新築ばかりがいいというわけではない。賢い買い方はある(写真はイメージです)
鉄筋コンクリ造の寿命は100年 人気エリアの中古物件リフォームが賢い選択
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20161021/ecn1610211741008-n1.htm
2016.10.23 本当は教えたくないマンション業界の秘密 榊淳司 夕刊フジ
「マンションには何年住めるのか」
これはよくいただくご質問である。日本に鉄筋コンクリート造の分譲マンションが誕生して約60年。第1号物件と言われる「四谷コーポラス」は、築60年にして現役である。
一方で、築30年程度のマンションが建て替えられていたりもする。築40年以上の物件も多くなってきた。この国は人もマンションも確実に高齢化している。
実のところ、「鉄筋コンクリート造」の建物にどれくらいの耐久性があるのかよく分かっていない。この工法自体の歴史が実質的に100年に満たないからだ。言ってみれば、人類はこの鉄筋コンクリート造の建物にどれくらいの耐久性があるのか、壮大な実験をしている真っ最中なのだ。
1つ言えることは、ヨーロッパによくあるような石造りやレンガ造りの建物に比べれば、耐用年数は確実に短い。その理由は、コンクリートの中に入っている鉄である。鉄はいつかは必ず腐食する。腐食すれば膨張して、覆っているコンクリートを破裂させる。
現に、鉄筋コンクリート造の建物で、外壁や躯体のひび割れを放置し、雨水を内部まで浸食させてしまうと腐食が早まる。しかし、ひび割れを丁寧に埋めておけば腐食の進度を遅らせることもできる。
私の勝手な考えだが、メンテナンスをきちんと行っているマンションは、100年程度は普通に住める耐久性能があると思う。もちろん、配管や配線、エレベーターなどの設備などは、その間に何度か交換しなければならない。しかし、鉄筋コンクリートの躯体自体は100年の耐用性がありそうだ。
よく「このマンションは築30年ですが、10年後に築40年になっても売れるでしょうか」という類の質問を受ける。
資産価値は、その9割が立地で決まる。誰もが住みたくなる場所にあるマンションなら、築40年でも50年でも資産価値はある。100年の耐久性があると考えれば、まだ半分も終わっていない。
ただ、多くの人が住みたいと思わない場所のマンションなら、築10年でも資産価値が大幅に下がる。あるいは、誰も買ってくれなければゼロ以下になるかもしれない。
最も上手な買い方は、人気エリアにある築古の物件をリフォーム前の状態で安く購入すること。そして、自分の好きなようにリノベーションして、お気に入りの住まいへと変えてしまう。きっと快適に暮らせるはずだ。
一般に考えられているほどリノベーションの費用は高くはない。ぜいたくをしなければ水回りから壁、床、天井をすべてやり変えても300万円から400万円。よほどぜいたくしないと1000万円にはならない。
日本人は新しい物好きだが、欧米人は古いものを尊ぶ。これからの時代、住まいは新築にこだわるのではなく、大量に余っている中古のストックを上手に活用して、安くて快適な住宅を手に入れることを考えるべきではなかろうか。
■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンション格差」(講談社現代新書)など多数。