東海道新幹線、聞いてはいけない車内放送 「運転室に行け」?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160811-00010001-norimono-bus_all
乗りものニュース 8月11日(木)10時0分配信
乗ってはいけない回送列車(2015年8月、恵 知仁撮影)。
新大阪駅発、回送8660号
回送列車に乗った経験のある人、鉄道関係者でもない限り、なかなかいないでしょう。列車で寝ていて気がついたら車庫にいた、という経験を持つ人はいるかもしれませんが。
聞いてはいけない東海道新幹線の車内放送
2016年7月30日(土)、東海道新幹線の回送列車が、大勢の乗客とともに新大阪駅を発車するという珍しい出来事がありました。車掌により、次のような車内放送も行われています。
「この列車は回送8660号、鳥飼車両基地行きです」
この日、JR東海は東海道新幹線に4か所ある車両基地のひとつ、鳥飼車両基地(大阪府摂津市)を「東海道新幹線のおしごとを学ぼう」ツアー参加者らへ公開。その参加者たちが、新大阪駅から鳥飼車両基地まで約10分、回送列車に乗って移動したのです。東海道新幹線の車両基地は大井(東京都品川区)、三島(静岡県三島市)、日比津(愛知県名古屋市)、そして鳥飼にあり、鳥飼車両基地の一般公開はこのときが初になります。
さて、東海道新幹線の回送列車に「乗客へ向けた専用の車内放送」があること、知っている人はやはり少ないでしょう。
先に書いた「この列車は回送8660号、鳥飼車両基地行きです」は、「車両基地公開」という“特別なイベント”にあたって車掌が行ったものですが、そうではなく、毎日走っている回送列車で普段から、しかも乗客に向けて行われている車内放送があるのです。
聞いてはいけない車内放送
新幹線に乗っていて「気がつけば車庫」はあり得るのか。写真は鳥飼車両基地(2016年7月、恵 知仁撮影)。
東海道新幹線の回送列車で、普段から乗客に向けて行われている車内放送は次のようなものです。
「ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ この電車は、回送列車です。ご乗車いただけません。間違えてご乗車されているお客さまは、進行方向前寄りの、運転室までお越しください」
終点へ到着したのちも引き続き車内に残っていたり、間違って乗ってしまった人へ向けたもので、目覚まし時計のような「ピピピピッ」という音とともに繰り返し、日本語と英語で車内へ放送。乗務員のいる運転室へ来るよう、うながしています。鳥飼車両基地行きの回送8660号車内でも、新大阪駅を発車するまで幾度となくその音が響きました。
そのため、この車内放送を聞いたことがある人は少ないでしょう……といいますか、“聞いてはいけない車内放送”です。
さて、たとえば東海道新幹線で列車が終点に着いたとき、車内清掃があれば寝ていてもその際に起こされます。しかしその列車が車内清掃をせず、車両基地へ行ってしまう場合はどうなるのでしょうか。冒頭に述べた「気がつけば車庫」、私(恵 知仁:鉄道ライター)は1980年代に、ある地方の在来線で経験したことがあります。
JR東海によると、車内清掃をせず、折り返し回送列車として車両基地へ戻る場合でも必ず車内の点検を行い、「気がつけば車庫」がないようにしているとのこと。確実にそうするため、先に書いたような車内放送をあわせて行っているわけです。
今回、「回送列車に乗る」という珍しい体験をして鳥飼車両基地に向かった「東海道新幹線のおしごとを学ぼう」ツアー参加者らのなかには、この聞き慣れない車内放送に驚き、思わずキョロキョロする人も。
ちなみに、私が「気がつけば車庫」をしてしまったときは幸い、その回送列車の一部車両がすぐホームへ戻ることになっていたので、それに便乗して無事、旅を続けることができました。
恵 知仁(鉄道ライター)