農水省は農協改革アピールをもくろむが…(C)日刊ゲンダイ
税金で農業改革PR 地方紙に全面広告の露骨なアメばらまき
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2017年1月13日 小林佳樹 金融ジャーナリスト。 日刊ゲンダイ 文字お越し
昨年末に大モメの末、農林族議員の猛反発を受け、どうにか穏当な線に落ち着いた農協改革だが、改革の旗を振る農林水産省に諦める気配はない。水面下で虎視眈々と反撃のチャンスをうかがっている。その第1弾として打ち出すとささやかれているのが、今月下旬に政府広報予算を使って全国地方紙に一斉掲載される見通しの意見広告(全面)だ。
政府関係者によれば、「当初の広告原案はあまりに過激な内容であったため一部表現に変更が加わったが、掲載は動かない」という。だが、農協改革は農協自身が自主的に進めると関係者間で合意したばかり、その舌の根も乾かないうちに、議論を蒸し返す農水省に対し疑問の声が上がっている。
■狙いは選挙対策
全農を中心とする農協改革については、昨年11月中旬に政府の規制改革推進会議・農業ワーキング・グループ(WG)が突然、「農協改革に関する意見」を公表し、農業団体、農林族議員はハチの巣をつついたような大騒ぎとなった。WGで議論されていなかった内容が唐突に盛り込まれたためだ。▼全農は1年以内に共同購入の窓口に徹する組織に転換する▼全農も全中と同様に選挙で会長を選出すべき▼農業系統組織の役職員の報酬・給与水準を公表し、農業所得の動向に連動させる▼信用事業を営む地域農協を、3年後をめどに半減させる▼公正取引委員会と農水省が連携して農協利用の強制を徹底的に取り締まる――などの“劇薬”が盛り込まれていた。
その後、農林族議員の猛反対を受け、1年以内とされた改革の期限も白紙に戻され、地域農協を3年で半減させることも見送ることが決まった。しかし、WGの提言を振り付けたとされる農水省幹部は、安倍政権が解散総選挙をにらんで政府広報予算の大盤振る舞いをいいことに、国民の税金で農協改革をアピールすることをもくろんでいる。
「地方紙を使うのは選挙を意識し、自民党の支持基盤である地方に改革を印象付けることが狙いだろう。広告減に悩む地方紙に露骨なアメの提供で、世論を誘導する狙いもある」(野党幹部)ようだ。国民の意思を無視した“改革のための改革”がまかり通ろうとしている。