アメリカのAIIB加盟は近い?
アメリカのAIIB加盟は近い?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161201-00010001-moneypost-bus_all
マネーポストWEB 12/1(木) 16:30配信
トランプ新体制の下でアメリカはアジアインフラ設備投資銀行(AIIB)に加盟する可能性がある。中国本土、香港の複数のマスコミが関連記事を掲載している。
たとえば、聯合早報網訊は11月15日、「AIIBの金立群総裁は人民日報において、“トランプ氏の幕僚チームにおける多くの人々が、オバマ大統領がAIIBに加盟したがらなかったのは間違いであると認識している。また、オバマ政権のある高官はAIIBに賛同していると聞いている。アメリカ政府が今後AIIBを支持したり、AIIBに加盟する意思を示したりする可能性を排除することはできない”などと発言した」と報じている。
トランプ氏の側近で安全保障担当の上級顧問であるジェームズ・ウールジー元CIA長官が金立群総裁と会見したときにアメリカがAIIBに加盟しなかったのは戦略的な誤りだと発言しており(11月11日のサウスチャイナ・モーニングポストなど)、その内容を交え、金総裁はこのような発言をしたのであろう。
AIIBは、主に「一帯一路」戦略を金融面から支えるために中国が主導して設立された銀行である。一帯一路戦略とは、シルクロード経済ベルト(一帯)と21世紀海上シルクロード(一路)の2本のシルクロードを中国が関連各国と協力し、発展させる戦略である。
前者は、西安、新疆から中央アジアを経て地中海に至る陸路である。そこに交通網、物流網、通信網、エネルギー供給網を発展させるとともに、合弁事業を促進すべく要所に重点経済貿易産業園区を作る計画である。
後者は、中国海岸線からASEAN諸国、インド、スリランカ、ケニアを経てギリシャに至る海路である。そこで主要港湾を整備し、物流網を発展させる計画である。
中国には世界最大クラスの金融機関、建設・エンジニアリング企業がある。関連国の中で中国は圧倒的に経済力が強い。大開発で多くの投資を行い、多くの工事を行い、多くの利益を得るのは中国企業である。また、AIIBに出資する欧州各国も投資の恩恵にあずかることができるだろう。
アメリカにはもはやこの地域の大開発を主導できるだけの覇権も、経済力もない。ならば、それを潰しにかかるのではなく、それに乗っかった方がアメリカの利益につながる。
トランプ氏は不動産事業で財を成した優秀なビジネスマンである。自国や自国企業の利益を優先させるのであれば、加盟する日は近いだろう。
トランプ氏は、インフラ投資を拡大すると明言しているが、減税を行い、軍事費を拡大する中で、財政資金の不足はさらに深刻となるだろう。民間の資金を大量に導入する以外に方法はない。
社会主義国家として、政府が主導して経済を発展させる方法を絶えず模索し続けている中国は、財政政策に関してはある意味、進んだシステムを有している。中国のやり方は参考になるはずだ。
アメリカがAIIBに加盟する一方で、アメリカは新しくAIIB同様の国際的な開発銀行を設立し、そこに各国から資金を出資させるシナリオもあるだろう。その新しい開発銀行の融資を核に、さらに民間から資金を引き出し、官民連携(PPP)で投資を行う。
米中の貿易摩擦は激化するだろうが、それは一面である。アメリカにとって、米中関係は世界で最も重要な関係であり、良好な米中関係は両国の国益にもかなう。
日本に関して言えば、TPPではアメリカに梯子を外された。これでアメリカがAIIBに参加するようなことになれば、日本が考える中国包囲網は完全に崩壊する。日本の対中政策について、再検討すべき時期に差し掛かっている。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」、メルマガ「週刊中国株投資戦略レポート」も展開中。