小池都知事は歓迎? 沖縄で、大分で「警察国家の到来」
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サンデー毎日 2016年8月28日号
牧太郎の青い空白い雲 583
都知事選で圧勝! 今や小池百合子さんに敵なし? あっぱれ、あっぱれ! 文句は言えない。
批判勢力も「遠巻き」にしているだけだが、当方、あえてこの時期に「小池都知事の危うさ」を書いておきたい。
彼女が2006年に発足した第1次安倍内閣で内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)に任命され、その後、防衛大臣になった頃の話である。小池さんは担当の沖縄問題に絡み「沖縄とアラブのマスコミは似ている。超理想主義で明確な反米と反イスラエルだ」と言い放った。過激である。沖縄メディアへの批判はその後も続き、「沖縄のメディアが言ってることが、県民すべてを代表しているわけではない」とまで言い切った。そうだろうか?
私の知る限り、沖縄の新聞は昔も今も「事実」をできるだけ正確に報道しようと努めている。そんな沖縄のメディアを、沖縄の世論を封殺するような言動。首都のトップが、相変わらず「右寄りの立場」を取ると国際社会は心配している。
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今、沖縄で大変なことが起こっている。これまで沖縄の「高江」という地名を聞いたことはなかったが、この地で米軍北部訓練場のヘリパッド建設工事が再開された。主にオスプレイ用である。
今までの経緯から沖縄県民は当然、反対である。県議会は本会議で建設に反対し、建設中止を求める意見書を賛成多数で可決した。知事も反対だ。翁長雄志(おながたけし)・沖縄県知事は「県民に大きな衝撃と不安を与えるものであり、誠に残念だ」と強く批判した。沖縄の新聞も同じだし、これが沖縄の世論だ。
ところが、この「高江」地区に突如、機動隊が約500人やって来た。反対運動を規制するつもりなのか、7月22日早朝、沖縄・東村高江の県道70号を突然封鎖。新川ダム入り口の交差点で機動隊のバスが両側2車線を塞ぎ、北上しようとする人と車の通行を一時遮断した。おかしいじゃないか!
県知事が反対しているのに、機動隊が反対運動を規制するなんておかしい。警察の組織図を見てくれ。県警本部長の上に公安委員会があり、その上が県知事だ。県知事と正反対のことを沖縄県警がやる!ということか?
どう考えても、おかしい。
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この奇妙な出来事の「謎」を解明したのは地元紙『沖縄タイムス』である。新川ダム入り口の交差点で両側2車線を塞いだのは、愛知県警機動隊のバスだったのだ。
同紙は、「県道路管理課によると午前8時50分ごろ、県北部土木事務所の職員が道路管理者として状況確認に向かったが、規制線の先に進めなかった。県道の管理者であることを示す身分証を提示したが認められず、引き返した」と報道した。他県からやって来た警察が、正当な職務を遂行しようとする県職員の立ち入りまで拒否する。こんなことがあっていいのか? 高江で大変なことが起こっている。
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日本のマスコミは、特にテレビの情報番組は、このところ「舛添問題→都知事選の狂騒曲」に夢中で、沖縄・高江での「異常な事態」に気づいていない。日本が「警察国家」になろうとしていることに気づいていない。
あるいは、知っていても報道しないつもりか? だとすればこれこそ「偏向報道」。小池さんは沖縄のメディアは偏向している!と考えているようだが、むしろ警察の「やりたい放題」を報道しない、この国のメディアこそ偏向している。
警察の権力が絶対である!と考える人が存在する。 事実、警察は「何でもできる時代」になった。
今年5月に可決された「刑事司法改革関連法」。冤罪(えんざい)の温床とされた密室の取り調べや「自白偏重」の捜査手法から脱却するため、取り調べの録音、録画が義務化された。その代わり警察に「新しい武器」が与えられた。その一つが「司法取引」。罪を認めたり、共犯者の犯罪を供述するなどで、量刑が軽くなる。もう一つの「武器」は「通信傍受法」の改正。警察は限られた犯罪捜査だが、盗聴できるようになった。
「警察国家」の到来ではないか?
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大分県で大変なことが起こった。参院選大分選挙区で当選した民進党現職らの支援団体が入居する別府市の建物の敷地内に、県警別府署員が選挙期間中、隠しカメラを設置し、人の出入りなどを録画していたことがバレた。カメラの設置は無許可。どう考えても、警察官による「建造物侵入罪」である。まさに戦前の暗黒時代と同じだ。
警察の権力が絶対である!という「極右警察国家主義者」がいる。
その一人が小池百合子・新都知事だったら......心配で仕方ない。