日本の賃金と物価、そして株価はなぜ上昇に転じないのか?
国内の様々な指標をみると全体的には悪くありませんが、なかなか賃金も株価も上がりません。気になるのは消費者物価指数の下落ですが、これは何を意味しているのでしょうか。(『グローバルマネー・ジャーナル』福永博之)
※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年4月12日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。
※4月10日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております
プロフィール:福永博之(ふくなが ひろゆき)
IFTA国際検定テクニカルアナリスト、(株)インベストラスト代表取締役、ビジネス・ブレークスルー大学 資産形成力養成講座講師。テレビ、ラジオ、多数のマネー雑誌などで投資戦略やテクニカル分析をプロの視点から解説し、人気を博している。
上がらない賃金と株価。消費者物価指数の下落が意味するものとは
賃金が上がらない2つの理由
失業率、雇用について見ていきましょう。失業率については、バブルであった1990年前後には2%台まで下がっていた時期がありました。現在はバブル期に近いところまで下がってきており、3%を切っています。日本の雇用情勢は引き続きタイトな状態が続いています。新規の求人倍率や有効求人倍率は、それこそバブルといわれた頃とほぼ匹敵するくらいの数値になっています。
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問題はこれからです。さらにバブル期の水準まで切り下がってくるのかどうかが重要なポイントです。下回るようなことになると、そこでようやく賃金が上がってくるかもしれません。ここでポイントになるのが、この当時とは違う派遣労働者の数でしょう。当時は正社員ばかりですから、派遣の方はほとんどいませんでした。さらには外国人労働者の占める割合が変化してきています。
今日もお昼を食べに行ったら、そこで外国の方が調理していましたけれど、最近いろんなところで外国の方が働いていらっしゃるのを見かけます。そう考えますと、やはり賃金が上がらない1つの理由に、派遣の方の割合が高くなっていることが影響してくると思います。それともう1つは、やはり外国人労働者です。外国人労働者のウエイトが高まってきますと、やはり外国人の方はそれなりに安い賃金で働く方も結構いるので、賃金の高くならない理由の1つになっているのかもしれません。
ですから、もっともっと人手不足になるか、あるいはそういったいろいろな方たちの賃金も上がるという風になっていかないと、なかなか実際のところ賃金の上昇は厳しいのかもしれません。職は増えているかもしれませんが、当時と違う要素をちょっと頭に入れておいた方がいいかもしれません。
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消費者物価指数の下落が意味すること/注視すべきその他の国内指標
さらに消費者物価指数です。ここは本当に右肩下がりで、いわゆる持ち合い状態が続いている状況です。これもなかなか伸びてくれないという状況になっています。東京都区部に関してはマイナスになっています。物価が上がらない方がいいという人の方がたくさんいるので物価が上がってこないのだと思いますが、上がってきてほしいところです。
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さらに、メインの3業態を中心に小売の販売額を見ていきましょう。百貨店が98.8から98.2です。スーパーが98.9から96.9に下がっています。コンビ二も100.1から98.3に下がってきています。2月は一気に下向きに変わっている状況です。
ポイントとしては、株価が上昇して景況感や業績等の実態がついて株価が上がってくるなかで、金利が追いかけて上昇するケースについてはほとんど心配がいらないということなのです。好景気を持続させるため、過熱感を持たせないための利上げだからです。
2月は春節だとかお休みがありましたから、数値が上がってきてもおかしくないと思います。もちろん観光客も好調の今、休み以外でもいろいろな方が来られている部分もあるとは思いますが、それでもやはり伸びが鈍化しているという厳しい状況です。ですから、こういう落ち込みからしますと、小売店株への投資という観点で考えた場合に、小売業の、特にこの3業態はなかなか投資しづらいという状況に残念ながらなってしまいます。
次にマネーストックを見ていきましょう。これまでのところは株価が上昇する過程で流動性が上昇して、なおかつ残高も増えるという状況で、株価の上昇、あるいは下支えというのは連動していました。ところがここにきて、2月までの数字にはなりますが、マネーストックが伸びているにも関わらず、なかなか株価が上げきらないという状況です。
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2月の株価は横ばいで推移していましたから、これから出てくる3月のマネーストックが低下しているということになると、3月の株価は上値が重たくて下旬にかけて下落したという裏づけになる可能性もあります。そういう意味では、こういった資金の流れもしっかりと見ておく必要があるわけです。
特に流動性が低下するというようなことになると、3月の期末要因ということも考えられますが、それよりも資金、市場に流れてくるお金がちょっと減っているというように考えざるを得ない状況です。マネーストック辺りは右肩上がりが続いているかどうかは、確認しておきたいところです。
日米長期金利の動きに注意
そして金利です。日銀がマイナス金利を導入したところから金利がマイナスの状況が続いていましたが、イールドカーブコントロールを導入してから、少しずつ金利が戻ってきており、プラス圏で推移しています。ただ、イールドカーブコントロールを導入して0近辺に金利を抑えるということから、さすがにマイナスにはならなくなっているものの、ほとんど上がってきていない状況です。10年預けても0.1%という水準にも届かない状況が続いているということです。
当初はマイナス金利によって不動産、REITなどが融資を受けやすくなるということから不動産REITが上昇したりしていましたが、最近ではマイナス金利からプラス圏に戻ったところで横ばいです。物件のあるなしも関係しているとは思いますが、REIT指数についても上値が重たくなってきています。
0.1になったからといって金利負担が大きく増えるわけではありませんが、低金利がREITなどの支えになっている部分もあります。0.1を超えてきたりすると、多少ならずとも不動産関連のETF、あるいは株に対して影響が出てくる可能性がありますので、長期金利の動きには注意をしていきたいです。
また、日米の金利が同じように上昇するのであればよいですが、アメリカの金利が上がらないで日本の金利だけ上がるとなれば、ドル円の下落、つまり円高につながりかねません。日米の金利差が縮小して円高に触れるという典型的なパターンになりかねませんので、現在は少しずつ上げていますが、アメリカの長期金利も併せて見ていく必要があります。
国内の様々な指標をみると、全体的には悪くありません。ところがなかなか株価は上がりません。外部環境に多少影響を受けている部分がありますが、本当に日本株が割安なのかどうかという観点でも見ていく必要があるでしょう。
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いよいよ「危険水域」に入った東京都心3区のマンションバブル=大前研一
2017年4月22日ニュース
東京の千代田区、中央区、港区の人口増加が加速しています。この3区ではものすごい数のマンションが建っており建て過ぎの上に値段も強気、しかし実際には売れていません。(『グローバルマネー・ジャーナル』大前研一)
※ 本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2017年4月19日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。
※4月16日撮影のコンテンツを一部抜粋してご紹介しております。
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プロフィール:大前研一(おおまえ けんいち)
ビジネス・ブレークスルー大学学長。マサチューセツ工科大学(MIT)大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社後、本社ディレクター、日本支社長、常務会メンバー、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年に退社。スタンフォード大学院ビジネススクール客員教授(1997〜98)。UCLA総長教授(1997〜)。現在、ボンド大学客員教授、(株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役。
末期症状? 東京都心3区の人口増が加速、高額物件も急増中
【不動産】極端な人口集中、近い将来に問題化も
日経新聞が5日報道したところによると、東京の千代田区、中央区、港区の人口増加が加速していることがわかりました。職住接近を求める高所得者や、保育所を求める子育て世代が流入しているほか、郊外から利便性を求めて移り住む高齢者が増えていることなどが要因です。
介護の受け皿としては脆弱なため、保育所同様、近い将来の問題になる公算が大きいとしています。
これら3つの都心三区というところは、学校の生徒がいなくなりました。千代田区の人口は12万人いたのが、4万人を割り込み、3万人台になってしまいました。今は6万人台に戻ってきていますが、こうした状況が起きているのです。学校が余ってしまい、統廃合が進んだわけです。私の子供たちも、通っている間に統廃合で非常に大変な騒ぎとなりました。
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また中央区も統廃合を進めてしまったので、今再び学校を作らなくてはならなくなりました。矢田区長はもう嫌だと言い、マンションはもう売るな、賃貸だけにしろなどという状況になっているのです。
年齢階層別の人口推移を見ると、千代田区でも15歳から64歳の人が増えているのです。それにより0歳から14歳の人口が構造的に上がってくるので、学校が足りない事態となるわけです。
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建てすぎ、高すぎ、実は売れていない
そして、この都心3区についてはものすごい数のマンションが建っています。建て過ぎなのです。しかも値段も非常に強気です。
我が家のそばにも、一番町と三番町の間あたりに三井不動産がやっている物件のモデルルームがあります。現地は今建設中で、その辺を散歩で通ると完売御礼と出ています。ところがモデルルームに行くと、旗を振って案内をしています。実は売れていないのです。
予約をすればモデルルームを見せてくれると言うので実際に見にも行きました。私はモデルルームがあると必ず見に行く癖があるのです。そこで坪単価は700万円、それを聞いた途端に絶対売れないと思い、モデルルームを後にしました。今までは千代田区の一番いいところでも坪単価600万円が最高でした。それが今回は700万円というのです。これは売れないと思います。
買った場合に自分が住めば良いのですが、賃貸に出したときには逆立ちしてもペイしないはずです。中央区、港区あたりでも、坪単価400万から500万円くらいなら何とかなりますが、それ以上になると自分でお金が余っていて、死ぬときに捨てるというような人が、自宅として買う場合にしか買わないでしょう。
ただ、今とにかく大和ハウスなどを中心にこの辺は大ブームとなっています。麹町の日テレ通りにも24階建てのマンションが建っていますが、それほど高い値段ではないものの、その地下では有楽町線につながっています。そうした物件が、私の散歩道だけで40軒ほどあるのです。調子に乗って皆が建て過ぎている状況です。マンション業者はテンポが今ひとつ遅れるきらいがあります。
2つの利権
また、築50数年経ったあるビルは、3.11の後、タイルを1つずつ叩いて剥離しないか確認するという作業が行われています。これはものすごい利権です。3.11便乗利権とも言えます。こうしたことも私の近所だけで数多く見られます。そんなにタイルは剥がれてきたりしないはずですが、10年に1回はこれをやりなさいということで、かなりのお金がかかるのです。
もう一つの利権は、除染です。例えば学校の校庭における基準として20ミリシーベルトで十分にもかかわらず、1ミリシーベルトとしたために、南相馬だけでも膨大な除染費用がかかるのです。これがものすごい利権になっていると言えるのです。ゼネコンはこうしたところで便乗でやっているわけです。
除染はいずれは終わりますが、タイルは10年に一度、永遠に続くことになるでしょう。中に人が住んでいるビルも足場が組まれ、泥棒が入りやすい状況になります。我が家はそれを拒否したら、上からぶら下がってくるやり方で作業が行われました。そうでなければ、防犯上非常に危ないことになります。
さらに、作れば売れるという状況が数年前にあったために、今、立ち退き物件にマンション業者が群がる状況も起きています。築20年程度になると立ち退きの専門家が出てきて、おっかない人たちもやってきて、立ち退きの交渉が迫られます。
まだいくらでもいけるという頭のようですが、私の感覚では既に建ち過ぎです。いくらなんでもこれほどの数は全部埋まらないと思います。値段も彼らが考えているような坪単価500万、600万といった場合でも上限を超えていると思われます。その間給料は上がっていないので、賃貸が成り立たないわけです。マンション業者の中には調子に乗って悪いことをするところも出てきている状況なのです。
Next: 【コンビニ業界】ローソン玉塚会長が今、退任する本当の理由
【コンビニ業界】大手ローソンの玉塚会長が退任する本当の理由
コンビニ大手ローソンの玉塚元一会長が、5月末に退任します。玉塚氏はファーストリテイリング社長などを経て、2010年にローソンに入社、2014年から社長、16年から会長として経営を率いました。このタイミングでの退任について玉塚氏は、三菱商事を巻き込んで総合力をつけられたとし、ローソンの今後の業容拡大への道筋は整ったと強調しました。
これは商社同士の戦いのようなもので、伊藤忠対三菱商事ということで、三菱商事としてはローソンを完全に子会社化し、コントロールして、自分のところから人材を送り込んでいきたいのです。
もともと三菱商事にいた新浪氏がローソンへ行き、三菱商事から送り込んでくる圧力を死ぬほど嫌っていたのです。玉塚氏を呼んできて私の後継者だと早めにアナウンスをし、それなりの影響力のある人なので無視できず、玉塚氏が後を引き継いだという訳なのです。
しかしながら三菱は資本比率を増やし、自分のところから送り込み、実質的には玉塚氏は祭り上げられていたということになったのです。そして予定通り、三菱商事直営の会社になったということなのです。
新浪さんがいたからここまで来たわけですが、玉塚氏には三菱商事のそうした圧力をはねのける力が、株も含めてなかったというわけです。新浪さんに頼まれてきたものの、これ以上抵抗しても無駄だということで、これから先は三菱商事コンビニエンス部門としてやっていけば良いと判断したのです。
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直接的なトリガーになったのは、コンビニエンスストアの国内店舗数の推移です。セブンイレブンがダントツに強く、ローソンも成城石井などを買ったりしたものの、あまり大きな効果はなかったわけです。一方、ファミリーマートは合併を繰り返し、ローソンよりも数を増やし、伊藤忠の直接の影響力が前面に出てきたので、三菱商事も焦ったというわけなのです。玉塚氏はその点では、抵抗力なくここで退任、ある意味詰腹を切らされたということです。
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不動産バブル延命で自滅する中国、弾けそうで弾けない経済の実態とは?=石平
2017年4月18日 ニュース
今の中国経済は、不動産バブルが長引けば長引くほど大打撃を受ける構造的悪循環に陥っているようです。「崩壊間近」なはずのバブルが弾けないカラクリと、中国経済を待ち受ける暗い未来とは?無料メルマガ『石平(せきへい)のチャイナウォッチ』の著者で中国出身の評論家・石平さんが解説します。
死ぬまで「毒薬」を飲み続けるしかない中国経済のイカれた病理
不動産バブルは中国経済を「人質」にとっている
中国では以前から、不動産バブルの崩壊を憂慮し、Xデーの到来に戦々恐々としている人が多い一方で、「バブルがなかなか崩壊しない」という現実を逆に危惧してやまない声もある。いわゆる「不動産バブルによる中国経済の人質論」というものだ。
例えば、昨年9月15日付の中国青年報に、社会科学院の魯洲研究員が登場して、「不動産市場は中国の実体経済を確実に人質に取ってしまった」と論じたのが一例である。あるいは今年3月に、香港環球経済通信社の首席経済学者である江濡山氏が「不動産は経済だけでなく政府と民衆をも人質に取った」と訴えている。
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「不動産が中国経済を人質にとってダメにした」という彼らの論調の根拠は、バブルが膨らんできている中で、中国経済に占める不動産業と不動産投資の比重が、あまりにも大きくなりすぎたということである。
2016年、中国の国内総生産(GDP)に占める不動産投資額の比率は何と23.7%(国際通貨基金試算)に上っている。日本の場合、同じ16年における不動産投資の総額はせいぜい4兆円程度で、GDPの1%にも満たない。この対比から見ても、中国における不動産業の異常な肥大さがよく分かる。
不動産業がそこまで肥大化してしまうと、それが伝統的な製造業やIT産業などの新興産業の生存と発展の余地を奪ってしまう。問題をさらに深刻化させているのは、産業の「血液」ともいうべき銀行からの融資も、もっぱら、不動産市場へと流れていくことである。
Next: 不動産バブルが長引けば長引くほど、中国経済は大打撃を受けるだけ
不動産バブルが長引けば長引くほど、中国経済は大打撃を受ける
2016年、中国全国の金融機関から企業や個人に貸し出された新規融資の総額は12.65兆元(約200兆円)であるが、そのうち、個人向け不動産ローンへの貸し出しは5.68兆元で全体の45%にも上っている。当然、どの産業分野に対する融資よりも圧倒的に高い数字である。
つまり今の中国では、銀行の融資という産業の発展にとって最も重要な資源が産業にではなく、個人の不動産購入に集中的に費やされているのだ。
そのことは逆に、本来なら国民経済の基幹であるもろもろの産業に対する金融支援が徹底的に細くなっていることを意味する。しかも、産業部門への銀行融資の大半は、政府が守らなければならない伝統的国有大企業に集中しているから、経済の活力となるべき民間企業や経済の未来を担うべき新興産業には新規融資がほとんど流れていかない。
不動産業や不動産市場への銀行融資の集中は結局、中国の産業全体をダメにし、中国経済発展の未来を奪うこととなっているのだ。上述の経済学者たちが語る「不動産による中国経済人質論」の真意はまさにここにある。
Next: 「毒薬」を飲み続けるしかない中国経済の緩慢な自殺
「毒薬」を飲み続けるしかない中国経済の緩慢な自殺
もちろん、この程度のことなら、当の中国政府は百も承知のはずだ。問題は、政府が知っていながら、このような状況を変えることもできない点にある。もし政府が金融支援を実体経済に向かわせるために不動産市場への融資を制限するようなことをしたら、結果的に不動産の買い手が急速に減少し、不動産価格の暴落、すなわち「不動産バブルの崩壊」は目の前の現実となる。
しかしそれはまた、中国経済の破滅を意味する悪夢のような展開であろう。つまり中国政府が金融支援で不動産バブルを維持するようなことは「毒薬を飲む」のと同じことだと分かっていながら、当面の中国経済の延命のために、それを飲み続けなければならないのだ。
その結果、中国政府は結局、バブルの崩壊による「ショック死」よりも、「毒薬」を飲み続けることによっての「慢性自殺」を選ぶことにもなりかねない。
中国経済にはやはり、未来はない。
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