駐日大使もまだ…(ポトマック湖畔の桜は5分咲き)/(C)AP
トランプ政権のアジア基軸政策は完全に終わった 支持率急落 “トランプ政治”現地ルポ
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2017年3月24日 日刊ゲンダイ
観光客も遠のくワシントン
「(首都ワシントンに)客なんか来やしねえ。もうすぐポトマック河畔に桜が咲くんだ。この時期は例年、観光客が多いんだが、トランプが大統領になってから確実に客足が落ちたね。ここに来るのが怖いんじゃないか」
1981年にインドから来米したタクシー運転手は、ホテルに着くまでの間、トランプ批判をやめなかった。
「どのホテルだって部屋は空いているはずさ」
運転手の言葉を裏付けるように、観光団体「ワールド・トラベル&ツーリズム評議会」によると、特に国外からの観光客数はトランプ政権誕生後、前年比で6%減と見込まれている。心なしか、ワシントン市内を歩いていても活気が伝わってこない。
トランプへの否定的な見方は政治の専門家からも聞かれた。国務省元国務次官補東アジア・太平洋担当のスタンレー・ロス氏だ。
「トランプ政権には今、アジアの専門家がいません。オバマ政権時代のアジア基軸政策(ピボット)は完全に終わったのです。今後は恐ろしい結果が待っているかもしれません。何しろ諸外国が交渉をしようにも、実務レベルでの高官がまだ指名されていないのですから」
トランプは過去2カ月、安倍首相やカナダのトルドー首相、メルケル首相などと会談したが、ほとんど「エールの交換」に終始した。というのも、新政権で充足されるべき閣僚・高官の人員(連邦上院の承認が必要)は約550人いるが、3月22日現在20人が承認されたにすぎないからだ。指名・承認が終わるまでは代理が務めざるを得ない。歴代の政権でも夏までかかるが、トランプ政権は遅すぎる。対外的な交渉や政策の細部を練ることは難しくなる。
駐日大使もウィリアム・ハガティ氏の名前は1月初旬に挙がったが、正式な指名まで2カ月以上かかった。政府の倫理管理局に提出する書類作成に手間取っている理由などは、政権の機能不全を露呈しているだけだ。
前出のロス氏は「トランプ政権の包括的なアジア政策ができあがるのはずっと先です」と、財界の成功者は必ずしも政界で実績を残せるわけではないことを示唆する。
政権の将来は前途多難ということである。
堀田佳男 ジャーナリスト
1957年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業、アメリカン大学大学院国際関係課程修了。米情報調査会社などを経て1990年に独立。以来、ワシントンDCを拠点に政治、経済、社会問題など幅広い分野で取材・執筆。25年間の滞米生活を経て2007年帰国。国内外で精力的にジャーナリスト活動を続ける。著書に「大統領はカネで買えるか」「大統領のつくりかた」「エイズ治療薬を発見した男 満屋裕明」など。
http://www.asyura2.com/17/kokusai18/msg/720.html