障がい者に圧倒的給与を実現、北海道芽室町
逆転の発想が成功を導いた就労継続支援A型事業
2017.3.10(金) 石塚 裕介
芽室町の宮西義憲町長
「九神ファームめむろ」 芽室町長の想い
訪れたのはまだまだ寒さの残る2月中頃。北海道の帯広市の西隣に位置する芽室町。その芽室町の市街地から車で10分ほど南下したところに九神ファームめむろ(本社:北海道河西郡芽室町)はある。
この九神ファームめむろでは、知的・精神障がい者の雇用を促進しており、現在は24人の障がい者の方(全従業員数は29人)が働いている。
障がい者の働く場というと、一般の企業で雇用される人もいるが、一般の企業で就労が困難な方と直接雇用契約を結び賃金を支払う「就労継続支援A型事業所」。また、直接雇用契約を結ぶことが困難な方と雇用契約を結ばず利用する「就労継続支援B型事業所」がある。
九神ファームめむろは「A型事業所」にあたるが、このA型事業所の平均給与(工賃)は日本全体で月額6万6412円(平成26年厚生労働省発表)。しかしこちらの九神ファームめむろでは、なんと11万5000円以上(6.5時間勤務/週5日)。
この給与は全国的にもかなり高水準でA型事業所としては平成26年度の厚生労働省のデータで見ると上位5%に入る。
人によるが障害年金を受け取ると、十分に自立した生活が可能だ。なぜこれほどまでに高い給与を支払うことができるのか。
右:芽室町の宮西義憲町長 左:鎌田實先生
九神ファームが事業を始めたのは2013年4月。芽室の宮西義憲町長が障がい者の働きの場の提供を計画したのはさらに遡ること数年。
町長になる以前、教育長をしていた宮西町長は「すべての子供を幸せにしたい。しかし、町として教育で支援ができるのは義務教育の間まで。何らかの事情で不登校の生徒や障がいを持つ生徒がその先どうやって自立して生活できるのか。一番大事なのはその先の働く場。自立可能な収入を得て働くことができる場が必要だ」と考え計画を提案した。
九神ファームめむろ
「役所だけで働く場を提供してしまうと、事業として成り立たないものが出来上がってしまう。そうなると給与(工賃)も低くなってしまう」
「雇用率達成のためだけの雇用ではなく、障がいのある彼らを人手ではなく新しい付加価値を生み出す『人財』として活用し、それにより利益を生み出すことができる企業を作りたい」と考え、企業誘致を行った。
しかし、企業としても利益を見込めない限り誘致は進まない。
そのようななか、障がい者雇用の実績を持つエフピコ(本社 広島県福山市)の特例子会社であるダックス四国(現在はエフピコダックス)(本社 高知県南国市)の障がい者雇用責任者の且田久美氏の取組みを知り、アドバイザーとして任命した。
事業内容は地域の主幹産業である農業に関係することがいいのではという且田氏の提案を受け、エフピコの取引先であるクック・チャム(本社 愛媛県新居浜市)、クックチャムプラスシー(本社 福岡県福岡市博多区)、みらいPlus(本社 高知県高知市)との出会いがあった。
障がい者雇用の実績があるクック・チャムは手作り惣菜専門店「おかずのお店 クック・チャム」を運営しており、北海道十勝地方にある芽室町の「十勝ブランド」の農産物を利用できるというメリットがある。
そのメリットが受け入れられ、3社共同での出資によって「株式会社九神ファームめむろ(資本金1000万円)」の設立が完了し、2013年2月に就労継続支援A型事業所として北海道道知事より認定を受け開所した。
やりたい想いだけではビジネスにはならない
需給能力のイメージ
少し話が逸れるが、今回九神ファームめむろが設立できたことにはわけがあると考える。当然であるがやりたいという想いだけでビジネスは成功しない。
必ず「内的欲求」「内的能力」「外的需要」の3つの需給能力が満たされた時に成功すると筆者は考える。
内的欲求…自分がやりたいこと、企業・自治体がやりたいことなど
内的能力…自分ができること、企業・自治体ができること、持っているアセット
外的需要…外部の人・企業・自治体からの要求
今回のケースを簡易化して考えると、芽室町がやりたいと思っている障がい者雇用の促進(内的欲求)が必ずしも企業がやりたいことと一致しているとは限らない。それは障がい者を行うビジネスは運営や教育のノウハウが無ければ簡単に利益を出すことができないからだ。
そこで町としてできること、アセットは何か?
それは北海道の「十勝」の農産物という大きなブランドである(内的能力)。このブランドを生かし たいと考え(外的需要)、生かすことによってビジネスを成り立たせることができる企業を探したことが成功の要因である。
九神ファーム内工場
与えられる側から与える側へ
工場内では当日はじゃが芋の、皮むき、芽の取り除き、カット、洗浄などを行っていた。そこで働く方々は皆すごく楽しそうな表情をしていた。
皮が残らず、無駄に削りすぎないように、でも誰よりも早く皮をむくということにこだわる人。芽を取り除く作業で芽以外の部分を極力取らないように丁寧に作業をする人。なかには、「以前働いていた職場では楽しくなかったが、ここで働き始めてからは働くことが楽しくて辞めたいと思ったことは一度もない」と言う人もいた。
九神ファームで働く山本雄大さんに話を聞いた。
「ここで働くきっかけは友人が働いていて、その友人が良いところだと言っていたからです。でも今働いているのは、九神ファームには自分のことを理解してくれる人がたくさんいて、相談もできるからです」
そう話をしている最中も、じゃが芋をカットする手は止まらない。
九神ファームで働く山本雄大さん
彼らにとって働く場がなかった時は与えられることが多かった。しかし働き始めてからは与えることができるようになった。
初任給で親にほうきをプレゼントした人がいた。働き始める前はいつも部屋を汚していて、親がほうきで掃除をする姿を見ていて、それで感謝の心をこめてほうきをプレゼント。「親もこんな嬉しいことはないですよね」と宮西町長は言う。
与える楽しさを知った人はますます本気で働く。そして初年度からしっかりと工賃を払ったうえで黒字を達成した。
「これは障がい者の働く気持ちを理解し、そして彼ら一人ひとり自信を持って働くことができる場を提供し、働く人への理解を持ち続けているという企業努力のおかげだ。本当に感謝したい」と宮西町長は言った。
仕事があることの大切さ
一番初めの問いかけに回答したい。なぜこれほどまでに高い給与を支払うことができるのか?
これは決して、芽室町が補助金を出しているからではない。芽室町は就労を希望する障がい者の情報提供や、農地確保の交渉支援などを行っているが、補助金は出してはいない。
就労継続支援A型事業所で給与が安くなる傾向にあるのは、働く時間が短いからである。
A型事業所は決められた時間当たりの最低賃金(北海道は786円)を払う必要があるため、「給与が安い=働く時間が短い=仕事があまりない」という構図が出来上がる場合が多い。
多くのこういった事業は売りたいものを作り、結果として売れないという失敗事例が見られる。しかし、九神ファームめむろでは企業が欲しいものを作るという販路を確保してから事業を検討していくという逆転の発想をしている。
それはクック・チャムに卸すための農産物加工と販売という、販路が確保されているということだ。だからこそ、「仕事がある=働く時間が十分にある=給与をしっかりと払える」という流れで高い給与を支払うことができるのである。
また、これだけを聞くと、仕事があるから給与が高いなんて当たり前だと思われるかもしれない。しかし、クック・チャムもビジネスをしている。そのため、どんな商品でも買うわけではない。
九神ファームめむろでは、衛生管理や品質管理、商品数の拡大という企業努力を常に行っている。商品数の拡大に関しては当初はチルドポテトの加工から始まり、ごぼうサラダの加工、さらには切干大根の加工や、豆の加工など徐々に増やしている。
増やすと聞くと簡単そうだが、設備投資だけではなく教育が必要になる。その障がい者の方々への教育を障がい者のリーダーが行う。切り方であったり、チェックをするポイントであったり。そういった教えることによって、また彼らの自信につながり、働く意欲のさらなる向上につながる。
後悔が紡ぐ次への一歩
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これほどまでに素晴らしい取り組みをされている宮西町長には大きな後悔があるという。
「こんなにも障がい者の方々の笑顔と、あふれる自信を目の前にして、本当にやってきて良かったと思える。しかし、なぜもっと早くに始められなかったのか、なぜもっと早く始めようと思わなかったのか」。そう語る宮西町長の目頭が熱くなる。
最後に宮西町長に次の一歩について聞いてみた。
「九神ファームめむろもまだまだ課題は残るがなんとか形になってきた。しかしこれで終わりではない。こういった取り組みをしっかりと世の中に発信し、他の町での展開に寄与したい」
その想いを胸に芽室町は2017年2月25日に東京・新宿で400人規模の観客に対して、取り組みの紹介や野菜をカットするデモなどを行い大盛況であった。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49349
3月10日の海外株式・債券・為替・商品市場
西前明子
2017年3月11日 06:59 JST
関連ニュース
NY外為(10日):ドルが対ユーロで下落、雇用統計で大幅な伸びなく
米国株(10日):上昇、雇用統計受け順調な利上げ可能との見方
2月の米雇用者数:23万5000人増、予想上回る−賃金の伸び加速
ECB、QE終了前の利上げあり得るかどうかを協議−関係者
欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は 次の通り。
◎NY外為:ドルが対ユーロで下落、雇用統計で大幅な伸びなく
10日のニューヨーク外国為替市場ではドルが対ユーロで下落。2月の米雇用統計が高まっていた期待を上回るほどの内容を示さなかったため、ドル売りが優勢になった。欧州中央銀行(ECB)当局者らが債券購入プログラム終了前の利上げがあり得るかどうかを検討したと、事情に詳しい複数の当局者が明らかにしたことはユーロ買いを誘った。
米労働省が発表した2月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比23万5000人増と、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は20万人増を上回った。平均時給は前年比で2.8%増加した。市場では来週の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25ポイントの利上げが決定するとの見方が強まった。
ニューヨーク時間午後4時10分現在、ドルは対円で前日比0.2%下げて1ドル=114円73銭。ユーロに対しては1.1%下げて1ユーロ=1.0688ドルとなっている。
◎米国株:上昇、雇用統計受け順調な利上げ可能との見方
10日の米株式相場は上昇。2月の雇用統計を受け、金融当局は順調な利上げが可能で、将来ペースの加速を迫られることはないとの見方が広がった。
ニューヨーク時間午後4時過ぎの暫定値では、S&P500種株価指数は前日比0.3%高の2372.60。週間では7週ぶりの下げとなった。ダウ工業株30種平均はこの日44.79ドル(0.2%)上げて20902.98ドル。
米労働省が10日発表した2月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比23万5000人増。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は20万人増だった。前月は23万8000人増(速報値22万7000人増)に修正された。
◎米国債:上昇、雇用統計後も利上げ軌道の見通しは変わらず
10日の米国債相場は上昇。2月の米雇用統計が発表された後も利上げ軌道の見通しはおおむね変わっていない。国債は週間ベースでは下落。
ニューヨーク時間午後3時27分現在、10年債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.58%。ここ2週間の米国債売りは、連邦公開市場委員会(FOMC)が3月15日に利上げを実施するとの観測の高まりが背景。
TDセキュリティーズのストラテジスト、プリヤ・ミスラ氏は「米国債市場には安ど感が広がっている」と指摘。「FOMCは3月の利上げが可能になるが、年内3回利上げというテーマは変わらない」と述べた。
米労働省が発表した2月の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比23万5000人増。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の中央値は20万人増だった。前月は23万8000人増(速報値22万7000人増)に修正された。
◎NY金:9日続落、好調な米雇用統計で利上げ期待に拍車
10日のニューヨーク金先物相場は9営業日続落。2015年7月以来の長期下落局面となった。朝方発表された2月の米雇用統計で労働市場の改善継続が示され、年内の利上げ見通しが一段と強くなった。
オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)のエコノミスト、バーナバス・ガン氏は10日付のリポートで、「差し当たっての問題は、利上げが実施された後の環境だ」と指摘。市場参加者は次の利上げ時期をうかがうことになるが、欧州諸国の選挙を巡る不透明性が強いことやトランプ政権の政策に関する詳細が不足していることを踏まえると、金相場の下落は短命に終わるかもしれないと説明した。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は前日比0.1%安の1オンス=1201.40ドルで終了。週間では2%下げた。
銀先物は下落し、週足でも前週に続き下げた。パラジウム先物は10月以降で最長の4週連続の下落となった。プラチナ先物は2週連続で値下がりした。
原題:Gold’s Dismal Week Has Investors Asking What’s After March Hike(抜粋)
◎NY原油:大幅続落、米在庫増で週間の下げは11月以降で最大
10日のニューヨーク原油先物市場ではウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物が大幅続落。週間での下げは昨年11月以降で最大の9.1%となった。石油輸出国機構(OPEC)加盟国・非加盟国の減産合意から3カ月かけて積み上げた価格上昇は、米在庫の急増で失われた。
USバンクでプライベート・クライエント・グループの地域投資マネジャーを務めるマーク・ワトキンス氏(ユタ州パークシティー在勤)は、「今週発表された在庫の高い数字を、まだ市場は消化しきれていない」と指摘。「この数字がもたらしたショックで市場は50ドル割れを模索し、そして割り込んだ。今後2週間は激しい動きとなり、45ドル水準に下げることもあり得る」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は前日比79セント(1.60%)安い1バレル=48.49ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は82セント(1.6%)下げて51.37ドル。週間では8.1%値下がりした。
原題:Oil Caps Worst Week Since November as U.S. Supply Glut Expands(抜粋)
◎欧州株:上げ幅縮小、ECBがQE終了前の利上げ検討との報道で
10日の欧州株式相場は上げ幅を縮小し、ほぼ変わらずで終了した。欧州中央銀行(ECB)が国債購入プログラムの終了前に利上げか可能かどうかを協議したとの報道があったことが背景にある。
指標のストックス欧州600指数は前日比0.1%高の373.23で終了。週間ベースでは0.5%下げた。
事情に詳しい複数の関係者が明かしたところによれば、ECBは9日の政策委員会で、非伝統的な金融政策の解除に関するコミュニケーションと解除の順序について意見を交換した。
オランダのAEX指数は2007年12月以来の高値で終了。アクゾ・ノーベルは4.7%上昇。米PPGインダストリーズが新たな買収案を提示する準備を進めていると、同国紙フィナンシエール・ダフブラットが匿名のPPG幹部を引用し伝えた。
個別銘柄では、英通信会社BTグループが3.7%値上がり。規制当局の要請に応じ、ネットワーク部門オープンリーチを分離して別会社にすることで合意した。
ストックス600の業種別指数では、石油・ガス指数が上昇率首位。前日まで4日続落していた。
原題:European Stocks Pare Gain on Report That ECB Discussed Rate Rise(抜粋)
EUROPEAN WRAP-Stoxx 600 Steady as ECB Said to Discuss Rate Rise(抜粋)
◎欧州債:ドイツ債が下落−ECBがQE終了前の利上げ協議との報道で
10日の欧州債市場ではドイツ国債が大幅下落。欧州中央銀行(ECB)が債券購入プログラム終了前に利上げが可能かどうかを協議したと伝わり、終盤に下げ幅を拡大した。
ドイツ国債は3日続落。日中の大半は狭いレンジ内での取引だった。5年債が大幅安、利回りは8bp前後上昇。5年債と30年債の利回り格差は6bp強縮小。
スペイン超長期債も売られ、5年債と30年債の利回り格差はスティープ化−発表された国債入札に30年債も含まれていたことが売り材料。
原題:ECB Rate Talk Riles German 5Y; End-of-Day EGB Curves, Spreads(抜粋)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-03-10/OMM1QO6VDKHT01
http://www.asyura2.com/17/hasan120/msg/102.html