日本を軸に世界狙うアップル、最新発表会で示した大きな期待
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160913-00013573-forbes-bus_all
Forbes JAPAN 9月13日(火)11時2分配信
アップルのスマートフォン最新機種「iPhone 7」発表会は、日本市場での基盤を強化すると同時に、日本を通じて世界での存在感をさらに高めるという同社の戦略を浮き彫りにした。
先週行われたアップルの発表会では、モバイル決済サービス「アップルペイ(Apple Pay)」の日本での提供開始と、iPhoneとiPad向けの「スーパーマリオ」シリーズ新作の配信、そしてソニーとの提携が明らかにされた。
こうした動きは、アップルが日本市場をさらに重要視するとともに、日本を足掛かりとした世界各国でのブランドイメージ向上とiPhone売上台数増加を狙っていることを示している。
アップルペイで日本の巨大市場に参入
日本市場にとって最大のニュースは、今秋にアップルペイが利用可能になるとの発表だったことは間違いない。これについてはラルフ・ジェニングスがフォーブスの記事で詳しく説明しているが、アップルは今後、日本の巨大モバイル決済市場における確固たる地位を瞬く間に確立する可能性がある。
日本では既にモバイル決済が浸透している。ジェニングスが引用している2011年のアクセンチュアの調査結果によると、モバイル決済を好んで利用する人の割合は日本では47%だった一方、欧米では26%だった。
モバイル人口1億600万人の日本でiPhoneは既に人気製品であり、モバイル決済の機能追加によってその人気に拍車がかかると同時に、決済を通じた収入増加も見込める。日本のモバイル決済市場の規模は今年153億ドル(約1兆5,600億円)に達する見込みで、この額は奇しくも同社が欧州で命じられた追加納税の額とほぼ同じだ。
■もう一つの戦略
和製ゲームで世界を狙う
もう一つの大きな発表は、iOS向け新作ゲーム「スーパーマリオ・ラン」だった。12月に配信開始予定で、少なくともしばらくの間はiOS端末のみの独占配信となる予定だ。
アップルはさらに、同じく任天堂のモバイルゲームである「ポケモンGO」のアップルウォッチ対応も発表した。
iPhone 7に搭載されるA10プロセッサーは「家庭用ゲーム機レベル」の性能をうたっており、アップルがモバイルゲーム市場に力を入れ始めたことを示している。
ゲーム情報サイトの中には、アップルの発表会が「ゲーム産業の様相を一変させた」と伝える媒体も出てきている。個人的にはそれは言い過ぎだと感じるが、アップルが任天堂のゲームを使ってゲーム市場に殴り込みをかけるつもりなのは確かのようだ。
日本企業との提携強化
ゲームとモバイル決済の双方で、アップルは日本企業と密接に提携している。
ゲームの分野では任天堂とタッグを組んだ一方で、アップルペイの日本進出に当たっては、ソニーの力を大きく借りた。なお、ソニーはこれまでにも、iPhoneのカメラセンサー技術を提供してきている。
アップルペイでの対応が発表された「FeliCa(フェリカ)」は、ソニーが開発した非接触ICカード技術で、「Suica(スイカ)」を含む多数のシステムに利用されている。アップルはFeliCaに対応することで、通勤から日用品の購入まで、さまざまなシーンで既に利用されている決済システムへの参入を実現する。
こうした提携関係は、アップルが日本に対し講じる2つの異なる戦略を示している。
ソニーとモバイル決済に関して言えば、日本市場のみに焦点を絞った動きであることは明らかだ。日本のモバイル決済市場には、競合相手のグーグルも間もなく参入しようとしているが、アップルはそれに先立ち、ほぼ即座に日本の消費者を獲得できる見込みだ。
任天堂との提携もまた、マリオやポケモンといったキャラクターが既に広く親しまれている日本市場で成功を収めるだろう。だが、ポケモンGOが証明したように、日本のゲームやゲームキャラクターには、世界規模での訴求力がある。アップルは、ポケモンGOの熱狂的人気によって、年末商戦に向けたiPhoneの世界販売台数を伸ばしたい考えなのだろう。そして、次なる世界的なブームを巻き起こすことを狙っているに違いない。