てんとう虫(※写真はイメージ)
赤いてんとう虫が日本各地で減っている! 二紋型が増える理由とは〈dot.〉
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170427-00000029-sasahi-env
dot. 5/7(日) 16:00配信
春、暖かくなると公園の植え込みなどに姿を現す「ナミテントウ」。その背中の模様にも、地球環境の変化が表れているという。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された、日本各地でナミテントウを調査した、興味深い研究を紹介しよう!
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新緑が鮮やかになる4月中旬から5月にかけて、本州から九州の各地でテントウムシが目につくようになる。よく見るのは、ナナホシテントウとナミテントウだ。ナナホシテントウは、赤い背中に黒い斑紋が七つあるのですぐわかるが、ナミテントウは同じ種でも背中の模様がさまざま。大きく「二紋型」「四紋型」「斑型」「紅型」の四つに分けられる。
この四つの型の割合が地域によって異なることは1950年代から知られていた。「日本のダーウィン」と呼ばれた遺伝学者・駒井卓博士が各地で調査し、大きな傾向として、南へ行くほど黒い背中に赤い斑紋が二つある「二紋型」の割合が高く、北へ行くほど赤い背中に黒い斑紋がある「紅型」の割合が高いことを明らかにしていたのだ。すなわち、二紋型は暖かい気候に適応し、紅型は寒冷な気候に適応している。
■四つの型の割合が変わった
地球の温暖化は今や誰もが実感し、気象庁も「日本の平均気温は、1898年以降では100年あたりおよそ1.1度の割合で上昇」と発表している。これがナミテントウの分布にどのような影響を与えているのだろうかと疑問を抱き、日本各地で四つの型の割合のデータを取り続けている遺伝学者がいる。京都産業大学の野村哲郎教授だ。
野村教授は2002年から08年にかけて、全国の96カ所を訪れてナミテントウを採集し、四つの型の割合を調べた。こうしたデータを取るには、1地点で少なくとも100匹以上のナミテントウを採集しなければならないから、並外れた情熱と根気、労力が必要だ。教授は教え子などの協力を得ながら、全国で4万から5万匹ものナミテントウを採集した。
野村教授は、調査地点ごとに型別の割合を表す円グラフを作成。その中から駒井博士と共通する調査地点を選んで、地図の上に円グラフを置き、比較してみた。
そしてはっきりわかったのが、南北を問わず全国のほとんどの地点で、1950年前後と比べて2000年代には二紋型の割合が増え、紅型の割合が減っているということだ。
二紋型が北へ移動して分布を広げる可能性もあることから、海を隔てた離島の佐渡のデータも調べたところ、「佐渡でも明らかに二紋型が増え、紅型が減っていました」と、野村教授。
■温暖化で二紋型に有利な環境が拡大
全国的に二紋型が増え紅型が減っている理由について、「温暖化により、二紋型の繁殖により有利な環境が北のほうにも広がり、二紋型が割合を増していると考えられます」と野村教授は言う。ただし、その詳しい原因はまだわかっていないそうだ。
普段見かけるまわりの動植物にも、地球環境の変化が表れているようだ。身近な自然を根気よく見つめれば、キミたちも新たな変化を発見できるかもしれない!(協力/京都産業大学教授・野村哲郎、文/上浪春海)
<家の近くのナミテントウを調べよう!>
ナミテントウをいちばん観察しやすい時期は、本州から九州では4月中旬からゴールデンウィーク。公園の植え込みや、ユキヤナギやカエデなどの低木にナミテントウがたくさん集まる。それらをつかまえて、キミの地域の四つの型の割合を調べてみよう。友達や家族と一緒に調べるのもいいね。
【観察の方法】
・つかまえたナミテントウをペットボトルに入れて家に持ち帰る。
・冷蔵庫で冷やして活動を鈍らせる。
・1時間後、冷やした保冷剤の上にプラスチック容器を置き、そこに冷蔵庫から出したナミテントウを入れ、四つの型に分けて数を数える。
・観察が終わったら元の場所へ逃がす。
※月刊ジュニアエラ 2017年5月号より