不動産市場の変調
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/archives/52839690.html
2016年08月19日 在野のアナリスト
4-6月期GDPでも高い伸びを示した住宅投資、ここに来てその変調が目立っています。7月の首都圏マンションの販売価格が2ヶ月連続で下落、発売戸数は前年同月比30.7%減、契約率は63.3%と、好不調の分かれ目である70%を下回っており、明らかに潮目の転換をうかがわせます。いくら低金利だからといって、高値掴みはしたくない。しかも今、売れるからとどんどんマンション建設を増やしてきたため、供給過剰の懸念もでてきた。今、不動産市場で囁かれるのは『低金利バブルの崩壊』です。
住宅を買うばかりでなく、建てる際も低金利で資金を調達できた。しかも米英を初め、中国の不動産バブルに代表されるような不動産投資家の世界的な暗躍とが重なり、日本にもそのお零れがあって億ションも売れてきました。しかし7月は英国も1%強の値崩れを起こしており、米国も伸びが鈍化、中国もふたたび引き締めに転じたらしく、販売価格が下落した都市の方が増えている。つまり今、世界的に不動産市場全体が大きな転換点を迎えつつある。それは不動産投資家にとって、すでに世界全体で個人が買えないほどの高値まで不動産市場が釣りあがっており、自分たちの循環取引でしか成り立たなくなり、下りるタイミングを間違えた投資家が損をする。つまり保有がリスクになりかねず、売りが売りを呼ぶ悪循環に入りつつあることを意味するのでしょう。キッカケはBrexitですが、この流れを食い止めないと、それこそ不動産市場は世界的にバブル崩壊により壊滅的な商状を呈すことになるのかもしれません。
そんな中、直近の日本では日銀、財務省、金融庁などが盛んに会合を行い、麻生財務相と黒田日銀総裁の会見後、麻生氏は「40年国債の増発」に言及するなど、事実上のヘリマネともとられる発言をしている。しかしこれらは為替睨みの発言であり、日本にはまだ追加緩和の手が残されている、という喧伝のため。円高を食い止める策を話し合っているためです。ただ7月のFOMC議事録がでて、9月の利上げ機運が後退。ふたたび円高圧力が強まっており、日本の小ネタのような対抗策など、大きな流れには全く対抗できていません。
さらに問題は、円高そのものは日本経済の重石になるものの、リスクは小さい。その一方で不動産市場の変調は、景気を間違いなく腰折れさせるだけの破壊力をもつ。どちらが問題か? 考えるまでもなく不動産市場の動向に、より目配せするべきでもあるのです。
しかし日銀は不動産市場をバブル化する策ばかり打ってきた。マイナス金利も量的緩和も、不動産市場をバブルに誘導してきた。しかしイールドカーブがフラット化したため、値上がりする不動産の魅力が低下、金利が低くても購入しない層が増えた、とされます。供給サイドはマイナス金利の前から建設に着手したため、ここに来てミスマッチが増えてしまった。つまり世界的な不動産市場の変調と同時に、日銀による政策のミス、という二つが重なる。バブル崩壊どころか、日本はダブル崩壊といった状態にあるのです。
しかも不動産投資の厄介な点は、一物件に対する投資額が大きいため、損失が破綻へと直結する可能性が高い。それが溜まると金融機関の経営すら圧迫する。担保には不動産が多いため、価格の上昇局面であれば融資を増やせる一方、下落局面では融資を躊躇する。それどころか一部でも回収しておかないと、リスクが高まる。金融機関の内部基準に照らせば、引く手も早くなるのであって、これまで安倍政権では倒産件数の減少を成果のように語ってきましたが、不動産市場の変調はそれすらウソにする可能性が高いのです。
日銀が9月の『総括的検証』で、仮に金融緩和の手段を改めるとなれば、ますます他の市場への動揺が広がるでしょう。18日の株式市場で、日銀のETF買いが入ると見越して前場買った層が、後場に失望売りを浴びせましたが、ここに来て日銀が打つ手を渋る、ということは総括で政策が見直されるのでは? との懸念も生じています。総括…かつて連合赤軍がこの呼び名で、リンチをくり返しました。日銀の総括、投資家にとってリンチのような大打撃を与える可能性もあります。bubbleと書くと『泡』の意味ですが、babbleと書くと『ムダ口』などの意味になります。日本のバブル崩壊、日銀、財務省、金融庁などが寄り集まって何を話し合っているかは分かりませんが、口先で何とかする前に、行動を示さないとこのバブル崩壊は、より深刻な事態を招きかねなくなるのでしょうね。
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