味のポップコーンの行列もかなり長い。
結論としては、効率よく回りたいならTDL、夏の魅力を味わいたいならTDSといったところだろうか。
(文=椎名民生)