米国は北への先制攻撃よりもまず中国を利用するだろう 溝口敦の「斬り込み時評」
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2017年2月20日 溝口敦 ノンフィクション作家、ジャーナリスト 日刊ゲンダイ 文字お越し
守るも攻めるもテロあるのみ(C)AP
米政府筋に情報パイプを持つ知人から電話があった。「北東アジアがだいぶ、きな臭くなった。ことによると、米軍が北朝鮮を先制攻撃するかも」と。
まさかと思う。ちょっとあり得まい。が、知人によれば、次のように事の必然があるという。
「韓国の大統領選は4月末ごろに実施が予測されるが、今の状態で推移すれば親北、反米、反日の大統領が出現する危険がある。これを避けるには金正恩政権を倒し、南への影響力を除くことだ。
他方、トランプ政権ではフリン大統領補佐官の更迭や労働長官指名のパズダー氏が辞退するなど、主要閣僚人事を固めきれない。メディアの離反も手痛く、このままでは政権立ち往生の危険まで出てきた。
国論をまとめるためには戦争が一番だ。まして金正恩は兄の金正男氏を外国で暗殺し、12日には新型ミサイルを発射した。北は直接、米日韓の安全保障を脅かしている」
再度の朝鮮戦争はやはり、とっぴな気がする。が、こう聞くと、ある程度妥当性があるような気もする。知人が続ける。
「が、トランプにとって米国が自ら戦争に乗り出すのは次善の策で、まず中国を動かそうとする。金正恩を誘拐するなり、暗殺するなりして世襲政権の芽を摘め。中国がやらないなら、アメリカが北に特殊部隊を送るよ、と。
中国はアメリカに乗り出されるよりはと、自分でやりたがる。北に影響力を残して、北を自由主義への障壁とし続けたいからだ」
金正恩を除いた後、北の政権をどう変えるのか。少なくとも「先軍政策」を廃止、平和路線を進ませたいのだろう。ところで、なぜ中国はトランプの言い分に従うと言い切れるのか。
「トランプの最終目標は中国だ、と中国が知っているからだ。トランプは米中戦争をやろうとはしない。そうではなく中国共産党の支配だけを潰したい。中国共産党を潰せば台湾、香港、チベットなどは放っておいても、喜んで独立する。
中国人民というか、漢民族に愛国心がないことは歴史が証明している。共産党の支配がなくなれば、あそこはテンデバラバラになり、扱いやすい。南シナ海に軍の施設をつくったところで、そんなものは張り子の虎、航空母艦も同じだ」
つまり守るも攻めるもテロあるのみ。結果、アングロサクソンの支配がまだまだ続く――。トランプなら持ちそうな構想である。