推定エネルギー必要量(上段)と脂質の目標量(下段)(20%エネルギーの場合)
おにぎりの米にも! 加工食品に潜む「隠れアブラ」を見逃すな〈週刊朝日〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170519-00000057-sasahi-life
週刊朝日 2017年5月26日号より抜粋
健康寿命に影響を及ぼすアブラ。料理に使うオイルやマヨネーズなど目に見えるアブラを気にする人は多いものの、加工食品に含まれるアブラについてはどうだろうか。それは、よく口にするがあまりアブラと意識しない「隠れアブラ」。存在を知って上手に付き合うコツをまとめた。
健康志向が高まるなか、注目が集まるアブラ。スーパーにはさまざまな種類が並び、「体にいいものを」と厳選する人が増えた。
だが、料理に使うアブラとは別に、加工食品からもかなりのアブラを摂取しているのをご存じだろうか。
「アブラで健康を維持していきたいなら、家庭で料理をするときに使うアブラよりも、まずは加工食品に含まれる“隠れアブラ”の存在に気づいて、対策をとることのほうが先決です」
こう話すのは、植物油研究家で歯科技工士の林裕之さんだ。娘のアトピー性皮膚炎をきっかけに、10年ほど前から妻で料理研究家の葉子さんとともに、“少油生活”を送っている。
「少油生活で最も苦労するのは外食ですが、スーパーなどで売られている加工食品でアブラが使用されていないものを探すのも、至難の業。それなりの知識が必要になります」(林さん)
経験をもとに有効的なアブラのとり方をまとめたのが、著書『「隠れ油」という大問題』(三五館)だ。この本では、弁当や菓子、ファストフードなど、人気の加工食品や外食31食品の脂質量やアブラの種類などが紹介されている。いずれも消費者になじみが深く、大人から子どもまで口にする機会の多い食品だ。
林さんによると、脂質量は企業のホームページにある商品の説明や、商品の成分表で確認。アブラの種類は、メーカーのお客さま相談室に問い合わせるなどして調べたという。
「ラベルなどに表示していないものもありましたが、口に入るものの素材について知っておきたいと思ったのです」(同)
今回、編集部では同書のデータをもとに、改めて各企業に問い合わせた。ポテトチップスや、チーズバーガーとフライポテトのセット、唐揚げ弁当に、30グラム以上のアブラが含まれているのは想像がつくが、カレールー、栄養補助食品、菓子、パンなどにもアブラは使われている。その種類はコーン油やパーム油、大豆油などさまざまだ。
プリンやアイスなどにもアブラが使われている理由について、林さんは「加えることで味がよくなるためでは」と指摘する。
「意外ですが、弁当やおにぎりの米飯にも、ツヤ感を出したり粒がくっつかなかったりするように“炊飯油”というアブラを混ぜるケースがあります。それほどたくさんの量はとらないので見逃しがちですが、チューブに入った練りカラシや練りわさびにも、アブラが入っています」(同)
食の欧米化とともにアブラの摂取量は増えているように思えるが、実は、日本植物油協会によると、日本人の脂質摂取量は1995年をピークに減少し、2005年ごろから横ばいになっている。これは太ることを気にして、サラダ油やマーガリン、マヨネーズなどを控える人たちが増えた結果だという。
だが、われわれがとっているアブラのほとんどは、食材や加工食品などに含まれる隠れアブラによるもの。同協会の資料によると、11年の厚生労働省「国民健康・栄養調査」での日本人の1日あたりの脂質摂取量は54グラム。うち「見えないアブラ(加工食品と食材そのものに含まれるアブラ)」は42.7グラムだ。摂取脂質の8割近くが隠れアブラという計算だ。そうなると、いくら料理に使う量を減らしても焼け石に水でしかない。
ところが、専門家は「根本的な問題は、量よりもむしろ質」というのだ。
「現代人の脂質摂取量は少し多めですが、無理をして控える必要はありません。実は、隠れアブラで気にしなければいけないのは、使われているアブラの質や種類のほうなんです」
こう忠告するのは、『カラダが変わる!油のルール』(朝日新聞出版)の著者で、油脂と健康の関係に詳しい麻布大学生命・環境科学部食品生命科学科教授の守口徹さんだ。
厚労省「日本人の食事摂取基準」(2015年版)では、現代人の脂質摂取の目標量は「総エネルギー量の20〜30%」となっている。年齢や性別などで異なるが、男性では55グラム前後、女性では40グラム前後。先の日本植物油協会のデータと比べても、女性では幾分多いものの、男性ではあまり変わらない。