爆発したギャラクシーノート7(C)AP
発火スマホ生産中止 “サムスン・ショック”日本企業に延焼
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/191825
2016年10月15日 日刊ゲンダイ
生産・販売が中止された最新型スマホ「ギャラクシーノート7」の回収を12日から開始した韓国サムスン電子。リコール費用だけで、少なくとも3兆ウォン(2800億円)に上るとみられるが、サムスン・ショックはまだまだ長引きそうだ。
米紙NYタイムズによると、サムスンは数百人規模の調査チームを編成したが、現時点でバッテリー発火の原因究明には至っていないという。原因が究明されない限り、新製品の発売は難しい。営業利益の5割をスマホが占めるサムスンにとっては大打撃で、2016年7〜9月期の連結営業利益を前年同期比29%減の5.2兆ウォン(4800億円)に下方修正した。
「バッテリーだけが問題でないことはもはや明らかで、設計に問題があるとみられています。ライバルのiPhone7の先を越そうと、ノート7は最新技術を詰め込みすぎた、安全性より仕事のスピードを重視したと、社内でも批判が起きています。速度第一主義でスマホの世界シェア首位に上り詰めたサムスンですが、そのシェアも3割から2割と右肩下がり。業績にかげりが出てきたせいで、昨年、研究開発の費用や人員を削っています。そうした構造的な問題もあるともっぱらですね」(経済ジャーナリスト・岩波拓哉氏)
根っこは深そうで、一朝一夕には片づきそうもない。株式評論家の倉多慎之助氏もこう言う。
「創業者の後を継いだ子や孫が創業者を越えようと功を焦り、強引な経営を推し進めるというのはよくある話で、エアバッグ問題のタカタがまさにそうです。2代目会長が率いるサムスンもしかり。ワンマン体制が問題を長引かせるというのもよくある話で、サムスン・ショックも“第2のタカタ事件”になる恐れがあります」
いずれにせよ、日本の関連企業も“無傷”では済まなそうだ。
「ノート7搭載のバッテリーは、サムスンSDIと、TDKの香港子会社が供給していた。また、東レなどの化学メーカーが、バッテリー部品のセパレーター(絶縁材)をサムスンSDIに供給していたようです。ノート7の生産打ち切りで、短期的な業績悪化は避けられません。関連部品メーカーの今年度の営業利益は、10〜15%減という予想も出ています」(電機業界関係者)
サムスンが落ちれば、他社が伸びる。スマホ全体の需要は変わらないので、日本のメーカーの損失は短期で取り戻せるという見方もあるが、とんだトバッチリか。