米トランプ政権の混乱と市場
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52980473.html
2017年08月01日 在野のアナリスト
先週末の北朝鮮のICBM発射に関して、安倍首相がトランプ米大統領と電話会談を行い「さらなる行動をとっていかなければならないとの認識で完全に一致」と述べました。誤解してはいけないのは、これは『何かをする』で一致しただけで『何をする』で一致したわけではない、ということです。「完全に一致」などというおかしな文言を、最近の安倍氏は北朝鮮問題に関して日米の結束を強調するときに用いますが、ほとんど意味のない言葉です。
そんな米トランプ政権が迷走しています。スカラムチ広報部長が、就任から10日で辞任ですが、スカラムチ氏の就任に反対したスパイサー報道官は辞任しており、プリーバス首相補佐官も更迭された。そしてプリーバス氏の後任としてケリー氏が就任、そのケリー氏がスカラムチ氏の解任を要請する、というめまぐるしい展開です。
こうした混乱はオバマケア代替法案でさえ成立できなかった点にも表れます。法人税を35%から15%にする、との公約も成立は風前の灯火で、共和党内では25%にする案も出ていますが、財源なき減税になれば、財政規律の緩みを嫌気される可能性があります。そもそも、現在の世界経済の好調の一端は、トランプ減税に対する期待もあって、それがすすまないと米経済も一気に弱含む公算が高い。これは個人も同じで、減税を当てこんで納税額を低く抑えたりしており、それが個人消費の堅調にもあらわれており、減税の行方と今後の米国経済は、かなり密接に影響し合うといえるほど、重要なものです。それが、政権の迷走で今やどうなるか分からない。日本では消費を手控えそうなところですが、米国ではそうでないからこそ今は好調。そんな危うさを感じさせる状況です。
最近の株価はETF投資が活発で、逆にオプションと組み合わせたアクティブな動きが激減しています。為替との連動も薄れ、ETFに資金が流入するから上がる、というだけの相場となっている。米国ではハイテクと、ディフェンシブ株とが相互に上げ下げをくり返すなど、極めておかしな相場になっている。政治の混乱が影響しないのは、ETFなどに資金が流れ込み、個別をみることが少なくなったから、とも言えそうです。
日本の株も、ほとんど値動きがでず、水準感を大きく変えることがない。これも投資信託などが大きく幅を利かせ、個別株の扱いが減ったことも影響するのでしょう。残念ながら今の市場は完全に機能が壊れており、不測の事態には脆い状態になっている、ということは間違いないようです。しかしトランプラリーの実相が減税に多くの期待があってのことなら、今後の米議会による税制改革には要注意なのでしょう。日米の株価の動きが「完全に一致」することがないはずなのに、今の世界はとにかく高値という状況のみで一致している。政治の混乱が経済へどう波及するか、も日米で「完全に一致」することはない。日米とも政治が脆弱となり、経済政策の実現性にも疑問符がつく中、市場だけはこれまでずっと無視してきた。いつ織りこむのか? 織りこむ前に政治がもっと混乱するのか? 政治の混乱と経済の混乱が「完全に一致」したときは、要注意となるのでしょうね。