日露外交について
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2016年08月30日 在野のアナリスト
小池都知事が築地移転を延期する方針、と伝わります。ちょっと気になったのは、そんな小池氏に記者が「都知事、会見はいつ?」と問いかけたことです。国民にとって会見時間はどうでもいい。記者が、記事の締め切りやテレビの放送スケジュールを優先し、それを第一声として聞く、という点に、今の記者が国民の方を向いていない、と感じます。
台風報道も、相変わらず海岸などに行ってバックに波を捉えながら、といった映像を伝えますが、それで映像が乱れたり、中継の音声が途切れたり、といったことが起きます。臨場感は伝わりますが、リスクをとって行うほど貴重な映像か? というとそれほどでもない。固定カメラに実況を被せてもほとんど変わらないでしょう。今回、迷走したことといい、東北の太平洋岸への上陸が初、しかも沿岸を舐めるようにすすんだこと、及び水害がつづく北海道にふたたび接近するなど、日本をあざ笑うかのようにすすみました。台風10号、色々な意味で今後の日本を暗示したのかもしれません。
新潟県の泉田知事が、県知事選への不出馬を表明しました。新潟日報の記事が影響、としますが、東電は新潟のメディアに広告を大量出稿するなど、影響力を強めていた。柏崎刈羽原発の再稼動にむけ、障害をとり除いておきたかったこともうかがえます。今回、どういう経緯かは分かりませんが、東電としてはしてやったり、でしょう。
安倍首相が来月、ウラジオストクで露国主催で開催される東方経済フォーラムで、プーチン首相と会談、と伝わります。12月にはプーチン氏が訪日、とも合わせて伝わりますが、同時に5月に提示した8項目の経済協力案を、領土問題の進展なく実施する方針、とも伝わります。どうもここからは、北方領土の解決を諦め、平和条約締結を優先する政府の方針も見え隠れする。つまり北方領土は、尖閣における日中の合意と同じ、未来に解決するとして問題が残ることを意識しながらでも、平和条約を結んでしまえる、との判断です。
最近、急に田中角栄氏の話題が取り上げられることも増えましたが、まさに同じ流れにあるのでしょう。田中内閣で日中共同声明が、後の福田内閣で日中平和友好条約が調印されましたが、安倍氏もこれを踏襲することを画策している。むしろいきなり日露平和条約を結ぼう、という魂胆かもしれません。しかし問題は、北方領土だけでなく、露国による第二次大戦末期の侵攻や、シベリア抑留も含まれる。つまり日露間では戦争というと、露国側に非がある割合が高く、それらを何の言及もなく、いきなり平和条約を結べるか、という点にあります。しかも、交渉入りの段階で最大のカード、経済協力をうちだしている。日本としてそれ以上のカードは切りにくいですし、経済協力をとりつけた露国が、わざわざ日本と平和条約を結ぼう、という意思は湧きにくい。あるとすれば、プーチン氏が安倍氏との個人的な関係において、援護射撃を考えるケースですが、そこには自民党総裁任期の問題もあるのでしょう。つまり、今後も安倍政権がつづくのなら、露国としても安倍政権との交渉を継続できますし、安倍氏に少し手柄を立てさせよう、との気分になります。
しかしここで平和条約を結べば、もう日本として北方領土交渉は諦めた方がいい、とも言えます。中国がそうであるように、外交で尖閣を交渉のテーブルにつけさせることは困難で、漁船や公船を派遣して嫌がらせをします。日本は北方領土に何もできず、交渉入りを促しても聞いてももらえない。平和条約をむすんだ以上、経済的に新たな巨額の提示でもなければ、また露国がよほど困っているのでなければ、露国は交渉するインセンティブがないのです。
露国の諺に「酔っ払いは醒めるが、馬鹿は醒めぬ」というものがあります。日本でいえば「馬鹿につける薬はない」となるのでしょう。しかし酔っ払いと対比している点に、露国らしさも垣間見られます。寒冷地で濃度の高いアルコールが必須ですが、酔っ払いの愚と馬鹿を対比している。一方で、日本は馬鹿は病気みたいなものだけど、直せない、としている。しかしどちらも愚かな真似をするような人間は、何度もくり返す、という点に違いはありません。平和条約交渉を優先し、北方領土交渉を蔑ろにする。今の政権では、領土問題はいつも置き去りです。露国の諺をもう一つ「酔えば海も膝まで。水溜りは耳まで、酔いが醒めれば豚を怖がる」。酔って気が大きくなると、海も膝までの深さしかない、となりますし、逆に水溜りは耳まであるのでは? と警戒したりもします。中国をやたらと牽制し、露国にはすり寄る、どちらが豚か、どちらも豚なのか、安倍氏が何を怖がり、どう対処するか、それは酔っ払っていると勘違いするほど、頓珍漢になってきているのかもしれませんね。