誰かを社会的に“抹殺”できる…刑事法の原則に反している 共謀罪 安倍政権のペテンを糺す
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2017年5月10日 小口幸人 弁護士 日刊ゲンダイ 文字お越し
金田勝年法相(C)日刊ゲンダイ
共謀罪法案は、計画+準備段階で処罰できる犯罪を大幅に増やす法案です。これは「既遂行為」を処罰するという刑事法の原則に反するものです。
例えば刑法では、既遂の段階で処罰する犯罪が200もありますが、計画とほぼ同じ意味であろう「陰謀」段階で処罰する法律は4つしかありません。陰謀と未遂の間である「予備」段階で処罰する犯罪も10しかありません。
このように限定されている理由としては、2つのことが考えられます。1つは、当該行為自体の危険性が低いからです。下見や資金準備のように、準備行為そのものは危険な行為ではないからです。準備だけで取りやめになることもあります。
もう1つの理由は、余りに手前の段階で処罰すると、冤罪が増えるからです。例えば、サバイバルナイフを購入する行為は、殺人の準備行為であることもあるでしょうが、肉や魚やロープや薪を切るという本来の用法のために購入することもあるでしょう。
「計画+準備」段階で検挙するためには、捜査機関は裁判所に対し、「計画」が立案されていると疑うに足りる理由と、準備行為が実施されたことを疑うに足りる理由を証拠で示し、逮捕令状や捜索令状を取る必要があります。
このときに捜査機関が示す証拠の一つ一つは、組み立てようと思えば犯罪の計画に見えなくもないけれど、サバイバルナイフを買ったなど、日常的にありふれた行動の一場面一場面となることが予想されます。
捜査機関が「計画」という名の絵を描き、一場面一場面をかき集め、ジグソーパズルのピースのよう組み合わせて証拠としてまとめ上げ、裁判所に提出し令状を取るということが行われることになります。
裁判官は、逮捕・捜索令状段階では、捜査機関が提出した書類だけで判断することになります。本人の言い分は全く聴取されませんから、実際は全然違う一場面の行動なのに、誤って検挙されてしまうケース、つまり冤罪が増えることが予想されます。
本当に恐ろしいのは、こういった誤った検挙が、捜査機関のミスとして生じることではありません。本当に恐ろしいのは、こういう証拠を積み上げれば、そこに計画があろうとなかろうと令状が取れると認識し、誰かを社会的に抹殺するために、あるいは団体や個人がもっているデータや資料を押収するために用いられることです。