コラム:
円急落の裏側、17年見通し修正は必要か
佐々木融JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長
[東京 19日] - ドル円相場の急騰が止まらない。米大統領選が行われた11月8日を含む週からの6週間、ニューヨーク終値ベースで見ると14.4%も急上昇した。これは1973年の変動相場制移行以来最大の上昇率である。
ドル円急騰の原動力になっているとみられる米10年国債金利は過去6週間で80ベーシスポイント(bp)以上も上昇している。米10年国債金利とドル名目実効レートの相関は9月頃から非常に高くなっており、ドル円の歴史的な急騰は米長期金利急上昇による「ドル高」が一因になっていると言える。
しかし、過去6週間の主要通貨騰落率を見ると、ドルよりもカナダドルの方が強いし、英ポンドもドルと同程度強くなっている。つまり、ドル独歩高ではない。
一方で円は最弱通貨となっており、2番目に弱かったスイスフランに対しても7%以上も下落している。つまり、ドル円の歴史的な急騰には、米金利急上昇を受けた「ドル高」だけでなく、何らかの要因による「円安」も寄与している。
<外債急落が招いた国内勢の円売り戻し>
円独歩安を引き起こした要因は何だろうか。当社は、1)国内投資家による欧米債投資に絡むヘッジのリバランス、2)ベーシックバランスに起因する国内勢の円売りと海外投機筋による円売り、3)日銀のイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)が主な原因になった可能性があると考えている。
まず1番目の要因から見ていこう。今年1月29日の日銀によるマイナス金利導入以降、顕著となった現象は、日本国債のイールドカーブの極端なフラット化と、それを発端とする国内投資家による為替ヘッジ付外債投資の急増だった。
今年2月から10月までの9カ月間で、国内投資家は27.5兆円の外債投資(国際収支ベース)を行ったが、これほどのペースで外債投資が行われたのはデータが利用可能な1996年以来初めてだ(ちなみに、このうち18.9兆円が米債、3.3兆円が仏債に投資されている)。
もっとも、27.5兆円の外債投資のうち、銀行が6.0兆円、生保が13.1兆円となっており、これらのかなりの部分がヘッジ付であったと考えられる。生保が保有するヘッジ付外債は30兆円弱と推計され、これに投信が保有するヘッジ付外債投資も加えれば、もう少し金額は大きくなるだろう。
今年に入ってから急増したヘッジ付外債を保有している国内投資家の一部は、債券価格が急落(金利が急騰)したことによってヘッジのリバランスのために、円を売り戻す必要があったものと考えられる。
簡単に試算してみると、米10年国債価格の11月以降の下落率は6.7%となるため、30兆円の6.7%で2兆円程度の円売りが発生した可能性もある。ヘッジ付外債投資は日本国債投資の代替手段であることを考えると、外債価格急落により発生する大きな為替リスクを許容できず、かなり大規模なヘッジのリバランスが短期間に行われた可能性は否定できない。
<海外投機筋が円ロングを一気に巻き戻しか>
国際収支に反映されるフローのうち、為替取引を伴うとみられる部分を積み上げたものを「ベーシックバランス」と呼んでいる。当社が推計している日本のベーシックバランスに起因する円の需給は、国内投資家による対外証券投資、国内企業による対外直接投資を主因に、円高が進んでいた今年に入ってもネット円売り超だったことを示している。これが円安を引き起こした2つ目の要因となった可能性がある。
つまり、2015年後半から2016年前半に向けての円高の動きの中でも国内投資家・企業による円売りの動きは続いていたが、海外投機筋が大きく円ロングポジションを積み上げていったことで、この国内勢による円売りを吸収していた可能性を示唆している。そして、その海外勢の円ロングポジションが一気に巻き戻されたことで、2016年後半に急激な円安を招来したという図式が考えられる。
海外投機筋のポジションを推計する上でよく参照されるシカゴIMM通貨先物ポジションは、上記の仮説を裏付ける動きを見せている。IMMの円ポジションは今年に入ってから一貫してロングだったが、米大統領選後は急激にロングが縮小、11月末時点でほぼフラットとなっている。
さらに12月に入ってからは急激に円ショートが積み上がっていることも示唆しており、9月27日から12月13日までの11週間のポジション変化幅(円ロングから円ショートへ)は、データが利用可能な1992年以降で最大となっている。
<ドル安予想修正にはトランプ政策の見極めが必要>
円安を引き起こしたと考えられる3つ目の要因は、日銀が9月21日に導入したイールドカーブ・コントロール政策である。
欧米の長期金利は9月頃からすでに緩やかな上昇基調に入っていた。9月21日以降の主要国10年国債金利の変動幅と通貨の動きを比較すると、明らかに欧米金利の上昇幅に比べて、日本の金利の上昇幅が小さく、日本と各国の長期金利差拡大が円安を引き起こしている図式となっている。
また、10年物日本国債金利の同米国債金利に対するベータ(言うなれば感応度)は、2013年5月以降に米量的緩和縮小観測で米長期金利が急上昇したときには0.9(米国債1bp上昇に対して日本国債0.9bp上昇)だったが、今年11月8日の米大統領選後は0.24となっている。さらに、今年1年間の動きを見ると、9月21日以前のベータが0.53だったのに対し、9月21日以降は0.15となっており、明らかにイールドカーブ・コントロールの効果でベータが下がっていることが分かる。
筆者の2017年末時点のドル円レート予想は99円である。2016年前半の動き(121円から99円まで急落)を見れば、あり得ない予想ではないが、過去6週間の円安の動きは明らかに予想外であり、蓋然性が低くなっていることは事実である。
もっとも、筆者が2017年のドル安・円高を予想するのは、欧米の政治リスク、特に米国が保護主義姿勢を強めることによるドル安を予想しているからだ。したがって、来年末時点の予想修正のためには、実際にドナルド・トランプ氏が米大統領に就任してからの動きを見極めたいと考えている。
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。
(編集:麻生祐司)
*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。
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Business | 2016年 12月 20日 17:33 JST
長期金利目標の引き上げ、時期尚早=黒田日銀総裁
12月20日、日銀の黒田東彦総裁は記者会見で、ゼロ%程度としている長期金利目標の引き上げを議論するのは時期尚早と指摘した。写真は都内で11月撮影(2016年 ロイター/Kim Kyung Hoon)
[東京 20日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は20日の記者会見で、ゼロ%程度としている長期金利目標の引き上げを議論するのは時期尚早と指摘した。もっとも、トランプ相場の円安による物価への影響を「来年1月の次会合で議論する」としており、物価見通しを引き上げる可能性を示唆した。
また、2018年4月の「任期までに出口が議論になる可能性はある」とも述べた。急激な円安と金利上昇で金融政策は従来の追加緩和から緩和縮小など引き締め方向の政策変更に移りつつある。
日銀は今年9月、金融緩和の柱を従来の資金供給量(マネタリーベース)の「量」から「金利」にシフトし、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部をマイナス0.1%、長期金利(10年債利回り)をゼロ%程度とする金利目標を導入した。トランプ相場による米国の長期金利上昇につられる格好で国内の金利上昇圧力も高まっており、債券市場では日銀が来年中にも長期金利目標を引き上げるとの観測が高まっている。
黒田総裁は、金利目標は「毎回の決定会合で議論される」と述べ、永久に固定はしないとの原則を強調しつつ、「2%目標への距離はまだ遠く、具体的に議論するのは時期尚早」と反論した。
もっとも、日銀の声明文は、物価が2%を超えるまで国債買い入れ残高が減らないようにすると明記する一方、2%を超えるまで金利目標も変更しないとは明記しておらず、解釈の余地を残している。総裁はこの点について「2%目標達成への(物価の)モメンタム(勢い)維持に最も適切なイールドカーブ形成を促すために行っている」と説明。現実の物価が2%に到達せずとも、物価上昇の勢いに応じ、適正な金利水準が上方シフトするならば長期金利目標を引き上げる姿勢を示唆した。
<任期中、出口議論の可能性も>
日銀は前回10月31日━11月1日の決定会合で2%目標の達成時期を2018年度に延期し、18年4月までの総裁任期中は達成を断念したと解釈された。今回は任期までに「具体的な出口論が出るか否かについても今から申し上げられない。議論になる可能性もあるし、そうでないかもしれない」と含みを持たせた。
米大統領選後の円安について「円安は輸入物価を通じて物価押し上げに作用する」と指摘した。わずか1カ月強で10%程度の急激な円安が進んだが、現時点で「円安が行き過ぎて問題になるとの見通しは持っていない」という。日銀が公表している試算によると、10%の急激な為替変動は1年半程度で0.45ポイント程度物価に影響を与える。今回の円安の影響については、展望リポートで経済・物価見通しを示す来年1月末の「次回会合で議論する」という。
(竹本能文、伊藤純夫)
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http://jp.reuters.com/article/kuroda-boj-idJPKBN1490SN
日銀:金融政策を据え置き、金利引き上げ議論は「尚早」と黒田総裁
日高正裕、藤岡徹
2016年12月20日 11:59 JST更新日時 2016年12月20日 17:29 JST
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg
• 円安は2月と同じで驚く水準ではない、弊害は見通せず−総裁
• 景気判断を上方修正、「緩やかな回復基調を続けている」−日銀
日本銀行は金融政策決定会合で、9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を決定した。11月の米大統領選以降、長期金利が上昇、為替相場も円安に振れているが、黒田東彦総裁は記者会見で長短金利の操作目標引き上げを議論するのは時期尚早だと述べた。
黒田総裁は会見で、2%物価目標の達成は「まだまだ遠い」と述べ、長期金利と短期金利の操作目標の引き上げについて「具体的に議論するのは時期尚早かなというふうに思っている」と言明。今は目標達成に向けたイールドカーブ形成を促すため強力な金融緩和を推進していくことが最も適切だと語った。18年4月までの総裁任期中に現在の金融緩和の出口が議論になる可能性についてはあるともないとも明言しなかった。
黒田総裁は、現在の円相場について「円安と言うよりもドル高」だと指摘、金融政策の違いは何らかの影響を為替に与えるが、「今の時点で、何か円安が行き過ぎて問題になる、そういった見通しは持っていない」と述べた。同時に現在の水準は2月ごろと同じであり「別に驚くような水準とも思っていない」とも語った。総裁発言を受けて円は下落し、日本時間午後4時半すぎでは1ドル=117円90銭台で取引されている。
同日の決定会合で、長期金利(10年物国債金利)を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いたほか、長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)のめどである「約80兆円」も維持した。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針も据え置いた。
日銀本店
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
前会合に続き、木内登英、佐藤健裕両審議委員が長短金利操作等の金融調節方針に反対した。ブルームバーグがエコノミスト39人を対象に6−12日に実施した調査では、全員が現状維持を予想していた。円安の進行とともに追加緩和期待は大きく後退しており、黒田東彦総裁の任期の2018年4月まで追加緩和はないとの見方が25人(64%)と多数を占めた。
またブルームバーグ調査では、黒田総裁の任期中はマイナス0.1%の短期政策金利の引き上げはないとの予想が9割と圧倒的多数だった一方で、長期金利目標については26%が引き上げを予想した。
景気判断
日銀は発表文で、足元の景気について「緩やかな回復基調を続けている」として判断を上方修正した。従来の「新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられる」との表現は削除。輸出は「持ち直している」、個人消費は「底堅く推移している」、鉱工業生産は「持ち直している」として、いずれも判断を引き上げた。
大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストは「景気判断は幅広くいろいろなところで上方修正になっている」としながらも、「一番大事なのは実際に物価指数が上向き、それによってインフレ期待に働き掛けることだ。そうなるには時間がまだかかるだろう」としている。
黒田総裁は会見で、不動産市場について現時点で過熱はないが金融機関にはリスク管理を促したいと述べた。またETFの買い入れついては物価目標早期実現に必要な施策として、株価の動きによって買い入れペースが左右されるものではないとの考えを示した。
企業短期経済観測調査(短観、12月調査)は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が昨年6月調査以来6期ぶりに改善。同調査の「企業の物価見通し」では、1年後の上昇率の平均値が14年3月の統計開始後、初めて前回調査を上回った。
信州大学の真壁昭夫経済学部教授はブルームバーグ調査で、新たな枠組みの導入によって、「日銀は金融政策の持続性を確保した」と指摘。「足元では米金利上昇を受けて国内金利にも上昇圧力がかかっているが、市場は安定を保っている。米国の財政・金融政策の不透明感はあるものの、当面、日銀は現状を維持するだろう」とみている。
長期金利引き上げ予想
米大統領選でのトランプ氏勝利以降、大規模な財政出動への期待から米長期金利が急上昇しており、国内の長期金利にも上昇圧力が加わっている。急激な金利上昇を抑えるため、日銀は11月17日、中期ゾーンで指定した利回りで国債を金額無制限で買い入れる指し値オペを初めて通知。14日には超長期ゾーンの国債買い入れ額を増額した。
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/ijehPzRwOblY/v3/-1x-1.png
一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)は14日、フェデラルファンド (FF)金利の誘導目標を引き上げることを決定。さらに来年3回の利上げを見込んでいることが示され、ドル高円安も加速している。
過度の円安なら国民の反発も
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストはブルームバーグ調査で、「14年終盤には、ドル円レートが120円に近づいたころから国内で反発が起き始めた」ことから、「いずれ過度な円安の進展に対し政治的反発が強まる、という事態に直面する可能性が高い」と指摘する。
河野氏はその上で、「円安が進むにつれ、来年後半には10年金利の許容範囲の上限と市場が解釈する0.1%を多少超えることを日銀が容認する」と予想。16日付のリポートでは、リスクシナリオとして来年前半あるいは早ければ1月末の展望リポートの公表に合わせて長期金利の誘導目標を引き上げる可能性にも言及した。
一方、シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは同調査で、「安易に長期金利目標を引き上げれば、日銀の金利目標へのコミットメントに対する信認の低下を通じて、イールドカーブ・コントロールが一段と困難になることが避けられないだろう」と指摘。現在の目標を「当面、維持する選択肢しかないように思われる」としている。
決定会合の「主な意見」は29日、「議事要旨」は来年2月3日に公表する。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-20/OI9NUF6K50XU01
焦点:金融庁が強調する手数料開示、増える銀行負担 差別化必要に
[東京 20日 ロイター] - 金融庁が20日にまとめた業務運営に関する諸原則の報告書では、手数料の開示などを金融機関に求めた。顧客の利便性を重視した結果だが、金融機関の負担が増加して収益を圧迫する要因になると専門家は指摘する。高い手数料を取っても収益が稼げる差別化した商品の開発力が、金融機関の収益格差を生み出す可能性が出てきた。
同庁の「市場ワーキング・グループ」(座長=神田秀樹・学習院大学大学院法務研究科教授)がまとめた報告書では、7つの原則が明記された。
その中で同庁が最も重視したのが、金融商品手数料の明確化だ。一部の銀行は、今回の報告書を先取りする形で手数料の見直しに着手している。
どうして手数料の明確化に焦点が当たっているのか──。同庁によると、国内の売れ筋上位5本の投資信託の販売手数料は平均3.20%。これに対し、米国は0.59%に過ぎない(2016年3月末時点)。
また、銀行窓口で販売されている複雑な商品設計の外貨建て一時払い保険は、他の金融商品より手数料が高く、2015年度は主要行・地銀の計21行平均で7%に迫った。
金融庁幹部は「十分な説明がないまま、顧客は不当に高い手数料を支払わされているのではないか」と語る。
今回の報告書では「名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用の詳細」について、顧客に示すよう要請。手数料を開示する商品を具体的に限定することはせず、金融機関が提供するすべての金融商品について、手数料を開示すべきとした。
<開示できるものは開示>
報告書の取りまとめを受け、ある銀行では、近く特命委員会を立ち上げ、諸原則にどのように取り組むのかについて議論を始める。
その銀行関係者は「これまでも顧客のために業務に当たってきた。しかし、顧客に疑問を持たれているのならば、顧客に分かるかたちで取り組みを示さなければならない」と語った。
りそな銀行は今年10月から、金融商品の手数料の見直しに着手。来年4月から新たな手数料での商品販売を開始する方針だ。
コンシューマービジネス部の吉岡史博グループリーダーは「これまでは相場観やライバル他社の動向を見て手数料を決めていた」と話す。金融商品の手数料が、販売の対価として顧客に説明がつくのかという観点に立って検討し、「開示できるものは開示していく」という。
<銀行には二重の負担>
ただ、手数料の開示は、銀行に新たな負担や課題を投げかける。マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストは、手数料に引き下げ圧力がかかることに加え、開示事項について、顧客に丁寧に説明する必要が出てくると指摘。「銀行への負担がより大きくなるのは避けられない」と述べる。
また、銀行の窓口で販売された公募投信の純資産残高は、2015年末には30兆円を超えていたが、2016年は頭打ちの状況が続く。
マネックス証券の大槻氏は、投信販売が伸びていないのは、市況の悪化だけではなく、販売担当者の説明力不足も一因だと指摘。手数料の開示は「投信の個人顧客への浸透のために重要なステップだ」とみている。
一方で「個人向け運用商品のコンセプトには、それほど大きな差がない」(銀行関係者)ため、同じ商品内容であれば、安い手数料の運用商品に顧客が流れる。「独自のサービスを付加するなど、高い手数料でも顧客の理解が得られるような工夫が不可欠だ」(同)との声も出てきた。
手数料の開示という「刺激」が、運用商品の差別化を促す力になれば、頭打ちの投信販売の現状に一石を投じる可能性もありそうだ。
(和田崇彦 編集:田巻一彦)
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顧客本位確立へ金融商品の手数料など開示を、金融庁部会が報告書
http://jp.reuters.com/article/fsa-bank-idJPKBN1490NU
日本株1年ぶり高値を更新、内外景気期待強い−日銀会合後に切り返す
鷺池秀樹
2016年12月20日 08:06 JST 更新日時 2016年12月20日 15:47 JST
陸運や不動産、通信など内需セクター中心買われる
日本銀行は景気判断を上方修正、政策は現状維持
https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iOPFAdfK5fds/v2/-1x-1.png
20日の東京株式相場は反発し、主要株価指数は約1年ぶりの高値を更新。内外景気の改善期待が強い中、日本銀行が金融政策決定会合の発表文で景気判断を上方修正し、午後の取引で上昇が明確となった。陸運や不動産、情報・通信、小売株など内需セクターが高い。
TOPIXの終値は前日比3.30ポイント(0.2%)高の1552.36、日経平均株価は102円93銭(0.5%)高の1万9494円53銭。TOPIXは昨年12月17日以来、日経平均は同7日以来の高値。
明治安田アセットマネジメントの杉山修司チーフ・ストラテジストは、「日銀の景気判断上方修正で材料出尽くしとなり、ドル・円や日経平均は下落すると予想していたが、実際にはドルも日経平均も上昇し、想定以上に基調は強い」と指摘。背景には米国の景気回復に対する確信があり、「米国発の世界景気拡大という投資家の楽観論が相場上昇の息を長くする」とも話した。
日銀は19、20日の日程で開いた政策決定会合の結果をきょう正午前に公表。現在の量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針を維持した半面、足元の景気については「緩やかな回復基調を続けている」とし、判断を上方修正した。これを受け、ドル・円は1ドル=117円70銭台まで円安方向に戻し、日本株が切り返す一因になった。午前には一時116円90銭台まで円が強含む場面があった。
米経済の先行きも楽観視されている。連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は19日、ボルティモア大学を卒業する学生に向けスピーチし、「労働市場はここ10年近くで最も力強い状況になりつつある」「賃金上昇の加速を示す兆候もみられる」などと指摘した。同日の米S&P500種株価指数は0.2%高と小幅ながら反発した。
きょうの日本株は、午後に日経平均が1万9500円台まで上昇したとはいえ、午前はマイナスで推移する時間帯が長かった。海外で不穏な動きが相次いでおり、年末にかけてのリスク要因になりつつある。前週の中国による米無人潜水機奪取事件に続き、19日にはロシアの駐トルコ大使がアンカラで銃撃され死亡、ドイツのベルリンではトラックがクリスマスマーケットに突っ込み、多数の死傷者が出た。
東証1部の売買高は19億2972万株、売買代金は2兆3389億円。代金は前日より9.1%増えた。上昇銘柄数は1230、下落は626。東証1部33業種は陸運や不動産、精密機器、情報・通信、小売、医薬品、建設など19業種が上昇。鉱業や保険、銀行、石油・石炭製品、パルプ・紙、証券・商品先物取引など14業種は下落。銀行など金融セクターは、前日の米国債利回りが低下し、収益改善期待が後退した。
売買代金上位では、ソフトバンクグループやアサヒグループホールディングスが上げ、海外大手パネルメーカーから大口受注があったブイ・テクノロジーは急伸。みずほ証券がスマートフォンゲーム「スーパーマリオラン」の出足は悪くないとし、強気の投資判断を継続した任天堂も高い。半面、第一生命ホールディングスや東京電力ホールディングス、アナリストが投資判断を下げたヤマハ発動機やSUMCOは売られた。東京証券取引所が特設注意市場銘柄の指定を継続した東芝も安い。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-19/OIGF356KLVRL01
きょうの国内市況(12月20日):株式、債券、為替市場
Bloomberg News
2016年12月20日 16:36 JST
●債券上昇、好需給や日銀政策据え置きで買い安心−黒田総裁発言見極め
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
債券相場は超長期ゾーンを中心に上昇。年内の主要な国債入札が一巡して需給環境の良さを背景に買いが先行した。一部で長期金利の操作目標水準が引き上げられるとの懸念が出ていたが、日銀が金融政策の現状維持を決めたことで買い安心感が広がったとの見方も出ていた。
長期国債先物市場で中心限月3月物は、前日比4銭高の149円64銭で取引開始。日銀会合結果を受けて、午後は水準を切り上げて寄り付き、一時149円83銭まで上昇。結局13銭高の149円73銭で引けた。
岡三証券の鈴木誠債券シニアストラテジストは、午後に相場が堅調となったことについて、「日銀決定会合の結果は予想通りで、海外市場の流れを引き継いだ買い戻しの動きが全般に強まっている。積極的に動くというよりは、これまでの流れでたまっていたものが買い戻されている」と説明。「黒田総裁会見で驚きの発言がなければ、債券相場は戻り基調」だと述べた。
日銀は金融政策決定会合で、9月に導入した長短金利操作付き量的・質的金融緩和の枠組みによる金融調節方針の維持を決定した。長期金利を「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)を「マイナス0.1%」といずれも据え置いた。ブルームバーグがエコノミスト39人を対象に実施した調査によると、全員が政策の現状維持を予想した。
現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の345回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より0.5ベーシスポイント(bp)低い0.07%で開始。一時0.06%と14日以来の水準に下げたが、その後は0.07%で推移した。
超長期債が堅調。新発20年物の159回債利回りは2bp低い0.57%まで低下し、新発30年物の53回債利回りは2.5bp低い0.67%を付けた。
●ドル・円が上昇、日銀政策据え置きや黒田総裁発言で−一時118円接近
(記事全文はこちらをクリックしてご覧下さい)
東京外国為替市場ではドル・円相場が上昇し、1ドル=118円台に接近する場面があった。日本銀行が金融政策の現状維持を決めたことや黒田東彦総裁の為替をめぐる発言を背景に、ドル買い・円売りが優勢となった。
午後4時半現在のドル・円は前日比0.7%高の1ドル=117円89銭。朝方に付けた116円99銭から、日銀の金融政策の発表後に117円台後半に水準を切り上げ、黒田総裁が現行の円安水準を容認する姿勢を示すと一時117円96銭までドル高・円安が進んだ。
三菱UFJ信託銀行資金為替部為替市場課の一口義仁課長は、「ドル・円は日銀によるイールドカーブコントロールの部分に変更がなかったことで、日米金利差拡大への期待が相場を押し上げている」と説明し、「基本的に、トランプ新政権に対する期待がリードしている相場で、確かに上昇ペースは速いが、妨げるものがないうちは上昇が続きやすい」と述べた。
またFXプライムbyGMOの柳沢浩チーフアナリストは、「一部で日銀が長期金利目標をほぼゼロ%から引き上げるとの観測があったようで、それを背景にドル・円をショートにしていた。それが裏切られたので、ショートカバーが入ったのだろう」と分析した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-12-20/OIH0X46JIJV101
豪中銀、景気に慎重ながら楽観的 政策のバランス重視=議事要旨
[シドニー 20日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行)は20日、12月の理事会の議事要旨を公表した。第3・四半期の国内総生産(GDP)がマイナス成長となったものの、景気見通しは慎重ながらも楽観的と表明し、当面は利下げを見送る構えを示した。
中銀は12月の理事会で政策金利を4カ月連続で過去最低の1.5%に据え置いた。
議事要旨は緩和政策がもたらす効果と、既に高水準にある個人の借り入れを助長するリスクについて「バランスを引き続き検討する必要があると認識している」とした。
議事要旨によると、理事会のメンバーは労働市場の状況について時間をかけて協議した。
「理事会メンバーは労働市場で当面緩みが残ると指摘した。これは労働コスト圧力の抑制を示す複数の兆候と整合的だ」とした。
その上で「これはインフレ率がより正常な水準に戻るまで、しばらくは低水準にとどまることを示唆している」と分析した。
基調的なインフレ率は1.5%となっており、この先1─2年は中銀が目標とする2─3%を下回る公算が大きい。第3・四半期のGDPは伸びが2011年以来のマイナスとなり、中銀は成長見通しを引き下げを余儀なくされるとみられる。
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