近くて遠い日経平均2万円
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2017年05月11日 在野のアナリスト
東電が新経営再建計画を発表しました。原子力や送配電事業で、10年以内に再編・統合をはじめることで、福島原発の処理費用、年5000億円をうみだすとします。しかし原発は自ら免震塔の耐震偽装で再稼働のめども立たなくなり、送配電で5000億円も捻出できるなら、それは利用者や電力自由化で参入した企業へ、過度な負担をお願いするということ。福島原発の処理費用は、すでに想定の2倍。もし年5000億円で処理を継続するなら、最終的に処理が終わるのは当初想定の倍以上の期間がかかる、とも予想されます。
米国で、広島・長崎に落とした原発にかかわった地下施設で天井が陥落、つまり地上からみると陥没して大穴が開く事件がありました。天井が木製だった、などの話もあって、老朽化が原因とみられます。鉄板もコンクリも腐食はする。木より寿命は長いですが、放射性物質の寿命にはとても敵いませんし、放射線環境下ではより腐食もすすむ。これから数十年にかけて、世界は老朽化した原子力施設と向き合っていかなければいけない。日本は超高齢社会ともされますが、原子力施設も超高齢の時代に突入してくるのです。
日経平均は2万円直前で足踏み、などとも報じられます。しかし急ピッチで上昇した、買われ過ぎサインが出ていて時間調整が必要、などとも評されますが、恐らくは外国人投資家にこれ以上、持ち分を増やす余裕がなくなったことが原因です。円安の動きも一服しているように、外国人投資家は日本株を買うとき、よく円売りのヘッジをかけます。東証が引けてからするすると円安になるのも、株式市場の関係者が目を離し、商いが薄くなるタイミングで欧州勢が為替市場に参加してくる。ここ最近は、外国人投資家が主導する円安、株高局面だったことが売買動向などからもうかがい知れます。
最近ではノックアウトの水準感も話題ですが、大切なことは外国人投資家が後どれぐらい買うか、買えるか、です。そして今は、株式の割合以上に円売りの持ち分が気になる。減らしていたとはいえ、4月でもまだ高水準の円売りポジションを持っていたことが、米MMFなどからも鮮明ですから、株買いの勢いから考えても、今や高水準の円売りも溜まってしまっている。株買いの勢いの喪失と、円売りの勢いの喪失と、最近では連動も低くなっていますが、それでも外国人投資家の動向を知る上では重要であり、かつ今後どれぐらい外国人投資家が買えるか、その目安にもなるので重要といえます。
4月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DIが5ヶ月ぶりに改善です。下がり続けていたこと、また4月後半から株の上昇局面がはじまったこと、などが改善の理由ですが、しかし先行き判断DIも上昇はしますが、家計動向関連は相変わらず低調であるなど、評価が分かれる部分もある。正直、賃金が伸びるどころか下がっている現状では、家計への期待は乏しい。期待はバブルのつづく海外や、訪日外国人客の懐具合、といった点で企業が夢よ、ふたたびというのが今回の改善の理由でもあるのでしょう。
日本の景気は、景気ウォッチャー調査をみるまでもなく悪い。外国人投資家にとって2万円に大して意味はない。ドル、ユーロベースでみた日経平均ではもう高値なので、これ以上買うのを躊躇う、という面が大きいのでしょう。そして米国で報じられる第2のウォーターゲート事件、とされるFRB長官の更迭も、ここに来てトランプラリーの終焉を意識させ、上値を重くする要因になってきたのです。日本の景気は、もう悪いで確定している。企業は海外の売上高を増やしてきて、それが売上高にも寄与してきましたが、だからこそ海外の景気動向を意識せざるを得ない。米国で、原子力施設に開いた大穴のように、誰が放射線が飛び交うその底に落ちていくか? という意味でも、景気の見方には気をつけないといけないのでしょうね。