旧盆に「マンション霊園」の固定資産税を考えた
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2017/08/20/post-1678.html
サンデー毎日 2017年8月20日号
牧太郎の青い空白い雲 632
ビルの中に、数千から1万の"墓"を収容する「マンション霊園」が人気!と初めて知った。新緑の浅草三社祭の頃、例の元官僚の友人が"祭り"をそっちのけで「納骨堂ビル」を探していた。
「東京に菩提寺(ぼだいじ)がないから......。墓を作らなければ、と思っているんだけど都立霊園でも200万円ぐらいする。しかも、抽選で当たらないと。オレ、墓なし難民なんだ」
何だ、その「納骨堂ビル」というのは?
聞いてみると、そのシステムは......。ビルに入り墓参り。所定の場所でICカードをかざすと別の場所に保管された納骨箱がベルトコンベヤーで参拝スペースに自動搬送される。参拝が終わると扉が閉まる。
東京都心にこんな特殊なビルが雨後のタケノコのように乱立する時代が来るのか?
「忙しいあなたも仕事帰りにご先祖さまを供養」「暑さ寒さに左右されず、快適なお参り」というのが"売り"だそうだ。 永代使用墓なるものが、1基100万円ぐらいが相場だ(安いところでは10万円)。1基で遺骨18体まで納められるのが普通らしい。
たしかに「お墓」で悩んでいる人は増えている。田舎のお墓をたたんだケース、配偶者に先立たれたケース、そして生前墓として自分の墓を購入するケース。「お墓の面倒を見る人がいなくなっても誰にも迷惑をかけたくない」と思い、購入する。
引っ越す際も、墓石がないので解約しやすい、とその友人に教えられた。
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前述の「マンション霊園」のような"永代供養ビジネス"は儲(もう)かる。多くが「宗教不問」だから、宗教・宗派に関係なく、誰でも購入できるのだ。お寺も、建設会社も、コンサル会社も、広告を載せるメディアも......みんな儲かる。
ところが、その「宗教不問」が問題になったことがある。地上5階建てで約3700基を収容できる、ある宗教法人の「マンション霊園」(東京・赤坂)に対して、「固定資産税などを払え!」と主張した東京都と訴訟になったのだ。
通常、宗教法人の場合、宗教行為にかかわる事業の法人税、施設の固定資産税などは非課税。つまり、税金を払わない。坊主丸儲け?だ。マンション霊園側は、「都が納骨堂への固定資産税の課税を求めるのは違法」として争ったが、都側は「寺務所部分などを除き、宗旨、宗派を問わず受け入れているから固定資産税と都市計画税の対象になる」などと主張。東京地裁は「宗教団体の主目的を実現するためには使われていない」「課税は適法」などと都側の主張を認める判決(昨年5月)を行った。
「どんな信仰の人でも墓が買える」となれば、もはや宗教ではない――という理屈なのか。販売業務を民間企業に委託しているのだから、宗教ではなくビジネスだ!と見るのは当然かもしれない。
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お盆の墓参りに行くたびに、「人間、いずれは死ぬ。準備しなければ」なんて思ったりする。家代々の墓に入るべきか? 散骨にしてもらって海に流してもらおうか?などと考えたりもする。納骨堂ビルもそうした選択肢の一つなのかもしれないが、固定資産税が掛かるとなると、お値段が跳ね上がるのではあるまいか?と心配する(笑)。
まあ、ジタバタすることもあるまい。
阿弥陀(あみだ)さまは金持ちも貧乏人も差別しない。 悪人も善人も差別しない。墓があろうとなかろうと......。あの世に行けば、すべて平等なんだから......。
そうそう、今号は「お盆の合併号」。不得意の「宗教もの」を書いてしまったが、いつものように"政治家の悪口"を書かなかった分、何やら「安らかな気分」である。