顔を見分ける能力、脳の部位の大きさが関係か 自閉症などの理解にも役立つ可能性
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研究では、見覚えのある顔を被験者に選ばせる方法で記憶力を検査し、紡錘状回の活動量や組織量と記憶力との間に相関関係があるかどうかが検証されたPhoto: Jesse Gomez and Kalanit Grill-Spector/Vision and Perception Neuroscience Lab
By DANIELA HERNANDEZ
2017 年 1 月 10 日 13:18 JST
人は年を重ねるに連れて社会的な交流の幅が広がる。同時に、顔を見分ける能力の重要性は増す。人の顔を見分ける機能をつかさどる脳の部位は子供の成長に伴って大きくなり、それが認知能力の向上につながっている可能性があることが新たな研究で分かった。
今回の発見により、通常の脳の発達だけでなく、失読症や統合失調症、自閉症、顔が覚えられない相貌失認といった症状の理解にも役立つと神経科学者は指摘する。
神経科学者によると、人間の脳構造の変化が学習をどう促すのか、あるいは学習により脳構造がどう変化するのかという因果関係はまだよく解明されていない。
この研究を率いた米スタンフォード大学の神経科学者、カラニト・グリル・スペクター氏は「顔の認識能力を高める何らかのメカニズムがあってしかるべきだ」とし、「幼少期の(脳に)何が起こっているのかという点で、分からないことが本当に多い。私たちは今ゆっくりとその空白を埋めようとしているところだ」と話す。
研究では5歳から12歳までの子供22人と、20代の25人を対象に、顔の認識に重要な側頭部の紡錘状回と呼ばれる部位の構造と機能が調べられた。研究結果は6日付の米学術誌「サイエンス」に掲載されている。
グリル・スペクター氏の研究チームは脳の画像化技術を使って部位を特定し、その活動を測定した
https://si.wsj.net/public/resources/images/BN-RM756_FACES0_M_20170105132608.jpg
グリル・スペクター氏の研究チームは脳の画像化技術を使って部位を特定し、その活動を測定した。また、特定部位の組織量を推定する量的MRI(磁気共鳴装置)と呼ばれる比較的新しい技術を使い、紡錘状回の「肉付き」状況を測った。
さらに、見覚えのある顔を被験者に選ばせる方法で記憶力を検査し、紡錘状回の活動量や組織量と記憶力との間に相関関係があるかどうかを検証した。
その結果、紡錘状回の組織量が多いほど、人の顔を思い出す能力が高いことが分かった。研究によると、大人は子供より約13%、この部位の組織量が多かった。
この研究には関わっていない南カリフォルニア大学の神経科学者、ポール・トムソン氏は「発達途上にある脳の機能を示す地図が作られ始めているのだろう」とし、「科学者がこれを完成させるまでに多くの年月を要するだろうが、(今回の研究が)良い道しるべになる」と話した。
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http://jp.wsj.com/articles/SB10558161838683014507104582549651219452374