格安スマホで急増するトラブル 避けるための3か条 「電話窓口がつながりにくい」
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2017年04月19日 日経トレンディネット
2017年4月13日、独立行政法人国民生活センターから、「格安スマホ」に関する注意喚起が発表された(参考ページ:「こんなはずじゃなかったのに!“格安スマホ”のトラブル 料金だけではなく、サービス内容や手続き方法も確認しましょう」)。
同センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた格安スマホ(SIMカードのみ契約する「格安SIM」も含む)に関するトラブルの相談件数が、2014年度は139件であったところが、2015年度は380件、2016年度は1045件と、ここ2年で急増しているという。
格安スマホに関する相談件数の推移(国民生活センターの資料より作成)
一体なぜ、これほどまでに相談件数が増えているのだろうか。
国民生活センターが公表した相談事例を見ると、格安スマホ・格安SIMの「サービス」「サポート」「端末」について、大手携帯電話会社と違いがあることがトラブルの主な原因になっている。
「乗り換えたらメールが届かなくなった」
1つ目は、提供されているサービスの違いだ。
そもそも格安スマホ・格安SIMとは、大手携帯電話会社のネットワークを借り受けた通信会社によるサービス。大手携帯電話会社とは別の会社なので、提供するサービスの内容も異なる。
その一例が、キャリアメールの有無だ。大手携帯電話会社のスマホでは、「○○○@docomo.ne.jp」「△△△@ezweb.ne.jp」「□□□@softbank.ne.jp」などのメールアドレスが発行され、「キャリアメール」として利用できる。
ところが、キャリアメールは大手携帯電話会社独自のサービスなので、格安スマホ・格安SIMを提供する通信会社では使えない。乗り換え後にメールを送受信するには、GmailやYahoo!メールといったフリーメールや、契約した通信会社が独自に提供するメールアドレスなどを利用することになる。
だが、メールを送りたい相手がキャリアメールを使っていて迷惑メールの受信を拒否していると、キャリアメール以外のメールを受け取ってもらえない場合がある。国民生活センターの事例では「格安スマホに乗り換えたところ、メールが届かなくなった」という相談が寄せられている。
「電話窓口がつながりにくい」
2つ目は、サポート体制の違いだ。
大手携帯電話会社は、いずれも日本全国に実店舗を構えている。スマホの操作や契約について何か困ったことがあっても、ショップに行けばスタッフが対面で応じてくれるという安心感がある。
これに対し、格安スマホ・格安SIMを提供する通信会社では、実店舗を構えていないところが多い。契約後に困ったことがあれば電話窓口やメールなどで相談することになるのだが、電話がつながったり、メールの返事が来たりするのを待たされることもある。実際に、国民生活センターからは、電話窓口のつながりにくさを訴えた相談事例も報告されている。
また、端末が故障したときの対応にも違いがある。大手携帯電話会社の場合、故障した端末を預けている間、貸出機を借りて急場をしのぐことができる。
一方、格安SIMや格安スマホの場合、修理に対応する保証オプションは定着してきたものの、修理中に貸出機を提供する通信会社はごく一部に限られる。国民生活センターでも、修理期間中に手元からスマホがなくなってしまうことについて相談を受けた事例を公表している。
「格安SIMが使えないスマホだった」
3つ目は、格安SIMと利用するスマホ端末の組み合わせだ。
SIMカードだけを契約する格安SIMでは「大手携帯電話会社で購入したスマホを乗り換え後も使い続けられる」とアピールしている。ここで問題になるのが、端末のSIMロックだ。
大手携帯電話会社のスマホには、購入した通信会社でしか使えないようにSIMロックが掛けられている。別の通信会社のネットワークを借りている格安SIMに乗り換えるにはロックを解除しなければならないが、解除できるのはSIMロックの解除が義務化された2015年5月以降に販売された機種に限られる。
国民生活センターでは「格安SIMの通信会社に問い合わせた際、現在の通信会社名と機種名を伝えたところ『使える』と案内されたため乗り換えたが、実際にはSIMロック解除非対応の機種であったために使用できなかった」というユーザーからの相談事例が報告されている。
また、大手携帯電話会社が販売するスマホは、取り扱う通信会社のネットワークに最適化していることが多い。そのため、たとえSIMロックを解除しても、別の通信会社のネットワーク環境下では電波状況が悪かったり、常に圏外になったりすることもあり得る。この点にも注意が必要だ。
市場に流通する中古スマホのなかには、もともとの購入者が代金の全額または一部を不払いのままで売却した端末が、まれに存在する。「インターネットで購入した端末の修理を依頼したところ、未払いの代金を支払うまで受け付けられないと断られた」という事例も国民生活センターから報告されている。
トラブルを避けるためには?
では、こうしたトラブルを避けるには、どうすればいいのだろうか。注意すべきポイントは以下の3つだ
「よくある質問」や「Q&A」を事前に読む
契約したい格安スマホ・格安SIMについては、料金プランの月額料金だけでなく、どんなオプションを提供しているのか、実店舗は展開しているのかなど、さまざまな角度からサービス内容をチェックしよう。
特に、提供する通信会社のサイトにある「よくある質問」や「Q&A」ページでは、大手携帯電話会社から乗り換えるときに役立つ情報も数多く掲載さている。キャリアメールの提供有無や、料金がいつから発生するかなど、大手携帯電話会社では意識しなかった事柄についても記載されている。契約後のトラブルを避けるためにも、できるだけ目を通しておきたい。
また、格安スマホ・格安SIMの初心者向けに解説ページを用意している通信会社も多い。MNP制度の概要や手続きの流れなども掲載されているので、こうしたページもあわせてチェックするのがいい。
「動作確認済み端末」のチェックは必須
今まで使っていたスマホを格安SIMでも引き続き使いたければ、格安SIMの通信会社がウェブサイト上で公開している「動作確認済み端末」の一覧は必読だ。
この一覧には、通信会社が自社の格安SIMで動作確認を行った端末が掲載されている。自分のスマホが載っていることを確認しておけば、乗り換えたのに使えない、といったトラブルを未然に防げるはずだ。
また、単に「動作した」というだけでなく、SIMカードのサイズやSIMロック解除の必要性なども、ここには記載されている。格安SIMを契約するときに誤ったサイズのSIMカードを選んでしまわないよう、事前に確認しておくのがいい。
「保証オプション」で会社を選ぶ
格安SIMや格安スマホで加入できる保証オプションの内容は、通信会社ごとに異なる。保証オプションの提供有無やその内容についても、端末の動作確認状況と同様、重点的にチェックしておきたい。
例えば「LINEモバイル」では、持ち込み端末向けの保証オプションにおいて、希望するユーザーには代替機を貸し出している。また、自社販売した格安スマホ向けの保証オプションでは、保証の利用を申告するタイミングによっては、その日のうちに交換機を発送してくれる。
大手携帯電話会社のように、修理中も使える代替機を求めたり、迅速に端末を交換してくれたりするサポートを求めるのであれば、こうした独自性の高い保証オプションを備えた通信会社を契約するのがいいだろう。
通信会通信会社側社側にも改善が求められる
今回の注意喚起の最後では、国民生活センターから業界団体に対し、苦情減少のための取り組み強化が要望されている。
前述のように、初心者向けの解説ページを用意して格安SIMや格安スマホのメリットとデメリットを説明したり、料金プランと一緒によくある質問の一部を掲載したりしている通信会社もあるが、その取り組み方はさまざまだ。
だが、大手携帯電話会社からの乗り換え需要が増え、格安スマホ・格安SIMのユーザーが急速に増えている現状では、サービスを提供する通信会社側にも、サービス内容のより明快な説明が求められる。
例えば、現在各社が自主的に掲載している動作確認済み端末の一覧は、「格安SIMで使える機種を絞り込む」ための仕組みだ。仮に、すべての通信会社でデータベースを統一して、現在とは逆に「機種名から使える格安SIMを絞り込む」ことも可能にすれば、SIMロックにまつわるトラブルを今よりも減らせるのではないだろうか。
また、国民生活センターの相談事例にもあったが、通信会社側による誤った説明や荷物の不達といった不可抗力によって、ユーザーがトラブルに見舞われるケースもある。人間が運用するサービスに完璧はあり得ないが、だからこそトラブルを抑止するためのさらなる取り組みに期待したい。
(文/松村武宏)