電力会社が日本の未来を破壊しているのでは?!
1997年の東電OL殺人事件は不思議なことばかりでした。そして、そういった不合理なことが幾つもあったことに対して、東電社内から声が上がった形跡はありません。同じく、2011年福島第一原発事故についても、不合理な点が幾つもありますが、そのことについて、東電社内からも、他の原発を運営している電力会社からも事故経過が不自然だという指摘が上がっている形跡はないのです。もっとも不可解なのは、3月11日の夜には現場に電源車が何台も到着していたのに、プラグ形状が合わないからと言って一台も使われなかったという話です。4号機の爆発映像が、1号機や3号機の爆発よりも後であるのに一切公開されていないことは幾つかの事情があり、原発内部の監視カメラ映像が同じく公開されていないのと同じことで公開されていないのだと理解していますが、電源車のプラグの件は幾らなんでも有り得ないと思います。こんなことがまかり通ってしまうようでは、どんな安全対策をしても、回路のスイッチ部分にチリが挟まったとか、係りの当直員がスイッチを入れるのを度忘れしたとか、いくらでも理屈をつけて事故回避が出来なかったことの理由づけが出来てしまうでしょう。こういったことについて、なんの議論もされないのでは、日本に原発を運営する資格があるとはとても思えません。それどころか、電力会社関係者が原発事故を起こしていると考えざるを得ない状況ではないかとさえ思えてしまうのです。繰り返しますが、電源車がプラグが合わないから使えなかったという言い訳はそれほど不合理です。そもそも、現場には電気技術者が大勢いたわけであり、当然それなりの工具もあったでしょう。プラグが合わなければコードをそのまま直結すればいいだけの話です。電源車は多くはディーゼル発電機を積んだ車であり、ディーゼル発電機を動かさなければコードに電気は来ていないので、コードをつなげることはごく簡単に出来ることです。
同じように不可解なのが地熱開発をめぐる状況です。日本は地熱資源に恵まれています。国単位で見た地熱資源量一位はアメリカですが、面積単位の地熱資源量で比べれば、インドネシアやフィリピンと同じく日本はトップに位置します。アメリカは国土面積の中で火山地域が占める面積が多くはありません。そのため、面積単位で見ると、アメリカの地熱資源量はそんなに多くはないのです。しかし、そんなアメリカで、地熱発電総量に占めるバイナリー発電量は3割を超えています。昔から小規模のバイナリー発電をやってきたのがアメリカであるのです。アメリカのマイクロバイナリーシステムのリーディングカンパニーがオーマット社
http://www.ormat.com/
です。以前は世界シェアの90%程度を握っていたとされていました。現在は50%程度にまで下がっている様子です。ヨーロッパでは、1980年設立のターボデン社というイタリアの会社がやはり小型バイナリー発電の機器開発と販売をやってきました。この会社の親会社であるプラット・アンド・ホイットニー・パワーシステムズは2013年に三菱重工によって買収され、結果的にそれ以来、ターボデン社は三菱重工のグループ会社
http://www.mhi.co.jp/news/story/1305205363.html
となっています。
これらの事実から分かることは、2011年の福島第一原発事故以前、日本に於いてマイクロバイナリーシステムは全くと言っていいほど取り入れられてこなかったということです。実際、九州電力はバイナリー発電の実証実験を鹿児島県にある山川発電所で2013年に開始
http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1303/04/news023.html
し、2016年に実際の地熱バイナリー発電所の建設を山川発電所内で開始
http://www.kyuden.co.jp/press_h160802b-1.html
しています。 この地熱バイナリー発電所の出力は4,990kWとされています。運転開始予定は2018年です。
こうやって見ると、バイナリー発電の開発が進みつつある様に見えるのですが、ある意味、お茶を濁しているだけなのです。その根拠は次の通りです。
1.日本に比べて温泉の普及がずっと少ないアメリカでさえ、2015年現在で、地熱発電の5分の1がバイナリー発電
http://geo-energy.org/reports/2016/2016%20Annual%20US%20Global%20Geothermal%20Power%20Production.pdf ”Figure 9: Operating Capacity by Technology Type”
であるのに、日本の現状は地熱発電総量の数パーセントしかないこと。アメリカは「 世界最大の設備力を持つ米国は,バイナリー方式の地熱発電の開発も積極的で,多くの商用プラントが稼動している.(表 7-11)『2005 年エネルギー政策法』によって,地熱発電が米国政府の再生可能エネルギー生産税控除を受けられるようになったため,地熱資源で発電される電力のコストが化石燃料による電力コストと等しくなるなど,経済情勢が追い風となり,地熱産業は急速に活性化している.」
http://www.nedo.go.jp/content/100544822.pdf
ということであり、表 7-11には2010年までに運用開始した10MW程度から50MW程度のバイナリー発電所が15か所以上記されています。1MWとは1000キロワットですから、九州電力が現在やっと作りつつある規模のバイナリー発電所がアメリカでは10か所程度で既に運転されていたのです。
2.環境省は温泉法に関するガイドラインなどで地熱資源や地熱開発に関する情報公開をするべきであると述べていますが、同時に自治事務であるので実際の運用は地方自治体に任せるとして、自治体に対して情報公開をするべきだという指導も勧告もしないのです。そのため、全国的に県や市町村レベルで温泉井戸の温度や湧出量、深さのデータ公開をしているところは皆無である様子です。そして、このことが、温泉業界の地熱開発反対を招き入れています。このことの背景には電力会社による原発推進があるのではないでしょうか。
3.本来であれば、バイナリー発電について、地方自治体が域内の既存井戸について湧出量、源泉温度、深さなどのデータを広く一般に公開し、地域ごとにどの程度の開発余地があるかを学識経験者や事業者、温泉関係者などを入れた委員会で公開の場で討論させた上で決定し、開発事業者を公募する程度のことをやるべきなのです。日本はマイクロバイナリーであればアメリカと比較して圧倒的に有望地が多くあり、また環境アセスなどの準備期間も数万キロワット級のフラッシュ発電と比べたら必要がない場合が多く、短期間で相当な量の発電が可能になるのです。首都圏で大地震が起こってしまえば、その影響は311大地震の5倍程度には最低でもなり、日本経済は一気に行き詰るでしょう。そういった状態で小さなものであっても数千万円規模の投資が必要な地熱開発は開発が出来なくなってしまう可能性が強いのです。九州や東北、北海道であれば、既存の温泉井戸を増掘りするなどして100MW程度であればそれぞれの地域で1年で発電にまで行けるはずです。多少初期のコストが高くても、バイナリー発電はほぼ永久的に発電が出来ますから、年月が経てば経つほど利益が出るようになります。
4.フラッシュ発電について、ある程度の規模で開発がされようとしています。しかし、どれも遅いのです。多分、首都圏での大地震はかなり慎重に予測しても数年のうちには発生します。しかも、一度首都圏で起こると、後続して、短期間のうちに何度も首都圏から関西圏で内陸のM7以上地震が発生します。フラッシュ発電は数十億円規模で費用がかかり、場合によっては数百億円規模から1千億円規模にさえなります。都市圏での大規模災害が発生すれば、こういった規模の投資は一切できなくなってしまう可能性が強いのです。
5.東京圏に地方の電力会社が進出するという話があります。とんでもありません。首都圏で火力発電所を建設しても、今後、震災で電力需要は急速になくなるはずであり、それどころか、建設した火力発電所自体が被災して損害だけが残る可能性も高いのです。311大地震で日本海溝の中央部が大きく破壊された結果、その南北の両隣で次の大地震発生が確実であることが全く理解されていないのです。
6.相当程度に首都圏での大地震切迫が明らかであるのですから、まずはともかく輸入に頼る品目の国産化が必要です。化石燃料は100%輸入と言ってよく、その意味でも地熱開発は急ぐ必要があります。また食料の自給率も低いため、冬に積雪する地域での地熱開発は食糧増産の効果もあります。
7.首都圏は火山地帯ではありません。しかし、それでも箱根や北関東、または伊豆諸島など火山地帯が近隣にあります。更に、5キロ程度まで井戸を掘ることで関東地方でも多くの地域でバイナリー発電が可能であるはずです。しかし、そういった可能性を検証しようという動きはありません。ドイツやイギリスなど火山地帯ではない国々では、既に4キロから5キロ程度の地熱井戸を掘り、実際にバイナリー発電をしていますが、日本はこの意味でも遅れています。ドイツやフランスは本気で温暖化問題を主張しているとはとても思えません。すぐそばにアイスランドがあり、大規模な噴火で旅客機の飛行制限がされました。ヨーロッパでは1816年の「夏のない年」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E3%81%AE%E3%81%AA%E3%81%84%E5%B9%B4
という噴火による大規模な寒冷化の記憶が強く残っているはずです。
8.かなり近い将来、多分、5年程度で相当な気候寒冷化が始まるでしょう。その時、太陽光発電がどの程度出来るか分かりません。気温が低下したほうが発電効率は高まることが多いのですが、日射量が低下すれば発電効率が下がるためです。風力についても、台風の大型化などいろいろな意味で困難が出てくるはずであり、あらゆる意味で地熱しか今後頼れるものはないはずなのですが、その認識が全く理解されていきません。特に電力会社はそういった見通しについてどう考えているのか、非常に疑問です。
9.アメリカでシェールガス・オイルの開発が進み、日本は時価での長期輸入契約を結ぶことになりそうです。しかし、今後寒冷化が地球規模で起こることは明らかであり、化石燃料価格は高騰します。また、アメリカでのシェール開発は今後環境問題が表面化することも確実で、価格高騰は目に見えています。日本はシェール開発に伴って起こされた環境汚染のコストまでも押し付けられる結果になる可能性があるのです。外国に頼るよりも国産のエネルギーである地熱開発にもっと取り組むべきです。
10.仮に首都圏での大地震が起こり、悪性インフレが始まったとき、原発を動かせと言う声が出てくるでしょう。しかし、首都圏での大地震は、その後、内陸での大地震が日本全国で続発するという号砲です。まさに次の原発事故を招き入れいることになり、日本は国自体を捨てなけれならないという事態に突き進むことになります。
2017年07月10日22時50分 武田信弘
http://www.asyura2.com/17/genpatu48/msg/392.html