夢のままで終わりそうな“夢の高速炉”もんじゅ。しかし、この利権に食らいつこうとする連中がまだうごめている…
『もんじゅ』廃炉でも核燃料サイクルは維持…利権が文科省から経産省へ移るだけ!
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161012-00073413-playboyz-pol
週プレNEWS 10月12日(水)6時0分配信
先月、政府は高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉に向けて動きだすことを決めた。無尽蔵にエネルギーをつくり出せる“夢の高速炉”は、夢のまま終わりそうだ。
しかし、この利権にまだ食らいつこうとする連中が、霞が関、永田町、財界にはうごめいている! そんな諦めが悪い姿を全部暴く!
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高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉になる。
菅義偉官房長官や茂木敏充自民党政調会長ら、政府与党の幹部が相次いで「抜本的見直しの必要性」に言及、年内をメドに「もんじゅ」廃炉の基本方針が打ち出されることになりそうなのだ。
原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再び核燃料として利用する。これを「核燃料サイクル」と呼ぶ。
「もんじゅ」はその要となる施設で、使用した以上のプルトニウムを得られることから、“夢の高速炉”と呼ばれてきた。
しかし、ナトリウム漏れなどの事故が相次ぎ、初臨界に達した1994年からの22年間で、運転できたのは250日間だけ。「もんじゅ」にはこれまでに1兆2千億円の国費が投入されている上に、年間200億円の維持費もかかる。まさに役立たずの金食い虫だ。これでは廃炉は当然だろう。
この動きに「もんじゅ」の立地する福井県敦賀市は上を下への大騒ぎとなっている。立地自治体にとって「もんじゅ」は巨額の交付金などをもたらす打ち出の小づち。その大切な金ヅルがなくなってしまうのだ。敦賀市内のホテル業者がこう悲鳴を上げる。
「夏の海水浴客を除けば、宿泊客は電力会社や原子炉メーカーの社員など原発関係者がメイン。ただ、3・11以降は市内の原発が稼働停止となり、その原発関係者の姿もめっきり少なくなっていた。そこに『もんじゅ』が廃炉となれば、『もんじゅ』関連客も泊まらなくなってしまう。今後も経営を続けることができるのか、心配でなりません」
9月28日に国に意見書を提出した敦賀市議会の田中和義市議もこう憤る。
「(廃炉は)寝耳に水。弁当屋から飲食店、ホテル、タクシー業界にまで打撃を与える話で、地元では『仕事がなくなる』という不安が広がっています」
とはいえ、不安におののいているのは立地自治体のみ。最も大きな影響を受けるであろう原子力ムラは、意外にも「もんじゅ」廃炉のニュースに涼しい顔なのだ。
一体、なぜ? 元経産官僚の古賀茂明氏が答える。
「原子力ムラが余裕なのは、『もんじゅ』を廃炉にするだけで、原発政策の根幹である核燃料サイクルが変更されるわけではないとわかっているからです。これさえ維持できれば、原発が止まることはありませんから」
核燃料サイクルに詳しい原子力資料情報室の澤井正子氏がこう補足説明する。
「高速増殖炉の『もんじゅ』は22年間、使用済み燃料を再処理する青森県六ヶ所村の再処理工場も20年間動いていません。核燃料サイクルはとっくに破綻し、“フィクション”になっています。それでも国や原子力ムラが核燃料サイクルを放棄しないのは、原発から出る使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物などの『核のゴミ』が行き場を失い、原発の運転がストップする事態を防ぐためなのです」
六ヶ所村の再処理工場は全国の原発から出る使用済み核燃料を受け入れている。その総量は約2800t。受け入れ量の上限は3千tなので、あと200t足らずで満杯になる計算だ。それでも青森県や六ヶ所村が受け入れを拒まないのは、持ち込まれた使用済み燃料は再処理して県外に持ち出され、「もんじゅ」や全国の原発で再び燃料として使用するという核燃料サイクルがあるからだ。
「再処理が放棄されれば、使用済み核燃料は六ヶ所村にとどまることになる。当然、青森県は『約束が違う』と、使用済み燃料の撤去を要求することになるでしょう。そうなれば、電力会社は管内の原発に持ち帰るほかないが、施設内の保管プールもすでに容量の8割が使用済み燃料でいっぱいの状態。そのため、電力会社はこれ以上使用済み核燃料が増えないよう、原発を停止するしかない。
逆に言えば、技術的に完成していなくても、核燃料サイクルというフィクションさえ維持できれば、原子力ムラは六ヶ所村を事実上の『核のゴミ置き場』にし、原発を運転できるのです」(澤井氏)
つまり、核燃料サイクルとは「核のゴミ置き場」の別名というわけか。だから、「もんじゅ」が廃炉になっても核燃料サイクルが維持されている限り、原子力ムラは核ゴミ対策を心配することなく、原発運転に専念することができるのだ。■河野太郎議員が「もんじゅ」の悪口を好き放題言えたワケ
「もんじゅ」廃炉の陰に、経産省と文科省の省益バトルがあった――。
そう指摘するのは前出の古賀氏だ。
「『もんじゅ』を管轄するのは文科省。今回、その文科省の利権を横取りすべく、経産省が動いたんです。フランスが進める改良型ナトリウム技術炉『アストリッド』の共同開発を合意した上で、『もんじゅ』廃炉を仕掛けました。安倍官邸を仕切っているのは今井尚哉(たかや)首席首相秘書官ら、経産官僚です。彼らを使えば、文科省など敵ではありません」
今井秘書官は資源エネルギー庁次長も務めたバリバリの原発推進派で、財界の実力者でもある今井敬(たかし)経団連名誉会長(新日本製鐵元社長)のおいっ子。安倍首相の信頼も厚く、第1次安倍政権以来、政務秘書官として官邸を差配している。その実力は「首相を振り付ける豪腕秘書官」と呼ばれるほどだ。
「この今井秘書官を筆頭に、長谷川栄一広報官、宗像(むなかた)直子秘書官と、安倍官邸に経産官僚が3人も詰めているんです。こんな状況はかつてなかったこと。今や安倍官邸は経産省が牛耳っていると言っても過言でありません」(古賀氏)
経産省の「もんじゅ」バッシングを物語るエピソードがある。自民党関係者が言う。
「第2次安倍改造内閣で、原発に批判的な河野太郎氏が行革担当大臣に就任したときのことです。河野大臣は安倍内閣の一員になった以上、持論は封印するとして反原発の思いを書いたブログなどを閉鎖した。
ところが、なぜか、『もんじゅ』批判だけは“フリーパス”だったんです。そのひとつが『もんじゅ』に試験燃料を運搬するために建造されながら、ほとんど出番のなかった大型船『開栄丸』批判です。河野大臣はこんな船に年間12億円もの税金が支出されていると、不要論をぶち上げた。彼がこんなに自由に振る舞えたのは、今井秘書官らを通じて『もんじゅ』を排除したい経産省の意図を首相周辺が了解したから、と聞きました」
なんのことはない。「もんじゅ」が廃炉になっても、核燃料サイクルは堅持される。しかも、「もんじゅ」の代わりに「アストリッド」プロジェクトが新しくスタートする。高速炉利権が文科省から経産省へ移っただけで、原発政策はまったく変わらない。これが「もんじゅ」廃炉の正体なのだ。
★この続きは、明日配信予定!
(取材協力/横田 一)
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