突然大金を手にしたときに、変わらない自信はありますか? (C) PIXTA
宝くじで3億円当選 強運をつかんだ派遣社員のその後 宝くじは、人生を狂わせる恐れのある割に合わない運試し
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2017年8月4日 日経ウーマンオンライン(日経ウーマン)
人生は選択の連続です。たった一つの選択が、その後の人生を大きく左右することも。私たちがつい魅力的に感じてしまう「3つの選択」について、お金のプロであるセゾン投信社長の中野晴啓さんにインタビューを敢行しました。 「専業主婦」に続いて、第2回の今回は「宝くじ」についてお聞きしました。聞き手は、働く女性のマネー事情に詳しいFPの高山一恵さんです。
当選でお金、友人、仕事、すべてを失う危険性も |
高山さん(以下、敬称略):今回は、「宝くじ」についてお聞きしたいと思います。宝くじで一獲千金を夢みている人は少なくないと思いますが、中野さんは、宝くじを買ったことはありますか?
中野さん(以下、敬称略):僕は、一度も宝くじを買ったことはありません。高額当選すると、不幸のもとになるというのが僕の持論です。
高山:実は以前、宝くじで3億円当たったというお客様が相談に来ました。その方は30代の派遣社員の女性だったのですが、それまで月収20万円で堅実に暮らしていたのに、3億円当たってから、仕事もさぼりがちになったり、ブランドものを買いまくったり、高級マンションを買ったりして、生活ががらりと変わってしまいました。
中野:想像がつきます。大金を持つと、ほとんどの人が彼女のように変わってしまうのではないでしょうか。その方は、その後どうなりましたか?
高山:3億円が当たったことで、周囲に高飛車な態度を取るようになって、彼女から友人も離れていき、家族からも孤立してしまったようです。仕事も辞めてしまって、買い物三昧でお金も使い果たしてしまったようで……。最近は、彼女と連絡が取れなくなってしまいました……。
中野:宝くじが当たったときに、お金の使い方が絶対に変わらないという自信があるなら買ってもいいと思いますけど、多くの人が無理でしょうね。
よいことがあれば、それだけ悪いことがあるのが世の法則! |
高山:もし、中野さんが宝くじで3億円当たったらどうしますか?
中野:僕は全額寄付しますよ。自分が変わってしまうのは嫌ですからね。世の中は「中立」で成り立っていると思っているんですよ。良いことがあれば、それだけ悪いことがあって、それで人生バランスを取るんだと思うんです。3億円も当たったら、その分、ものすごく大きな悪いことが起きると感じてしまうのです。
高山:なるほど。それなら、むしろ当たらない方がいいですね。
中野:先ほどの、高山さんのお客さんがいい例じゃないですか。人生は帳尻が合うようにできていると思うので、少しよいことがあって、少し悪いことがあってバランスを取るほうが生きやすいですよ。
宝くじは一番割にあわないギャンブル |
高山:当たった時の心配はさておき、そもそも宝くじって当たらないですよね……?
中野:そこですよ(笑)。皆さん、ギャンブルの「控除率」ってわかりますか? 控除率というのは、 宝くじや競馬、パチンコなどの主催者(胴元)の取り分のことです。宝くじの控除率は55%もあるって知っていましたか?
高山:55%もですか! 最初から主催者の都道府県や政令指定都市に半分以上、持っていかれてるということですね。
中野:はい。この控除率は、競馬だと25%くらい、パチンコは10%くらいですよ。ギャンブルを推奨するわけではありませんが、控除率だけみれば、宝くじよりも、競馬やパチンコをやるほうがまだいいですよ。それに、競馬やパチンコは分析をしたり、経験を積んだりすることで勝てる確率が上がっていきますが、宝くじは、基本的に攻略法はありません。当たりやすいといわれている売り場で買おうが、高額当選する確率はほぼゼロです。
高山:そもそも負けるのが分かっていて買うのは、人間の射幸心ですね。
中野:射幸心で宝くじを買えば買うほど、お金を失うだけですからね。
損すると分かっていても手を出してしまう気持ちと向き合うには… (C) PIXTA
宝くじは貧者の税金 |
高山:中野さんのお話を聞けば聞くほど、宝くじって当たっても当たらなくても得することはないですね。
中野:皆さんが、お金を増やしたいと考えるとき、最初から絶対にもうからないと分かっている商品に投資しますか? 全員が拒絶しますよね。宝くじを買うということは、こういうことなんですよ。そして、最初から主催者に取り分を半分以上持っていかれている。
高山:手数料の高い商品を買うのと同じですね。
中野:その通りです。そして、さっきお話ししたように、宝くじの主催者は、都道府県や政令指定都市です。宝くじの収益金は、主催者である都道府県や政令指定都市の収入になります。この収入は公共事業などに使われているようですが、つまり、これらの自治体にとっては、宝くじの収益金は、税金が入るのと同じなのです。
高山:だから、宝くじは「貧者の税金」と呼ばれるんですね。
中野:合理性を理解している本当のお金持ちたちは、宝くじを買いませんからね。皆さんも割に合わない運試しはすぐにやめて、もっと有効にお金を使うべきですね。
文/高山一恵 写真/PIXTA
プロフィール
中野晴啓 セゾン投信社長
中野晴啓(なかの・はるひろ)さん
1987年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ運用責任者として資金運用等を手がける。2006年セゾン投信を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事、一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを開催。著書に「個人型確定拠出年金iDeCoで選ぶべきこの7本!」(ビジネス社)、「お金のウソ」(ダイヤモンド社)など多数
高山一恵 Money&You取締役/ファイナンシャルプランナー
高山一恵(たかやま・かずえ)さん
2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性と女性FPのマッチングメディア「FP Cafe」を運営。全国での講演活動、執筆・相談業務を通じて、女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書に「やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方」(きんざい)、「一番わかる 確定拠出年金の基本のき」 (スタンダーズ)」など多数