自衛隊に常時迎撃命令、北朝鮮ミサイルに備え=政府関係者
[東京 8日 ロイター] - 政府は8日、日本に飛来する北朝鮮の弾道ミサイルをいつでも迎撃できるよう、自衛隊に破壊措置命令を出した。政府関係者が明らかにした。これまでは発射の兆候をつかんでから命令していたが、北朝鮮が移動式の発射台を使うなど予兆を察知しにくくなっていることから、常時発出しておく方式に改めた。
命令を受け、自衛隊は迎撃ミサイルを積んだイージス艦を海上に展開、東京・市ヶ谷の防衛省敷地内など地上にもミサイルを配備して不測の事態に備える。
ただ、常時警戒に当たる人員やイージス艦に限りがあることから、展開方法を常に見直しながら配備を進める。
北朝鮮が8月3日に発射し、日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した弾道ミサイルに対し、日本政府は事前に兆候を察知できずに破壊措置命令を出せなかった。
(久保信博)
http://jp.reuters.com/article/north-korea-missiles-idJPKCN10J18V
北朝鮮、制裁下でも安定する物価と通貨の「謎」
[ソウル 8日 ロイター] - 相次ぐ核実験や弾道ミサイル発射実験に対して、国際社会が制裁を強めているにもかかわらず、北朝鮮の食料と燃料の価格は、金正恩朝鮮労働党委員長の下でおおむね安定を維持している。孤立する同国内部から得た珍しいデータから明らかとなった。
父親の故金正日総書記の時代とは対照的に、現在は物価と通貨の両方ともに比較的安定しているが、その要因の1つには、ますます進む市場本位の経済に正恩氏が不干渉主義的なアプローチを取っていることが挙げられる。また専門家らは、北朝鮮政府が何らかの政策を習得していることの表れだと指摘する。
かつてはソ連型の中央計画経済に依存していた北朝鮮だが、今では法的にはグレーゾーンだが「ジャンマダン」と呼ばれる自由市場が盛んとなっている。ここでは、個人や卸売業者が私的に生産・輸入した物品を売買することができる。
「金正恩氏が政権を握ってから、ジャンマダンに対する支配、あるいは取り締まりは行われていない」と、脱北者で現在は韓国の北朝鮮専門ネット新聞「デイリーNK」で働くKang Mi-jinさんは話す。Kangさんは定期的に北朝鮮の市場筋と話をするという。
「金正恩氏は悪いこともたくさんしているが、市場を開放し続けることは国民にとってポジティブな効果がある。他に選択肢はない。国民を養えないので、完全に市場を閉鎖することなどできない」
脱北者で運営される「デイリーNK」から得た情報に基づいてロイターがまとめたデータによると、昨年のコメ、トウモロコシ、豚肉、ガソリン、軽油の価格は比較的安定しており、国内外の出来事に対する価格抵抗力を示している。
北朝鮮の核兵器プログラムに対する制裁が一般市民に打撃を与えかねないと批判する一部の人たちの懸念が、それによって和らぐかもしれない一方で、正恩氏の権力支配を強化する一助となる可能性もある。
北朝鮮国内で実際に何が起きているかについての情報を確認するのは困難だ。しかし、過去の不満や混乱に関する報告は、かつての破滅的な私的市場統制のような経済紛争と通常は関連すると、専門家は指摘する。
<安定した食料>
デイリーNKは、北朝鮮の首都平壌と、中国と国境を接する北部の都市、新義州市と恵山市にいる情報提供者から価格を入手している。
同国でますます多くの市民が非公式経済で取引することが可能となるなか、こうした価格の平均値から明らかなのは、モノの市場価格が著しく上昇していないということだ。ジャンマダンの露店の数は数百規模で増えていると、脱北者は語る。
北朝鮮の配給制度は1990年代の壊滅的な飢きんからいまだ回復していない。世界食糧計画(WFP)による最近の報告によると、今年4─6月における同国の1日1人当たりの配給量は、5年間で最も少なく、わずか360グラムだった。
その穴を埋めているのが市場だ。
データによると、北朝鮮の主食であるコメの平均価格は昨年、1キロ当たり5240ウォン、非公式市場のレートでは約63セントだった。
コメよりも安く、手に入りやすいことの多いトウモロコシは平均で同2022ウォン、24セントで売られていた。
豚肉の価格が最も変動が激しく、夏の暑い時期には急落していた。
「北朝鮮には冷凍設備がなく、豚肉を冷凍できない。痛みが早いため、価格が上げられない」と、脱北者のKangさんは言う。
目立った唯一の価格急騰と言えば、国連による制裁が科される直前の3月初めに起きたガソリンと軽油の急激な値上げだろう。
データによると、制裁による供給不足の懸念から、ガソリンの市場価格は数日のうちに平均で45.1%、軽油は17.4%上昇した。その後、制裁懸念が静まると、価格は平常に戻った。
<通貨の謎>
公式通貨である北朝鮮ウォンの価値は対ドルで約100ウォンと、国家によって決められているが、主に市場による実勢レートでは約8300ウォンとなっている。
金正日政権時代、2009年の通貨改革に失敗した後に通貨が極端に変動したのとは対照的に、非公式為替レートはこの数年、安定している。
「過去2年に見られるウォンの効果的な安定は、皆にとってちょっとした謎だ」と語るのは、米カリフォルニア大学サンディエゴ校の北朝鮮経済専門家ステファン・ハガード氏だ。
「通貨の転換が大失敗に終わった後、何らかの貨幣政策の習得があったことはほぼ間違いない」と、同氏は指摘する。
金正恩政権の下で、歯磨き粉から香水まで国内産の消費財が増え始めており、これが価格の安定にも寄与した可能性がある。
平壌の一部の店では現在、ほぼ国内製品だけを販売し、市場の実勢レートに従って価格は決められている。
「北朝鮮で製造された中国製品のコピー商品は、オリジナルよりも安く、人気がある」と、脱北者のSeo Jae-pyoungさん。Seoさんは2001年に北朝鮮を離れたが、定期的に同国内にいる情報筋と話をしている。
北朝鮮の一般国民は差し当たり、国が孤立を深めているにもかかわらず、比較的うまくやっている。
Seoさんは「今年新たに制裁が科されたにもかかわらず、一般市民はうまくやっている」としたうえで、「その効果は来年から徐々に表れ始めるかもしれない」と話した。
(James Pearson記者、Ju-min Park記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
http://jp.reuters.com/article/north-korea-prices-currency-idJPKCN10K0BB
http://www.asyura2.com/16/warb18/msg/401.html